沖縄県・石垣島に誕生する物件NOT A HOTEL ISHIGAKI「EARTH」。海を目の前にした円形のこの建物に込められた想い、そして石垣島での理想の暮らしを、建築家の藤本壮介氏に聞いた。【特集 沖縄に住む】
海と緑、大自然に囲まれた特別な場所
石垣島の海辺、3000坪の敷地内にたった1棟のヴィラ。円形の建物の屋上はすり鉢状に緑が植えられ、まるで大地に溶けこんでいるかのよう。庭の木々と同じ高さの2階リビングからは、海を水平に見渡し、窓を開けると海風が通り抜ける。
これまで各地に邸宅を建ててきたNOT A HOTELが現在建設しているのがこの物件NOT A HOTEL ISHIGAKI「EARTH」。建築を手がけるのは、日本を代表する建築家の藤本壮介氏だ。藤本氏は最初にこの地を訪れた際、感じたことがあったと言う。
「前のオーナーさんは、この広大な土地に1軒だけ建物を建て、広い庭を丁寧に管理されていました。目の前が海だけれど、敷地内には大きな樹木があってグリーンも美しく、土地を大切に使われてきたのがわかりました。我々もその姿勢を受け継ぎたいと強く思いました」
広大な土地ならば数軒建てることも考えるだろう。けれどゆったりとした土地の佇まいを残すことを最優先に、藤本氏はたった1棟の設計図を完成させた。
「その土地に暮らした人の想いを受け取り、土地に合った建築をつくることを大切にしています。この建築はお椀型のすり鉢状にすることで大地に包まれて、地球の一部になったような感覚を感じられる。そんな体験ができたら、と設計しました」
1階にあるサウナは天井に窓がありその上を水が流れる。日中は太陽光が差しこみ、まるで海底にいるように感じられる。
「他の部屋が海向きなので、サウナは海ではなく光を楽しむ場所にしました。建築の豊かさとは、季節によって移ろう太陽光や自然を取り入れられること。大自然に囲まれたこの特別な場所で、部屋ごとに変わる自然の情景を楽しんでほしいのです」
この物件はホテルでもなく別荘でもない。年間30日から滞在できる所有権を購入するという仕組みで、相互利用として、各地に建てられた別のNOT A HOTELの邸宅にも滞在可能だ。東京、パリ、中国の深圳(しんせん)に事務所を構え世界を飛び回る藤本氏も、このスタイルに共感している。
「それぞれの拠点で暮らし、働く。環境が変わるとインプットできるものも変わって、発想も豊かに湧いてきます。この石垣島で、時にはプールに浮きながら、時にはサウナにこもって、それぞれの場所で、インスピレーションを得てほしいです」
暮らしの拠点のひとつにこの場所を加えれば、きっと人生はさらに豊かになる。
Data
所在地:沖縄県石垣市宮良120-92
敷地面積:9,586㎡
延床面積:975.01㎡
設計者:藤本壮介建築設計事務所
構造:RC構造、地上2F建て
藤本壮介/Sou Fujimoto
1971年北海道生まれ。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞、2015年、2017年、2018年にヨーロッパ各国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。2025年大阪・関西万博では会場デザインプロデューサーを務める。
この記事はGOETHE 2024年9月号「総力特集:人生の楽しみ上手が集う島 沖縄に住む」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら