都心に家を持ちながら、そこを離れた場所にも居を構える。そんな多拠点ライフを楽しみ尽くしている8名の仕事人のこだわりの邸宅を大公開! 旅先のホテルでは到底かなえることができない多拠点邸宅だからこその醍醐味に迫る。今回は、ダイニングイノベーショングループ ファウンダーの西山知義邸を紹介する。【特集 多拠点邸宅】
大切な仲間たちと思う存分楽しむ白亜の別邸
京都、佐島、湯河原など国内外数ヵ所に別荘を構え、季節や目的、ともに行く友人に合わせてさまざまな場所で多拠点邸宅を堪能しているのが、ダイニングイノベーショングループ ファウンダー西山知義氏だ。
世界中を旅した経験と数々の人気飲食店を手がけた実績をもとに、どの拠点も自分でテーマを考え、間取りはもちろん、家具や流す音楽にいたるまで自らプロデュース。そんな唯一無二の空間をつくり続けている西山氏が、今回選んだ場所は沖縄だ。
「海外と異なり気軽に行け、一年中過ごしやすい気候で、食事もとにかく美味しい。改めてその魅力に気がつきました」
なかでも一番惹きつけられたのが、現地で知り合った人たちの気質だという。
「楽しむことに一生懸命な人たちばかり。東京だとよくも悪くも自制がかかり、どこかに仕事のことが残ってしまうけれど、沖縄で彼らといると不思議と仕事のことも忘れ、思う存分楽しむことができるんです」
そんな仲間と集まる沖縄の家のテーマは「ギリシャのリゾート」。
「台風の多い沖縄では、住宅は基本的に鉄筋造り。その前提で考えた時に浮かんだのがミコノス島のビーチクラブでした」
以前滞在して気に入った地中海のビーチクラブ「スコーピオス」のイメージをもとに、人の手触りが残るような白いモルタル仕上げの外観を持つ、地中海のリゾートを彷彿(ほうふつ)とさせるデザインに。
内部も流木や古木のような木材を多用し、照明や絨毯も時代を経たヴィンテージを使用するなど、ラグジュアリーでありながら、訪れる人が気負うことなく過ごせるようなゆるさと温かさを感じるインテリアとなっている。
リビングやバスルームなど、どの部屋からもプールへアクセスできるよう、海側は一面を窓に。部屋の窓を開けると波の音が聞こえるほど、海はすぐそこ。プールのあるテラスから自然のまま残された樹々の間を抜ければ数十秒で、真っ白なビーチと青い海が静かに迎えてくれる最高の環境に、この家はある。
多拠点で過ごす楽しみが新たな視点を生む
西山氏の別荘ライフに欠かせないのがBBQ。「BBQはエンタテインメント。皆を楽しませるためには欠かせない」と各拠点に仲間が集まると必ず楽しんでいるが、ここ沖縄の家には専用のBBQ棟を設置した。
海に面した窓は「ここから見える風景が1枚の絵になるから、余計な物はいらない」とガラス窓はつけず、沖縄の風を感じる半屋外の空間に。床から塗り上げたように設えられたテーブルに座れば、アグー豚や石垣牛など沖縄ならではの食材が豪快に焼ける様子を前に話も弾む。
そしてこの家の最大のサプライズが、このBBQ棟の屋上に。ギリシャの街角のような白い階段を登ると現れるのが、ルーフトップバーだ。沈む夕日と変わりゆく空の色、そして暮れれば満天の星のもと、ずらりと並んだボトルがライトアップされ、幻想的な夜を演出する。
気の合う仲間や大切な人たちがプールに入り、音楽を聴きながらお酒を飲んで楽しんでいる、その光景を想像してつくったというこの別邸。訪れるたびにそんな仲間たちの存在が大きな楽しみとなり、ここでの交流がきっかけで新たな事業も生まれているという。
「『普段自分のいるところが当たり前でも、絶対でもない』ということを、いつもとは違う場所で、そこに過ごす人たちの生活や異なる視点に触れることで実感する。それが多拠点で過ごすからこそ知る、楽しみだと感じています」
The Essence of House
青空と海に包まれる白壁の平屋づくり
青い空と海に囲まれた地中海のリゾートをイメージし、手仕事感が残る柔らかな白壁に。
新設のBBQ棟には窓やドアは皆無
空や海、自然のままの緑などの景色を遮らないよう、沖縄の風を感じる半屋外の空間に。
夕陽を望むルーフトップバー
カウンターもベンチもすべて壁と同素材の白に。夕陽も流れ星が見える星空も楽しめる。
Data
所在地:沖縄県名護市
敷地面積:2,487㎡
延床面積:208.13㎡
設計者:成戸顕治+大興建設
構造:RC造
西山知義/Tomoyoshi Nishiyama
ダイニングイノベーショングループ ファウンダー
1966年東京都生まれ。1996年に『牛角』1号店を開業し、7年間で1000店舗に拡大。2013年「日本の食文化を世界に」をテーマに『ダイニングイノベーション』を設立。『焼肉ライク』などをグローバルに展開する。
この記事はGOETHE 2024年3月号「総力特集:多拠点邸宅」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら