プライベートジェットで未知の体験をするため、はたまた、世界のベストレストランをホッピングするため、旅を愛する男たちは世界中を飛び回っている。ダイニングイノベーションの西山知義氏に、記憶に残る最高のホテルをその理由とともに聞いた。【特集 ホテル案内2023】
今まで見たことのない景色や、自分の想像を超える経験をしたい
ある日はアフリカのサバンナでコーヒー片手にライオンの群れを眺め、またある日にはニュージーランドの溶岩に囲まれた温泉に癒やされ、かと思えばある夜は、イビサ島のホテルのベランダでDJが繰りだす最高の音に身を任せる。世界11ヵ国に飲食店を展開する企業の創業者として多忙を極めながらも、月に一度は旅の時間を設け、世界各地を旅する経営者、それが西山知義氏だ。
定宿を持つよりも、いろいろなホテルを経験したいと、これまで訪れた国もホテルも数えきれず。2022年夏にオープンし話題の「アマン ニューヨーク」やLVMHグループがパリで初めて手がけたホテル「シュヴァル・ブラン・パリ」など、最新ホテルもすでに経験済み。
「『アマン ニューヨーク』はホテルの地下にジャズクラブがあったり、『シュヴァル・ブラン』はセーヌ川が目の前という素晴らしいロケーション。どちらもその都市らしさを存分に感じられます」
ただ西山氏にとってホテルの魅力は、都会よりもリゾートのような場所にあるという。
「都会での滞在は街を楽しむことが目的になるので、部屋にいる時間が少ないホテルに求めるのは快適さや使いやすさ。だからある程度のレベルがあれば十分なんです。でも周りに何もないようなリゾートでは、ホテルは滞在の重要な鍵。そんな場所でどんなアクティビティができ、どんな時間を過ごせるか、そこにホテルの力が活きてくると思うんです」
ホテルに求めるのは想像を超える体験
最高の眺望が望める部屋、細部にまでこだわる設(しつら)えや期待の上を行くホスピタリティなど、ゲストがホテルに求めるものはいろいろあるが、西山氏がホテルを選ぶ基準はただひとつ、“未知の体験”だ。
「そこにどんな体験が待ち受けているか。今まで見たことのない景色や、自分の想像を超える経験をしたい。それができるホテルに一番魅力を感じます」
特に印象に残っているホテルのひとつが、タンザニアの「ワンネイチャー ニャルスイガ」だ。マサイ語で「ニャルスイガ=果てしなく広がる草原」と言う名のとおり、ホテルは世界自然遺産に登録されたセレンゲティ国立公園の中に位置する。
「空港に着くとホテルの迎えが待っていて、移動式のバーセットでウェルカムドリンクを作ってくれるんです。そこからもうワクワクするでしょ(笑)」
サバンナに点在するラグジュアリーテントの中は、広いリビングルームやダイニングルーム、地平線を眺めながら入ることができる開放的なバスルームなど快適な空間に。
「朝起きると目の前をキリンが走っていたり(笑)。気づけば動物が近づかないよう、マサイ族の方たちが護衛のようについてくれている。そんな光景のなかでゆっくり一日を過ごすなんて他ではできない体験でした」
またアイスランドで出合ったのは、苔むした溶岩が続く高原に建つホテル「ザ リトリート アット ブルー ラグーン アイスランド」。
「国内にもいい温泉はたくさんありますが、ここは広大な露天温泉“ブルー ラグーン”を目の前にしたロケーションがすごい。荒々しい溶岩の中に薄いブルーの温泉が広がる光景に圧倒されます」
その他にも、海を見下ろす農場に建ち、羊に囲まれるロケーションと地元のワインや野菜を楽しめるニュージーランドのラグジュアリーロッジ「ファレカウハウ カントリー エステート」や、中庭で有名DJのライヴが毎日行われ、部屋がまるで野外フェスのVIP席のような「ウシュアイア イビサ ビーチ ホテル」など、西山氏が紹介するホテルは唯一無二のロケーションと、そこでしか味わえない時間を提供するものばかりだ。
未知の世界への探求はビジネスの刺激に
そんなホテルでの滞在は、日本にはないようなライフスタイルを知識ではなく実体験することで、自身の発想の源にもなっている。
「別荘を建てる時はいつも自分でデザインを考えますが、グランピングをイメージした湯河原の別荘のアイデアは、『ワンネイチャー ニャルスイガ』でテントスタイルの楽しさと心地よさを知ったことでヒントを得たものなんです」
また日本にはない文化を知ることができるのも、刺激になる。
「イビサ島やミコノス島などヨーロッパのリゾートでは、大人が美味しい食事や音楽を楽しみながらビーチで過ごす“ビーチクラブ”が盛んなんです。日本の海の家とはまったく異なり、セレブリティが沿岸に停泊した船からボートで食事に来たりする。そんな文化を肌で感じることができることは、仕事にも自分のライフスタイルにもインスピレーションを与えてくれます」
快適に泊まるというだけではなく、そのホテルが建つ土地の文化を含めて、そこでどんな未知の体験が待ち受けているか。それが西山氏のホテル選びの条件なのだ。
どんなに多忙でも、必ず年間スケジュールを立て、旅の日程を捻出するという。
「どんどんスケジュールが埋まってきてしまうので、行き先が決まってなくても、先に日程を押さえてしまう。あとはその時期にどんな場所がベストシーズンなのかを考え、ホテルを探しています」
知られざる場所で、未知の体験を求め、自らインターネットで探したり、ラグジュアリートラベル専門のコンシェルジュに相談するなど、情報収集も怠らない。
唯一無二のロケーションと体験こそが、起業家のインスピレーションのもととなる。
さあ、次はどこへ? 未知の世界への開拓心を搔き立てる西山氏の旅はまだまだ終わることはない。
FAVORITE HOTELS&ONSEN LIST
①タンザニア|One Nature Nyaruswiga, Serengeti
②アイスランド|The Retreat at Blue Lagoon Iceland
③ニュージーランド|Wharekauhau Country Estate
「とにかく景色がきれいな、上質さを極めたロッジ。羊もいます(笑)」
④スペイン|Ushuaia Ibiza Beach Hotel
「ライヴが毎日深夜まであり、ホテルで野外フェスが楽しめる感覚」
⑤スペイン|SIX SENSES IBIZA
「イビサでもプライベート感を求めるなら、静かな海に面したここへ」
⑥アメリカ|Aman New York
「5番街の歴史的建物をリノベーション。美しいプールもお薦め」
⑦フランス|Cheval Blanc Paris
「ポンヌフのたもと、パリの街とセーヌ川を見渡す絶好のロケーション」
⑧北海道|しこつ湖鶴雅別荘 碧の座
「全室レイクビュー。とろとろとした優しい湯ざわりの泉質が最高です」
⑨鹿児島|妙見石原荘
「清らかな川に面した宿。せせらぎを聞きながら入る露天風呂が至福」
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