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TRAVEL

2023.04.25

知る人ぞ知る「星のや沖縄」のプライベートプール付き特別室とは

多忙を極める人ほど、その合間を縫って、国内外を縦横無尽に旅している。知る人ぞ知る格別なホテル、その土地の利を活かした旅館、アートとオーベルジュが一体化した宿……。そのお眼鏡にかない、知的好奇心を刺激するステイ先から今回は、沖縄県読谷村の「星のや沖縄」を紹介する。

特別室「ティーダ」のプールから眺める夕陽

特別室「ティーダ」のプールから眺める夕陽。約260㎡のゆったりとした広さで2ベッドルーム。写真左の扉を開け廊下からプールへ飛びこむこともできる。

ベールを脱いだ邸宅のごとき特別室

沖縄、読谷村(よみたんそん)。波風による侵食によって独特の形になった岩の間に、真っ赤な夕陽が沈み始める。息を呑む美しさだが、陽が完全に落ち切る前に、秘密の部屋へ急がなければいけない。そこは黄昏時(たそがれどき)から、徐々に濃い青に染まっていく空を眺めるのに、これ以上ない静寂が漂う絶好の場所だから。

奇岩の間に陽が落ちる瞬間

星のや沖縄に近接する「バンタカフェ」から浜に降りれば、奇岩の間に陽が落ちる瞬間を目の当たりにできる。このエリアは、日没まで立ち入ることが可能。

2020年に開業した沖縄を代表するラグジュアリーリゾート「星のや沖縄」には、これまであまりメディアに露出してこなかった知る人ぞ知る部屋がある。全長1㎞にわたる壁「グスクウォール」と海に挟まれたこの宿の、もっとも奥に位置、その部屋のためだけに設(しつら)えられた門をくぐると見えてくる一戸建ての琉球建築。100室すべてがスイートルームの星のや沖縄で、4室だけ存在する特別室「ティーダ」がその場所だ。

大きな扉を開けると、5m近い天井高の土間ダイニング、そして部屋の中心部に配置された20mの屋外プライベートプールが目に飛び込んでくる。プールサイドに出れば赤い瓦の屋根、その向こうには雄大な空と海があるのみ。夕陽で赤く染まった空が目の前に迫ってくる。

昼間の特別室「ティーダ」

時間帯によって、空も海も違う表情を見せてくれ飽きることがない。

日暮前の特別室「ティーダ」

宵闇が迫る空と部屋の明かりのコントラストも美しい。20mの加温式プールに浮かんで星が出るのを待つのもいい。

やがて陽が落ちて、やってくるトワイライトの時間、プールサイドに明かりを灯した頃に、ティーダの宿泊者だけに振る舞われる3種の泡盛。照明で青く発光するプールと、薄い群青色に染まった空のコントラストに見惚れながら、泡盛を嗜(たしな)めるのはこの部屋の特権だ。

特別室「ティーダ」の土間ダイニング

プールの前には、土間ダイニング。旬の魚をつまみながら、読谷村の大嶺工房が手がけた青の陶器で泡盛を。

特別室「ティーダ」の床座リビング

琉球畳の敷かれたティーダの床座リビング。扉の奥にはデッキが。

冷蔵庫には、メインダイニングのシェフが下ごしらえをした料理の数々がぎっしり詰まっている。事前に注文しておけば、こうして冷蔵庫に入れられて、あとは部屋の調理家電で温め、好きな時に料理を仕上げることができる。この「ギャザリングサービス」と呼ばれるインルームダイニングでは、日本食、洋食、中華と30品以上のメニューがあり、もちろん沖縄料理も多種多様に揃う。徹底的にこの秘密の部屋から出ないと決めたお忍び旅にもふさわしい。

鳥の声で目覚めた朝。この部屋のプライベートガーデン奥に見つけた小径を歩いてみれば、ビーチにたどりつく。すれ違うのはヤドカリばかり。この部屋の宿泊者だけが通れる、さながら秘密の道だ。

特別室「ティーダ」に向かう植栽の道

植栽の道を進み見えてくる、この1棟すべてが自分の部屋という贅沢。

グスクウォールに守られた秘めたるリトリート

琉球の風を浴びて、もう少し歩きたいのなら、宿を囲むグスクウォール沿いを散歩してみるのもいい。そもそも「グスク」とは、沖縄の言葉で、聖域、集落、城といった「大切な場所」を表している。その場所を雨風から守るのが白いグスクウォールの役割だ。

グスクウォール

夜のグスクウォール。あしらわれているのは、読谷村の織物「読谷山花織」の紋様。夕刻以降はより一層、幻想的な雰囲気となる。

スクウォールの内側を歩くスタッフ

グスクウォールの内側を歩くスタッフの制服は琉球王朝時代の礼服をイメージ。

この壁の内側、12万5000㎡に及ぶ敷地内には、客室となる低層建築と、4つの施設が点在。客室間には、長命草やグアバにアセロラなどが植えられた畑、窓際にはカーテン代わりに生い茂る色とりどりのハイビスカスなど、さまざまな植物も大切に守られている。

グスクウォールの内側で過ごすと決めたこのステイ。日々ビジネスの決断を迫られる張り詰めた心と身体を癒やすため、スパに訪れたい。肩に力が入りがちというなら、沖縄の代表的なハーブである月桃(げっとう)を用いたトリートメント「月」がお薦めだ。

もち米粉とともに月桃を練って蒸した「月桃玉」を身体にあてて行うトリートメントで、温かい刺激と爽やかな月桃の香りが全身の緊張をじんわりとほぐしてくれる。久々の脱力感を味わえるだろう。

スパで使用される「月桃玉」

スパで使用される「月桃玉」。(月コース90分¥26,620)。

「星のや沖縄」のスパ

スパはティーダの隣に位置し、こちらも赤瓦の建築で風情がある。

「星のや沖縄」のトリートメントルーム

緑に囲まれたトリートメントルーム。

ただひたすらにゆっくりと時間が過ぎてゆく。今晩は部屋を出て、メインダイニングへ行こう。そこは琉球料理の食材をシチリア料理の技法で表現する「琉球シチリアーナ」が味わえる唯一の場所。琉球もシチリアも、ともにメインランド南端の島、気候や文化に共通点も多いようだ。

「星のや沖縄」のメインダイニング

メインダイニングはシチリアと、沖縄の海をイメージした青いカーテンと気持ちのよい天井高で、青い海の浅瀬にいるような感覚に。

このダイニングでは食材もこだわり抜かれていて、旬の魚は施設からほど近い漁港で、シェフ自ら生のものを競り落とし、豚は沖縄の人々が代々「鳴き声以外はすべて食べ尽くす」と伝えてきたとおり、無駄な部位なく調理される。新鮮なカツオを使った「カツオとトマトの冷製カッペリーニ」や、「トンタン(豚の舌)とミミガー(豚の耳)のゼリー寄せ」など、その絶妙な味わいに驚くはずだ。

牛フィレ肉の月桃包み焼き

沖縄の油味噌とトマトの酸味の相性がいい「牛フィレ肉の月桃包み焼き」。

カツオとトマトの冷製カッペリーニ

生姜の泡がアクセントの「カツオとトマトの冷製カッペリーニ」。

さらに多くの人が歓声を上げるのが、琉球王朝の宮廷料理「東道盆(トウンダーブン)」に着想を得た9種類のストゥッツィキーニ、つまりイタリア語で「おつまみ」が盛りつけられたひと皿。沖縄では祝いの席で食べられるヤギ肉を使ったサルシッチャ(腸詰)や、シークヮーサーが香るアランチーニなど、沖縄とシチリアの融合した9つのつまみに酒が進む。

前菜「ストゥッツィキーニ」

9つの前菜「ストゥッツィキーニ」。

2種類のデザートを含む8品のコース、ペアリングのワインを愉しんで部屋への帰路につく。

虫の声をほろ酔いで聞きながら、空を見上げれば、今宵は満天の星。明日は何をしようかと、胸が躍る。海とウォールに包まれた宿の最奥の部屋での人目を忍ぶ秘密のステイ、その世界観にどっぷり浸れば、おのずと英気が養われるに違いない。

「星のや沖縄」のレセプション

深海を想起させるレセプション。大きな木は断面がサンゴの形のよう。

「星のや沖縄」を海側から見たところ

海側から見た客室。全室オーシャンフロントで波の音が聞こえる。

貸切のクルーザー

那覇空港近くの港から、貸切のクルーザーで迎えてくれる特別なプランも。

「星のや沖縄」のラウンジ

ラウンジ前のプール上のチェアに座れば、朝は鳥のさえずりを、夜は満天の星を楽しめる。

星のや沖縄/Hoshinoya Okinawa
住所:沖縄県中頭郡読谷村儀間474
TEL:050-3134-8091
料金:1泊¥136,000〜(1室利用時、税サ込)
施設:客室100室(特別室「ティーダ」は4室)、レストラン、スパ、プール、道場ほか 

▶︎ Focus
敷地内に植えられた植物の間を歩くと、緑の香りに包まれて生き返るよう。2020年のオープン当時は、大人の膝丈ほどだったマニラヤシが、今や倍以上の高さに成長した。この木は最終的には5mの高さになるというから、こうして時々訪れてグスクウォールの中で生命を謳歌する植物たちの成長を実感するのも楽しい。

▶︎ Special
気温に合わせて水温が設定され、1年中24時間利用可能なインフィニティプール。浅いエリアに設置されているチェアに座れば、夕暮れ時は夕陽を、夜は星空を満喫できる。

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

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