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2024.08.05

STARTO社長・福田淳の沖縄の別荘に潜入「好きになった場所には必ず拠点をつくる」

心から好きになった土地には、必ず家をつくる。さまざまな場所で多拠点生活をしてきたこの家のオーナーが、沖縄だからこそ実現したかったこととは。【特集 沖縄に住む】

福田淳邸のリビング
リビングから見える海。窓を開け放てば海風を感じられる。

多拠点生活の経験が光る、自然と呼吸する別荘

沖縄南部、崖の上に立つ邸宅の扉を開けると目に飛びこんでくるのは、窓の向こうの海と果てしなく続く水平線。

「この家からは水平線に昇る朝陽を見ることができます。私のなかでずっと、夕陽は旅先で、朝陽は定住して見るもの、そんなイメージがありました。ですからこの朝陽の美しい土地を見つけた時に、沖縄にも暮らしたい、そう強く思ったのです」

とは、この邸宅のオーナーである福田淳氏。タレントエージェントや、アートギャラリーを運営するSpeedyの代表であり、2023年からは新たに芸能事務所、STARTO ENTERTAINMENTの社長に就任。世界を飛び回り、好きになった場所には必ず拠点となる家をつくってきた。

「その地で暮らし、その地のコミュニティを知ると、見えなかった景色が見えてきます。沖縄はトップクラスのアーティストを輩出するまさにエンタテインメントの震源地。そういう地で過ごしインスピレーションを受けながら仕事をすることは、私にとって必要なことだと思ったんです」

この邸宅の建築テーマは、ル・コルビュジエの「レマン湖畔の小さな家」。コルビュジエが両親のために建てた平屋がアイデアの原点だ。リビング、ベッドルーム、ゲストルームは、間仕切りを開けば全室がシームレスにつながる。もちろんどの部屋からも海が見え、テラスのプールにアクセスできる仕かけだ。土地と地続きの場所で過ごしたいと、敢えて1階と地下のみで2階以上はつくらなかった。

さらに、建材やインテリアにも福田氏の並々ならぬこだわりが詰めこまれている。

「内装の壁は、職人さん手塗りの壁。沖縄産の漆喰を使っています。潮風が強く自然のものを使う塗り壁だと劣化が早いと言われたのですが、建物は朽ち果てていくことが自然で、それを直していくのが生活ですからと、沖縄の建築家さんと職人さんを説得しました。どうしても自然のものを使い、呼吸する家をつくりたかった」

これまで世界各地で自分の家をつくってきた経験から、この家を建てる際もさまざまなアイデアが福田氏のなかでひらめいた。例えばこの家には、窓以外はすべての角を丸くしている。なぜなら自然界には直角のものはないから。自然と一体化したこの家は、角を最小限に抑えた。さらにリビングの天井には3本の大きな丸太を加工した梁が。樹齢100年を越す8.5mの檜を宮崎から取り寄せた。

「天井の檜は梁に見えるのですが、実際は梁としては機能しておらず、言ってしまえば飾りです。けれど『呼吸する家』をつくるためには、室内にもっと自然のものを置こうと。それに樹齢100年の樹木は、木材としての寿命が300年もあるのだそうです。私がいなくなったあとも残る、そういうものが部屋にあれば、生活のなかで自然と人の共生を感じることができるのではないかと」

沖縄での暮らしのなかで、福田氏は地元の人との交流こそ大事だと考えている。家の近くに自分の農園を開き、土地や人に負担をかけない農業をやっていこうと、地元の人とさまざまな実験を行っている。

「朝起きて、ビーチに下りると近所のおばぁが朝陽に向かって祈っている。本当に祈りたくなるほど見事な朝陽ですから。そういう、土地の人と自然がともにある光景って、きっと暮らしてこそ見ることができる。私にとって沖縄は、旅人として通りすぎるものではなく、人生の拠点のひとつなんです」

沖縄を舞台にした映画など新たなエンタテインメントも準備中だという福田氏。この土地と邸宅が、福田氏にひらめきを与え続ける。

Data
所在地:沖縄県南城市
延床面積:624.56㎡
延床面積:408.99㎡
設計者:Atelier Tete
構造:鉄筋コンクリート造

福田淳/Atsushi Fukuda
Speedy,Inc.代表取締役/STARTO ENTERTAINMENT 代表取締役CEO。1965年大阪府生まれ。2017年Speedy設立。20以上の新規事業、企業再生に携わる。タレントエージェント、ギャラリーも運営。新著に『好きな人が好きなことは好きになる』がある。

【特集 沖縄に住む】

この記事はGOETHE 2024年9月号「総力特集:人生の楽しみ上手が集う島 沖縄に住む」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=井田佳明

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