削らない、しみない、90分で完成、AI診断……。気づけば“歯科の当たり前”は塗り替えられていた。編集部が取材中に集めた歯科医療の最新トピックスを一挙紹介。デジタル・テクノロジー編。【特集 歯こそ最強のビジネス戦略】

1.CAD/CAMを活用した最新補綴
口腔内も3D技術を応用する時代。今や粘土や石膏は過去の遺物!?
かつて詰め物や被せ物といった補綴(ほてつ)治療における「型取り」とは、患者の口中に粘土状の印象材を押しこみ、固まるまで息を殺して待つという、不快感を伴うものだった。そこから石膏(せっこう)模型を起こし、熟練の歯科技工士が手作業で削りだす精度は職人の腕に委ねられていた。
その常識が、CAD/CAM技術によって根底から覆された。この最新技術を導入している歯科では、口腔内スキャナーが小型カメラで口腔内を光学スキャンし、わずか数分で完璧な3Dデータを生成する。そのデータを基に歯科医師はコンピュータ上で補綴物を設計し、院内のミリングマシンが高強度セラミックブロックをミクロン単位で削りだす。従来なら1~2週間を要した工程が、最短90分ほどで完結するというのだ。
精度の向上は、審美性にとどまらない。仮歯期間の消滅は、むきだしになった象牙質(ぞうげしつ)への細菌感染リスクを大幅に低減し、天然歯の寿命そのものを延ばすのである。
2.レントゲン読影に加わる第三の視点
将来の虫歯や歯周病まで予測。歯科治療もAI診断
歯科のレントゲン診断は今、静かな革命期にある。米国発の画像診断AIは、デジタルX線をミリ秒単位で解析し、肉眼では判別困難な初期齲蝕(うしょく)や骨吸収の兆候を自動検出する。とある臨床検証では、齲蝕検出感度90%以上という数値も報告されているとか。これは経験豊富な歯科医の読影精度に匹敵、あるいは上回る水準だ。
重要なのは、AIが医師に取って代わるのではなく「第三の目」として機能する点にある。臨床現場では、AI導入支援により診断のばらつきが平準化され、見落とされがちだった微小病変の検出率向上、さらには詰め物の下で静かに進行する二次カリエス(再発虫歯)の早期発見率向上が報告されている。データは患者にも可視化され、「なぜこの治療が必要か」を客観的な画像として共有できる。
経験と勘に頼ってきた診断に、データという裏づけが加わる。これは治療の精度を上げるだけでなく、未来の損失を未然に防ぐ「予防」のテクノロジーでもあるのだ。AIは、歯科医療を「治す医療」から「守る医療」へと進化させつつある。
この記事はGOETHE 2026年9月号「総力特集:歯こそ最強のビジネス戦略」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

