PERSON

2025.02.06

熱狂人生。 首都高で目にする看板「ALBA歯科」。一流経営者たちも絶賛する、インプラントの名医とは何者か?

28歳で開業。そこからわずか14年で20院を無借金経営で展開する男がいる。顧客には多忙を極める一流の経営者たち。開業前から未来に大きなビジョンを持ち、その類いまれな突破力で世界展開も視野に入れている。「三方よし」で目指す、理想の歯科医院とは? 40代の若き歯科医師のすべてを追ってみた。

熊木淳雄氏
熊木淳雄/Atsuo Kumaki
ALBA歯科&矯正歯科グループ理事長。1983年東京都生まれ。大学卒業後4年間で10のクリニックで経験を積み、2011年にALBA歯科&矯正歯科を開業。現在は国内外に20クリニックを経営する理事長を務める一方で、いまだ臨床医としてインプラントをはじめとする多くの手術をこなしている。米国インディアナ大学歯学部JIPインプラント客員教授や神奈川歯科大学特任教授も務める。

わずか5分で行う究極のインプラント

都内で首都高を走行すると、「一生保証 インプラント」の文字が書かれた黄色い看板を目にする。そこで微笑む男こそ、ALBA歯科&矯正歯科グループ理事長で歯科医師の熊木淳雄である。

現在42歳。28歳で開業して以来、東京と神奈川に19院、ベトナムにも開業して全20院。一代で築いた歯科医院としては、異例の早さでの分院展開だ。しかも朝の10時から夜20時まで診療(一部医院は19時まで)、さらに土日・祝日も診療するという患者本位の体制を敷いている。

ALBA歯科の看板
東京や神奈川を中心に目立つ看板で広告展開。「顔をさらけ出すのは勇気がいることです。でも僕は逃げも隠れもしない、医療だからこそ誠実に対応するという心意気を表現しています」。

実際ALBA歯科と熊木の名を高めたのは、そのインプラント技術。通常1本20分かかるといわれる手術を、熊木はわずか5分で完了してしまう。手術時間が短いと出血も腫れも少なく、患者にかかる負荷が格段に軽い。さらにALBAのインプラント治療は最安で税込9万9800円から。この秘密は来院患者数約31万人(2024年)の多さでネジを大量購入し、費用を抑えていることにある。高い技術と患者負担の軽さが評判を呼び、熊木は終日各院を飛び回って手術を行っている。

高いインプラント技術を誇り、365日年中無休の総合診療を行う歯科医院を20院も率いる熊木。2033年には全国100院の開業を目指すという、大きな目標を掲げている。

「やるからには業界ナンバーワン、日本最大の医療法人を目指しています。今の歯科業界に影響を与えられる人、発言できる人間になりたいからです」

ナンバーワンとは売り上げやクリニックの数だけではない。

「僕が大切にするのはNPS(ネットプロモータースコア)の数値。ALBAを他の人に紹介したいかどうかまで、0〜10の11段階で厳しく評価し、顧客からの信頼や愛着を測る指標です。同業だけでなく他業種との数値比較もでき、患者さんの満足度も数値化してくれます」

歯科業界に一石を投じるには、周りが納得する人物にならねばと考える。さらに100院開業を基盤にして、その先にアジア圏への開業展開が視野にある。

「大学5年の時にボランティアでタイの田舎に行きました。そこには歯磨きの概念もなく、経済格差に比例する医療格差を目の当たりにしたのです。最終日に子供たちに歯ブラシを贈ったのですが、その場でそれを質屋に持って行き、米と交換する姿を目撃しました。彼らが求めたのは歯の健康より、生きることなんだと。それがきっかけで歯科医院を海外に展開し、そこを拠点にボランティア活動を進め、将来は医療格差をなくせたらと考えるようになりました」

この経験はALBA海外進出の最初の地としてベトナム・ホーチミンを選んだ原点にもなっている。忙しい日程をやりくりして定期的にベトナムに行き、孤児院や日系工場での無料歯科検診・治療などを行い、2020年にはベトナムのクァントゥルン小学校に図書館を寄贈した。

一生保証できる歯科医院にするために

熊木が歯科医師免許を取得したのは24歳。そこからすぐに開業したわけではなかった。4年間で10軒の歯科医院で働き、数々のノウハウを学んだ。

「インプラントも矯正も口腔外科も小児歯科も全部できる総合病院を開きたかった。またパートナー(スタッフの意)が辞めない病院にしたかったから、何がダメで何がいいのかも4年をかけてリサーチしながら働きました。1日数人しか診ないVIP対応の病院、分院展開が盛んな病院……、すべては未来の夢を実現させるための行動です」

また、熊木は孫正義氏が19歳で打ち立てた『人生50年計画』に準(なぞら)え、人生を考えている。“20代で名乗りをあげ、30代で軍資金を貯め、40代でひと勝負し、50代で事業を完成させ、60代で事業を後継者に引き継ぐ”というものだ。だからとにかく20代で開業したかった。でも資金調達は困難を極め、どの銀行からも融資がおりない。

「事業計画書を読む銀行員が笑うんです。年商1億は地域の一番、年商2億は大成功した歯科医院のみが叩きだせる数字。それなのに僕は事業計画書に『1年目に年商1億、2年目に年商2億』と書いていたんです」

最終的に融資OKとなったのは「計画書どおりに売り上げが達成しなかったら、24時間365日クリニックを開ける」と確約した熊木の言葉。そして有言実行、借金は6年後に完済した。

ALBA歯科は開業当初から“インプラント一生保証”を約束しているのも特徴のひとつ。

「おそらくインプラントの一生保証をしているのはうちだけじゃないでしょうか。ブリッジや入れ歯より費用がかかり、外科手術もある。だからこそ、そのリスクを受け入れ、当院を選んでくれた患者さんに向けての誠意と覚悟だと思っています」

歯科医院は一代限りで辞めてしまう人も多く、どうしても一生保証がうたえない。でも熊木は病院を引き継ぐ次世代を育て、一生保証を実現する自信がある。

「あとは単純にナンバーワンの医療法人をつくり、全国に分院をつくっていけば、インプラントの患者さんは定期的にメンテナンスに通いやすいし、もっと歯科の定期検診を受ける人も増えるんじゃないかと思うのです」

異業種との交流。そして一流の経営者から学ぶ

39歳の時、熊木は新しい扉を開く。とある会に出向き、「1位を目指すなら、すでにナンバーワンの人の話を聞きたい」と勇気を出して話しかけた相手は、湘南美容外科クリニック創業者の相川佳之氏。そこから相川氏が「面白い男がいる」とつないでくれたのが、今では「アニキ」と慕う、NEXYZ.Group代表取締役社長の近藤太香巳氏だった。

「紆余曲折を経て、おふたりが飲む席に呼ばれるようになりました。近藤さんからさらに錚々たるご友人も紹介いただき、新しい学びの場が広がりました」

一流の経営者らの言葉は、熊木のかけがえのない宝となり、自身が掲げる理想も具現化されていった。

三輪バイクに乗る熊木氏
「41歳の誕生日に近藤アニキからいただいた三輪バイク、BRP CAN-AM SPYDER F3-S SPECIAL。アメリカから取り寄せてくださったそうです。これに乗るようになってから世界が広がりました(笑)。高揚感を味わいながら、大切に乗っています」

僕ひとりの病院ではない。未来永劫続く医療を

「現在ALBAのパートナーは約300名。辞めない病院、パートナーが集まる病院をつくれば、雇う側に優秀な人材を選択できる余裕が生まれる。結果、病院の質も上がるのです」

売り上げは最新設備や教育システムの導入、院の福利厚生に。

「歯科業界初の試みで取り入れたのがeトレで、勤務時間内に教育動画を観て、技術・知識向上などスキルアップができるシステム。さらに今年導入するのがエンゲージメントサーベイ。ALBAで働くパートナーの満足度を調査・数値化し、問題を解決することでモチベーションを高め、より職場や仕事を好きになってもらう取り組みです。NPS、eトレ、サーベイは外部委託で費用もかかりますが、他のクリニックが真似できない差別化を生むことができます。これも無借金で成長し続ける組織だからこそできること」

売り手よし(パートナー)、買い手よし(患者)、世間良し(社会貢献)の「三方よし」は、尊敬する相川氏との会話で学んだこと。未来永劫続く病院をつくるべく、熊木淳雄は正々堂々と全力で邁進している。

熊木淳雄を支える5人の大先輩

1.NEXYZ.Group 近藤太香巳
「歯科業界で日本一! 彼なら実現できると確信」

今一番プライベートで一緒に過ごしているのは熊木かもしれません(笑)。第一印象は明るく元気、礼儀正しくて感じのよい男。僕と安藤優子さんのテレビ番組『企業家たちの挑戦ストーリー』で話を聞き、仕事への想いの強さや医師としての能力を感じ、自分の歯の治療を任せ、多くの知人も紹介しました。業界にこれまでにない仕組みをつくり、さらなる飛躍を期待します。

近藤太香巳氏
近藤太香巳
NEXYZ.Group代表取締役社長 兼 グループ代表。1967年生まれ。現在上場2社36拠点。経営者団体パッションリーダーズ代表理事も務める。

▶︎ 大切な“教え”をスマホにメモ

スマホのメモ
「業界No.1の方々との飲みの席は希少な勉強の場」と、熊木は先輩方の言葉をスマホのメモアプリに残している。「断トツに多いのは近藤アニキの言葉。経営者としてのお金の使い方など、学ぶことがいっぱいです」。話が深くなるとメモが追いつかず「録音していいですか?」とお願いすることも。

2.幻冬舎 見城徹
「真心と技術と最新機器。三拍子揃った歯科医」

彼は奇跡の歯医者だと思います。こちらの気持ちをすべて理解してくれて、お任せすれば心地よい時間を過ごしながら治療が終わっている。病院というより、素晴らしい接待を受けている感じ。人柄は誠実、善良、正直そのもの。人間的にも腕前的にも何ひとつ注文がない男です。こんな歯医者はあり得ない。彼がいなくなったらすごく困るので、いつまでも健康でいてください。

見城徹氏
見城徹
幻冬舎代表取締役社長。1950年生まれ。1993年に幻冬舎を設立。多くの作家やミュージシャン、俳優と信頼関係を築き、ミリオンセラーを世に送りだす。

3.GMOインターネットグループ 熊谷正寿
「自らが治療を受けて、日本一の歯医者と実感」

彼は腰が低い、謙虚な歯医者さん。お会いした当時、歯に不具合を感じていたのですぐに医院を訪ねたところ、最新の機器で最高の治療! まさに驚異の歯科体験でした。彼の夢や目標は行動からしっかり伝わってきますが、次の具体的なプランなど本音で聞いてみたいし、少し年上の僕の話が参考になるようであれば、ぜひフォローさせていただきたいと思っています。

熊谷正寿氏
熊谷正寿
GMOインターネットグループ代表取締役グループ代表 会長兼社長執行役員・CEO。1963年生まれ。上場企業10社を含むグループ111社、従業員7546名のグループ企業を牽引。

4.作詞家 秋元康
「全国展開して、多くの患者さんを治してほしい」

見城さん、近藤さんの紹介で昨年知り合いました。優しい笑顔で、僕のような”痛み”に弱い患者にとっては安心感がありました。友人としても素敵な人で、その気遣いが心地いいです。これだけ安心感のある歯科医師はなかなかいないので、全国展開をしてひとりでも多くの患者を治してほしいと思っています。今度こそ、スケジュールを合わせて食事に行きましょう。

秋元康氏
秋元康
作詞家。1958年生まれ。「川の流れのように」など多くの国民的ヒット曲を生む。テレビ番組の企画・監修、ドラマの企画・脚本、映画の企画・原作も手がけるなど幅広く活躍。

5.ダイニングイノベーショングループ 西山知義
「素直で誠実な人間。私の歯を一生見守って」

彼は今までの歯科医と違い、Aパターン、Bパターンそれぞれの治療のメリット・デメリットを説明したうえで「僕はこれがいいと思います。なぜならば」と言ってくれる人。また素直で誠実な人間で「いい歯医者、いい医療法人をつくりたい」と食事をしながらも経営の質問攻め(笑)。日本で一番の医療法人となってほしいと思うし、一生涯、私の歯をお願いします!

西山知義氏
西山知義
ダイニングイノベーショングループ ファウンダー。1966年生まれ。1996年に外食産業に参入後、現在は国内外12ヵ国に458店舗を展開中。

熊木淳雄、日本一への道

1983
 1月18日東京都に生まれる。
1993|10歳
 ドラマ『振り返れば奴がいる』の白衣姿に憧れ、医療系を目指す。
2001|18歳
 神奈川歯科大学に入学。アメリカンフットボール部に入部する。
2004|21歳
 アメリカンフットボール部キャプテンに就任。人生初のリーダーシップとはという問題に直面。
2005|22歳
 大学5年生時にボランティアサークルを設立し、タイに行く。そこで経済格差と医療格差が比例することを目の当たりにする。
2007|24歳
 神奈川歯科大学卒業 歯科医師免許取得。4年間で10の歯科医院に勤め、歯科全般や病院の分院制などを学び、開業&離職者を出さない経営のノウハウづくりをする。
2011|28歳
 8000万円の借り入れをして、ALBA歯科(横浜鶴ヶ峰)を開業。
2012|29歳
 医療法人化。
2014|31歳
 ALBA歯科(小田原)を開業。
2015|32歳
 ALBA歯科(横浜上永谷)を開業。
2017|34歳
 ALBA歯科(川崎溝の口)を開業。8000万円の借り入れを完済。
2018|35歳
 医療法人社団ALBA 事務局設立。各クリニック名称を統合。この年、四女が急逝。仕事一辺倒の自分を反省し、家族との時間への向き合い方が変わる。
2020|37歳
 米国グアム大学 生医科学部 特任教授に就任(史上最年少)。米国インディアナ大学歯学部JIPインプラント客員教授に就任(史上最年少)。神奈川歯科大学特任教授就任。ほぼ毎年、開業が続く。
2020|38歳
 金色有功章受章・紺綬褒章受章。
2022|39歳
 ASIA GOLDEN STAR AWARD企業賞・企業家賞・社会貢献賞、マスター大賞を受賞。ALBA歯科&矯正歯科 ホーチミン開業。初の著書『突破力』(鴨ブックス)発売。この年、人生に多大なる影響を与える経営者、SBCメディカルグループホールディングスCEO(湘南美容外科クリニック創業者)相川佳之氏、NEXYZ.Group代表取締役社長の近藤太香巳氏と出会う。
2027|クリニックを41院にするという目標。
2033|クリニックを日本全国100院に。
2039|アジアを中心に60院開業し、国内外160院の開業を実現したい。

山口征浩の3つの信条

1.有言実行

「僕はやっぱり弱い人間なんです。だから声に出して、誰かに話さないとなかなか実行できないんです。人に話すことで責任が生まれ、結果やり切れるんです。これからもどんどん人に話します(笑)。だから8年後の100院、14年後の160院開業も必ず実行します」

2.ピンチはチャンス

「僕が常々、幹部パートナーに話している言葉。彼らが『まずいです』『聞いてください』と悩みや進まない案件をいろいろ相談してくるけれど、問題に気づいた時点で必ず解決できると思っています。そして乗り越えた時こそ急成長。まさにピンチがチャンスです」

3.誠を尽くす

「患者さん、パートナー、家族……、周りのすべての方々にいつも正直に真摯でありたいと思っています。医療人、社会人としても、僕と関わることでその人を幸せにできるような人になりたい。今の自分があるのも関わってくれる人たちのおかげですから」

TEXT=今井恵

PHOTOGRAPH=生田祐介

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