GOLF

2024.04.21

マスターズ優勝・シェフラーに学ぶ。アマチュアも使える、手堅いランニングアプローチ法

吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。今回は2年ぶり2度目となるマスターズ制覇を果たした、スコッティ・シェフラーに学ぶランニングアプローチを紹介する。

男子プロゴルファーのスコッティ・シェフラー

世界ランク1位の貫録をみせたシェフラー

2024年の男子メジャートーナメント初戦のマスターズは、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーが2年ぶり2度目の優勝を果たした。

最終日は7アンダーでスタートし、最終的に2位に4打差の11アンダーとして他の選手を寄せ付けない圧倒的なプレーで再びグリーンジャケットを身にまとった。

この勝利でマスターズを複数回優勝した18人目の選手となり、27歳9ヵ月での達成は史上4番目の年少記録となった。

2年前のマスターズ初優勝の際は、最終日の朝に緊張と不安から妻の前で泣きじゃくり、最終ホールを4パットのダブルボギーとするなど初メジャータイトルの重圧を感じながらのプレーだった。

しかし、今回のマスターズでは前回とは別人のように落ち着いて最終日をプレーし、シェフラー時代の到来を感じさせる堂々した勝ちっぷりだった。

特にアーメンコーナーと呼ばれる11番から13番ホールの難所では、他の選手がスコアを落とすなか、1ボギー1バーディーで乗り切ったことが大きい。

距離が長く難易度の高い11番ではボギーとしたものの、ピン位置が厳しい状況でセカンドショットを無理に狙わずにセーフティーなコースマネジメントを選択。このシーンはシェフラーの落ち着きぶりを感じた。

16番パー2では左の池が気になるピンポジションにもかかわらず、アグレッシブにピンを攻める素晴らしいショットを放ち、バーディーを奪取。勝負を決定づけた。メジャーの優勝争いで緊張しているなか、自信を持ってコースを攻め続ける姿が印象に残った。

2023年シーズンのシェフラーはメジャー未勝利だったが、メジャーで勝っていないことが不思議なくらい素晴らしい成績を残した。

優勝は2回だったが、トップ10入りは24試合中18回で75%を記録し、トップ15を逃したのは3試合のみで予選落ちはなし。平均ストローク1位、パーオン率1位という文句のつけようがない成績を残した。

メジャーの試合でも、全米プロ2位、全米オープン3位と優勝まであと一歩だった。2024年シーズンは3月のアーノルド・パーマー招待とザ・プレーヤーズ選手権で勝利を挙げ、今回のマスターズの勝利と合わせてすでに今季3勝だが、この勢いでメジャーをもう1勝しても不思議ではない。

間もなく子供も生まれる予定で、心身共に充実したシーズンとなるのではないだろうか。

マキロイ、グランドスラムならず

シェフラーの充実した戦いぶりの一方で、キャリアグランドスラムまでマスターズのみとなっているローリー・マキロイは残念ながら22位タイで終わった。

早くからマスターズに照準を絞って調整を続けてきたマキロイだったが、2日目に77を叩いて35位に順位を落として早々に優勝争いから脱落。3日目に21位まで順位を上げたが、首位に10打差では逆転は困難だった。

スコアは思うようにいかなかったものの、今大会での平均飛距離は318ヤードを記録し、ブライソン・デシャンボーを抑えてトップに立った。

マキロイも2024年で35歳。オーガスタは熟練の技や経験が求められる試合のため、まだまだチャンスはあるだろう。

シェフラーに次いで2位に入ったのが、スウェーデンの新鋭、ルドビッグ・オーベアだ。

スウェーデンの選手は少ないこともあって、メディアによって読み方が「アバーグ」「エイバーグ」などとまちまちだったが、最近では「オーベア」「オーベリ」などと表記されている。

2022年にアマチュア世界ランキング1位となったエリートで、テキサス工科大在学中には「ベン・ホーガンアワード」、「ジャック・ニクラスアワード」、「ハスキンズアワード」を受賞し、PGAツアーユニバーシティー1位の資格によって2023年にプロ転向した。

2023年のPGAツアーのスタッツは、トータルドライブ1位、平均バーディー数1位、パーブレイク率1位のほか、飛距離も317ヤードで6位を記録。11月のザ・RSMクラシックでツアー初優勝を果たすなど、1年目とは思えない活躍をみせた。

今回のマスターズは初日こそ73と出遅れたが、2日目以降はシェフラーを上回る成績だった。プロ2年目にして世界ランキングは7位まで上昇し、今後はシェフラーのライバルにまで上り詰める可能性もある。

LIV勢ではデシャンボーとスミスの6位が最高

2023年のマスターズではLIV勢の活躍が目立ったが、2024年はブライソン・デシャンボー、キャメロン・スミスの6位が最高。2023年のマスターズ覇者で2023年末にLIVに移籍したジョン・ラームは45位に終わった。

そのなかでデシャンボーは初日65で単独トップに立ち、LIV勢初のマスターズ優勝かと注目を集めた。

3日目には18番で80ヤードからカップインするスーパーショットを見せるなど見せ場をつくったが、2日以降はスコアを伸ばすことができず、トータル2アンダーの6位タイで終戦を迎えた。

持ち前の飛距離を武器に、メジャーの舞台で再び力強く躍動する姿を見たいところだ。

復活が待たれるタイガー・ウッズは22位で予選を通過し、マスターズ史上最多の24大会連続で決勝ラウンド進出となった。

しかし、3日目に大きく崩れ、トータル16オーバーで最下位。復活に期待したいが、体調がまだ万全ではないのかもしれない。それでもオーガスタの100ラウンド目となる最終日には、ひと際大きな声援が送られていた。復活の日を心待ちにしたい。

日本人選手は松山英樹がトータル7オーバーで38位タイ、久常涼は予選を通過できず、見せ場をつくれなかった。

手堅く寄せられるランニングアプローチ

風の強いテキサスでゴルフを覚えたのシェフラーが得意としているのがランニングアプローチだ。今回のマスターズでもたびたび見せたランニングアプローチのポイントを解説しよう。

ランニングアプローチでは、8番アイアンなどロフトの立ったクラブを選択するのポイントだ。

アイアンを使えばウェッジのようにクラブフェイスにボールをのせる必要はなく、パッティングのようにボールにクラブをヒットさせるだけでいいため難易度が下がる。

ランニングアプローチのアドレスでは、スタンスを広げずに体重を左足にかけ、センターよりも左にボールを置いて、若干ハンドファーストに構える。打ち方はパッティングと同じ要領で振り子をイメージして胸の動きに連動して腕を動かすようにする。

距離感を合わせるために、普段からクラブごとのキャリーとランを把握して練習しておいてほしい。

8番アイアンならキャリーとランの割合が1:4というように、クラブごとに距離を確認しておき、状況に応じてクラブを変えられるように練習を繰り返してほしい。

動画解説はコチラ

吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=AP/アフロ

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