友人宅に急にお呼ばれした場合やちょっとしたプレゼント、自宅でのカジュアルなランチ会などの際に、近所のスーパーやデパートなどで5,000〜1万円で買える“ちょっといいワイン”を知っておくと大変便利なもの。おいしいのは絶対条件で、ちょっと蘊蓄も語れると最高ですよね。そんな「街中で買える、1万円以下の“お宝ワイン”」を、年間1,000種類近いワインをテイスティングし、つねにおいしいワインを探し求めているワインブロガー・ヒマワイン氏がご紹介。

“ネクストブルゴーニュ”ニュージーランドで日本人夫婦が営むワイナリー
JR目白駅の駅前に「目白田中屋」という酒屋があります。1949年創業の歴史あるお店で、酒好きの方なら絶対に一度足を運んでもらいたい、個人的に大好きなお店です。
一歩足を踏み入れると、酒・酒・酒! 醸造酒に蒸留酒、ありとあらゆるジャンルのお酒が取り揃えられている様子はさながらお酒の博物館。酔っ払うためだけでなく、知的好奇心を満たすために飲むタイプの酒飲みにとって、まさに天国・桃源郷・エルドラド、といった場所です。
そんな目白田中屋、もちろんワインの品揃えも素晴らしいです。専用のセラールームには世界各地のワインが取り揃えられ、1,000円前後の安ワインから、希少で高価格なワインまでが選べます。
そんな目白田中屋のワイン棚から今回私が選んだのが「キムラセラーズ マールボロ ピノ・ノワール 2021」です。
キムラセラーズは2009年にニュージーランドのマールボロで設立されたワイナリー。1973年生まれで、キャピトル東急ホテルで和食のサービスマンをしていた木村滋久さんが設立し、ご夫婦で営まれている家族経営の小規模ワイナリーです。
私は海外で日本人が造るワインが好きです。「海外の恵まれた気象条件≒良質なぶどう×日本人の丁寧な仕事=おいしいワイン」みたいな式が成り立つような気がしているのと、やっぱり味覚に共通する分だけ、味筋(あじすじ)的にもおいしく感じられることが多いように思うんです。
具体的には「果実味」と「酸味」の両立。日本人には「をかし」と「あはれ」といったものを理解する感覚が備わっているように、日本人醸造家が醸すワインからはピュアな果実味と豊かな酸味が備わっているケースが多いと私は思います。
このキムラセラーズのピノ・ノワールもその例外ではありませんでした。いま書いたことをそのままなぞるようですが、よく熟した山田錦のような果実感があり、干し梅のような酸味もしっかりと備わっている。それでいて、炒ったスパイスのような複雑な風味も感じられます。めちゃくちゃおいしいです、このワイン。
ピノ・ノワールといえばフランス・ブルゴーニュ地方を代表する赤ワイン品種。かのロマネ・コンティの品種でもあり、世界中で人気です。一方、近年のブルゴーニュワインは高騰の一途を辿っており、それだけに“ネクストブルゴーニュ”は世界中で求められていますが、ニュージーランドは、アメリカ・オレゴン州などと並んでその有力候補のひとつ。
実際、これを「ブルゴーニュのワインだよ」と飲ませて、「いや、これはブルゴーニュではないッ!」と見破れる人はなかなかいないんじゃないでしょうか。ブルゴーニュワイン、それもヴォーヌ・ロマネあたりの村名ワインと比較して飲むのも楽しそうです。
ちなみに私が合わせたのはグアンチャーレ(牛肉の頬肉の塩漬け)で作るローマ風のカルボナーラ。グアンチャーレの塩味とロースト感がワインと調和し、非常に良いペアリングでした。ただ、ペアリングの幅はかなり広そうで、肉料理はもちろん、カツオのタタキとか、なんならエスニック系でも合いそうな懐の深さを感じました。
このワイン、目白田中屋では4,400円+税で売られていたので、支払った金額は4,840円。高級ワインの閾値となる(私調べ)5,000円を切る価格、4,000円台で買えるピノ・ノワールとして、このキムラセラーズのマールボロ ピノ・ノワール2021は最強ワインの一角といってもたぶん全然過言ではないと思います。
というわけでぜひ飲んでいただきたいワインだったのでした。そして、言わずもがな、「キムラさん」への贈り物としてもまことに素晴らしい1本です。私は娘の保育園の担任だったキムラ先生を思い出し、改めて感謝の思いを胸にしながらしみじみいただいた次第です。
ヒマワイン
年間約1,000種類のワインを飲み、「ヒマだしワインのむ。」というブログを運営するワインブロガー。高いワインも安いワインも、地球上で造られるすべてのワインが好き。

