定番を更新する革新性と、時代の空気感を的確に表現するしなやかさ。日本発のブランドが芯ある眼差しで見据える“今”を、新作が雄弁に語りかける。人気スタイリスト・野口強による連載「The character of G」。

1.オーラリー、パーソナルな自分軸と余白を着る
デザイナーの岩井良太氏がイメージしたのは、10代の頃から着続けたヴィンテージと最新のラグジュアリーアイテムを巧みにミックスし、自分らしいスタイルを構築する人物像。ジップアップブルゾンは、上質なラムレザーをヴィンテージ風に加工し、オーバーシルエットで仕上げた1着。袖を通した瞬間にしっくりとなじんでくれるのも、素材を極めるブランドの底力。

2.ワイズフォーメン×マシスの静謐な「黒」に宿る共鳴性
ワイズフォーメンとヴィンテージの美学を独自の視点で盛りこむマシスが、無骨な力強さと職人的なものづくりという共通の価値観をもとに協業。品のいい光沢が美しい別珍のセットアップは、京都の染色工場で丁寧に重ね染めを行うことで、濃密で奥行きのある黒が実現。ゆとりのあるシルエットも心地いい。

3.交差する質感と輪郭が導くサカイの新たな地平線
今季のサカイは、ブランドのお家芸であるハイブリッドを駆使し、シルエットを操りながら、大いなる自然に意識を向けたクリエーションを展開。ウィンドコートとブルゾンを融合させたコートは、シャリ感のあるウールと紡毛ウールの質感のコントラストも絶妙。コートと同素材でセンタークリースがきっちり入ったパンツとのセットアップで、鮮度もいっそう際立つ。

4.時代を挑発する、コム デ ギャルソン・オム ドゥの前衛
1987年にビジネススーツブランドとして始動し、ベーシックなスーツは継続しながらもウィットを効かせたアイテムを毎シーズン展開。フロントにライダースジャケットのディテールを盛りこんだグレーのセットアップも、斜めのカットや捻りを加えたプレイフルなテクニックがひときわ冴える。

5.スタンダードを上書きしたコモリの底力を再確認
ライフスタイルにフィットするダークなカラーリングとプロポーションが、現代のニュースタンダードとも称されるコモリの服。カシミアシルクの製品染めのシャツとイージーパンツに合わせたのは、縮絨ウールのジャケット。着古したような独自の風合いが、肩ひじはらない大人の日常着として支持されるのも、なるほど納得。

6.素材に宿るフィロソフィが紡ぐビズビムの現在地
ブランドを手がける中村ヒロキ氏の飽くなき探究心と真摯な姿勢が、ビズビムの真骨頂。黒のオープンカラーシャツに羽織った刺繍入りブルゾンは、うっとりするようななめらかな感触に思わず驚愕する逸品。毛足の長いシルク生地が深く上品な艶も生みだし、カジュアルアイテムを超えたオーラを放つ。

7.日常に品格と洗練を添えるオール ザ ヤング デューズ
格上のクオリティと磨き上げた精度の高いシルエットは、デビューから2シーズン目を迎える今季も健在。高級生地ブランド・ドーメルのカシミアウールを用いたダブルのコートは、襟裏やストラップ裏のレザー使いなどディテールも白眉。ワイドシルエットのイージートラウザーズは、大人の日常着としても使い勝手よし。

8.テーラリングの未来を構築ソウシオオツキの革新
2025年9月に開催されたファッションの世界的登竜門であるLVMHプライズで、見事グランプリを受賞。ディテールを微妙にずらしたりプロポーションを巧みに変化させながらも、上品かつスタイリッシュな造形で、メンズテーラードに新たな風を吹きこむ。気鋭のデザイナー・大月壮士氏が手がける話題沸騰中の新作をいちはやく着てみたい。


