ゲーテ読者に薦めたいとっておきの1冊をピックアップ! 今回はヴィンセント・スタンリー、イヴォン・シュイナードの『レスポンシブル・カンパニーの未来』をご紹介。
自然と共存する企業が果たすべき責任とは何か
2022年、アウトドアブランド・パタゴニアの創業者であるイヴォン・シュイナード氏は、本人と家族が所有していた同社の所有権を、環境危機対策に取り組むNPOと信託に移譲すると発表。「地球が私たちの唯一の株主だ」と宣言し、世界を驚かせた。
本書は環境経営の先駆者であり、50年にわたり時代の先端を走り続けてきたパタゴニアの挑戦の軌跡を描いている。
パタゴニアは「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というミッションを掲げ、活動を行ってきた。2011年には、自社のジャケットの写真に「このジャケットを買わないで」というコピーを添えた広告を出稿。そこには大量消費社会に対する警鐘、「買い替えるよりひとつの物を長く使ってほしい」というメッセージが込められていた。
他にも環境素材や循環型バリューチェーンの追求、社員や地域との関係性など、パタゴニアの考え方、行動指針が余すところなく紹介されている。
パタゴニアを成長させてきたのは自然への敬意と多大な労力、そして強靭な意志の力だ。私自身もパタゴニアの思想に感化されたひとり。持続可能な世界を次世代に残していくために、読んでおきたい1冊である。
Seitaro Yamazaki
1982年神奈川県生まれ。セイタロウデザイン代表。「社会はデザインで変えられる」という信念のもと、デザインブランディングを中心に多様なチャネルのアートディレクションを手がける。