人がたくさん乗せることができて、家族のためのセカンドカーにもなって、しかも格好いい。3列シート車のダークホース的存在を3台紹介したい。

新時代のスタイリッシュなミニバン
3列シートのスタイリッシュなクルマに乗りたい──。
意外と多いのがこうした声で、6人以上乗せる機会があるけれど、ぬか味噌臭いミニバンは嫌だという層が一定数存在する。自動車メーカーもそうした需要に対応すべく、3列シートのSUVを開発している。たとえばトヨタのランドクルーザーやレクサスのLXにGX、あるいはディフェンダーやレンジローバーといったランドローバー勢なら、たくさん乗せられる格好いいクルマというリクエストに応えてくれる。
ここではそうした定番とは別に、格好よくて、3列のシートを備え、さらに運転感覚も新鮮なモデルを紹介したい。
まずトップバッターは、いよいよこの夏より日本でのデリバリーが始まったフォルクスワーゲンのID.Buzzだ。このクルマはBEV(バッテリー式電気自動車)で、エンジン仕様は設定されない。ボディは標準ホイールベース(NWB)とロングホイールベース(LWB)の2種類が用意される。3列目シートの居住空間を考えると、NWBより250mm長い3240mmのホイールベースを持つLWBが好ましい。
このクルマの魅力はまず、ワーゲンバスという愛称で親しまれたフォルクスワーゲン・タイプⅡを彷彿とさせる、愛嬌のあるルックスだ。最近の国産ミニバンがとげとげしいフロントマスクになっているのに対して、ホッとするような平和な表情だ。
3列目シートの広さは期待通りで、シートの掛け心地のよさとあいまって、快適に移動することができる。
興味深いのは素直な操縦感覚で、背の高いミニバンでありながら、床下にバッテリーを敷き詰めるレイアウトを採るために、重心が低い。おかげで、車高が高いのにコーナーでぐらりと傾くようなことがない。後席の住人だけでなく、ドライバーも楽しめる。
フル充電での航続距離は554km(国土交通省審査値)で、仮に8割と見積もっても400km程度は走れることになる。

また、静かで振動のないモーター駆動のおかげで、室内は静穏だ。ただ広いというだけでなく、上質な走行感覚やファン・トゥ・ドライブといった面でも、いままでの3列シート車とは一線を画している。運転支援装置なども最新のものが搭載され、ロングドライブでの疲労を低減してくれる。
少しレトロなたたずまいと最新のテクノロジーを組み合わせた、おもしろい3列シート車がID.Buzzだ。

クラシックなたたずまいの3列シートSUV
続いて紹介したいのが、マツダCX-80だ。
このクルマのスタイリングは、エンジンを縦置きにする後輪駆動のレイアウトがベースになっている。近年の実用車はエンジンを横置きにする前輪駆動が大勢を占めるけれど、あえて高級車の基本に立ち返っているのだ。
結果としてボンネットの長い、古典的ではあるけれどエレガントなルックスとなっている。

全長×全幅×全高:4990×1890×1705mm
エンジン最高出力:231ps/4000〜4200rpm
エンジン最大トルク:500Nm/1500〜3000rpm
価格:¥3,943,500〜(税込)
問い合わせ/マツダコールセンター TEL:0120-386-919
このデザインの内側に、3列シートが収まっている。特筆すべきは、3列目のシートに大人がしっかりと座れること。シートレイアウトは前から2・2・2の定員6名仕様と、2・3・2の7名仕様のふたつがある。いずれも、3列目シートの頭上空間にはかなりの余裕がある。
マツダCX-80のもうひとつの魅力は、パワートレインが豊富なことだ。
3.3ℓ直列6気筒ディーゼルターボ、この直6ディーゼルを軸にしたマイルドハイブリッド、そして2.5ℓ直列4気筒ガソリンをベースにするプラグインハイブリッドと、予算や使い方に応じて選ぶことができる。
違いを簡単に説明すれば、直6ディーゼルは当然ながらエンジンの存在感が大きく、それがマイルドハイブリッドになるとモーターのアシストで洗練された雰囲気となり、プラグインハイブリッドはモーターが主役となる。
おもしろいのはただ快適で余裕のある高級SUVというだけでなく、マツダのクルマらしくハンドリングもスポーティに作り込まれている点だ。広島のクルマ好きのエンジニアたちが走りを磨き込んでいる絵が想像できて、思わずニヤリとしてしまう。運転が好きだからヨーロッパ車を選んできた、という方には、ぜひ一度ディーラーで試乗していただきたい。
欧州で展開するにあたって、ボディカラーやインテリアにも気を配ったとのことで、確かに気合が入っている。

全長×全幅×全高:4770×1860×1730mm
エンジン最高出力:170ps/3750rpm
エンジン最大トルク:350Nm/1750〜2500rpm
価格:¥5,990,000〜(税込)
問い合わせ/ジープフリーコール TEL:0120-712-812
最後にもう1台、「お子さんが小さい家族」という条件で、ジープ・コマンダーを紹介したい。
ジープらしい4輪駆動システムの走破性能など、ほかの3列シートSUVにはない個性を備えるものの、3列目シートは体格にもよるけれど大人が座るには少し窮屈。でも、天候を気にせず、スキーでもサーフィンでも楽しめる機動力の高さが、このクルマの魅力だ。
ジープというブランドらしいヘビーデューティなスタイリングに、「SNOW」「SAND/MUD」といった走行モードが用意される駆動システム。アドベンチャー・ファミリーに、リコメンドしたい。
サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。