CAR

2023.03.28

レンジローバー スポーツは、 レンジローバーとどこが違うのか?<試乗>

クルマ好き注目の1台、レンジローバー スポーツが日本の路上を走り始めた。では、2022年に日本市場に導入された新型レンジローバーとは、どのように違うのだろうか。レンジローバー スポーツに試乗しながら、両者の違いを確かめてみた。連載「クルマの最旬学」とは……

レンジローバースポーツ

おにぎりをギュッと固く握るように

ご存知のように、レンジローバーはランドローバー社のプレミアムブランド。したがってレンジローバー スポーツの正式な車名表記は、ランドローバー・レンジローバー スポーツとなる。

レンジローバー スポーツをひと目見て口をついた言葉が、「うまい」だった。なにが「うまい」のかといえば、このブランドの“らしさ”をしっかりと感じさせながら、レンジローバーとの差別化を図っているあたりがうまい。

具体的には全体のフォルムや、段差や凸凹のないツルンとした質感でレンジローバー・ファミリーの一員であることを主張している。いっぽうで、シャープなヘッドランプがダイナミックな運動性能を予感させ、横一文字のテールランプが高速域での安定性(=いかにも走りそうな雰囲気)を表現している。ちなみにレンジローバーのテールランプは縦一文字で、モダンで落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

おにぎりをギュッと固く握るように、レンジローバーをほんの少しコンパクトにして、ソリッドなテイストを与えたのがレンジローバース ポーツのデザイン的な特徴ということになる。

レンジローバースポーツ

レンジローバースポーツ

写真を見るとわかるように、ボディパネルのつなぎ目や段差がほとんどない、スムーズな表面処理が近年のレンジローバー各モデルの特徴。レンジローバーのその流れに添いつつ、レンジローバーより「走りそう」な意匠が与えられている。

運転席に座る。コマンドポジションと呼ばれる、ランドローバー社伝統の見晴らしの良いドライビングポジションは受け継がれている。スイッチやダイヤルの多くが姿を消し、大型のタッチスクリーンで操作するすっきりとしたインテリアの眺めも、レンジローバーから大きな変更はない。ただし、ステアリングホイールがやや小径で、クイックな操作フィールが印象的だ。

レンジローバースポーツ

レンジローバースポーツ

クリーンでモダンなインテリア。コマンドポジションと呼ばれるドライビングポジションは、70年以上にわたるランドローバー社の伝統だ。後席は従来型より、足元のスペースが約3センチ拡大している。

最大の違いは快適性のベクトル

新型レンジローバー スポーツの日本におけるパワートレーンは、3ℓの直列6気筒ディーゼルターボ+マイルドハイブリッドの「D300」と、3ℓの直列6気筒ガソリンターボ+マイルドハイブリッドの「P400」の2種類(ただし、ガソリンモデルはローンチエディションだけの設定で、すでに完売)。将来的にはプラグインハイブリッドや、EVもラインナップに加わる予定だ。今回の試乗車は、ディーゼルのD300だった。

マイルドハイブリッドシステムは、モーターだけでのEV走行こそできないものの、要所要所でモーターがエンジンをアシストする。たとえば信号待ちからの発進加速には、極低速域でのレスポンスに優れるモーターのおかげで、約2.5トンのヘビー級のボディが粛々と加速する。

マイルドハイブリッドはもちろん省燃費にも貢献するけれど、発進加速の静かさや滑らかさ、アイドリングストップ状態からの再始動の素早さなど、上質なドライブフィールの実現にも一役買っている。

6気筒のディーゼルの静かさと滑らかさは圧倒的で、ディーゼルエンジンに対する先入観を覆すはずだ。

レンジローバースポーツ

ディーゼルエンジンが1500rpmという極低回転域から650Nmという大トルクを発生するうえに、モーターもアシストするから、レンジローバー スポーツD300は市街地から高速道路、ワインディングロードまで力強く走る。

走り出してみると、レンジローバーとの違いはデザイン以上に乗り心地とハンドリングにあることがわかる。

レンジローバーがふわんふわんと走る、まさに大船に乗ったような乗り心地であったのに対して、レンジローバー スポーツはパッパッパっと水を切るモーターボートのような乗り心地だ。

両者に共通するのは、硬い地面の上ではなく、水の上を走っているような感覚だ。ただし水の上に乗って揺れている木の葉のように感じるレンジローバーと、水切りをする石のようにピッピッピと走るレンジローバー スポーツには明確な違いがある。

レンジローバーというブランドにふさわしい快適性を確保しながら、レンジローバーの太極拳のような動きと、レンジローバー スポーツの井上尚弥選手のような機敏な動きという違いを、見事に表現している。

レンジローバースポーツ

路面のコンディションやドライビングスタイルに応じて臨機応変にセッティングを変えるエアサスペンションのおかげで、どんな場面でも快適かつスポーティに走る。

「乗り心地がいい」という表現は頻繁に使われるけれど、レンジローバーとレンジローバー スポーツを比べると、乗り心地のよさにも種類があることがわかる。レンジローバーは、クルマに身も心も委ねられる心地よさ。レンジローバー スポーツのしっかりとした乗り心地は、ドライバーの意志をダイレクトに反映する心地よさ。

どちらも、悪路走破性能や実用性は充分確保しているから、あとはカッコと味わいの好き嫌いで選ぶことになる。いずれにせよ、この2台のどちらにするかで悩むというのは、贅沢で幸せな悩みだ。

レンジローバースポーツ

レンジローバースポーツ

ランドローバー・レンジローバースポーツ DYNAMIC HSE D300
全長✕全幅✕全高:4960✕2005✕1820mm
ホイールベース:2995mm 
車両重量:2450kg(ディーゼル)
エンジン型式:3.0ℓ直列6気筒ディーゼルターボ+マイルドハイブリッド
トランスミッション:8速AT
エンジン最高出力:300ps/4000rpm
モーター最高出力:13kW/5000rpm
エンジン最大トルク:650Nm/1500〜2500rpm
モーター最大トルク:42Nm/2000rpm
乗車定員:5名
価格:¥10,680,000(税込)〜
※試乗車と写真のモデルの仕様は異なる。

問い合わせ
ランドローバー・コール TEL:0120-18-5568(9:00~18:00、土日祝日を除く)

Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

過去連載記事

■連載「クルマの最旬学」とは……
話題の新車や自動運転、カーシェアリングの隆盛、世界のクルマ市場など、自動車ジャーナリスト・サトータケシが、クルマ好きなら知っておくべき自動車トレンドの最前線を追いかける連載。

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TEXT=サトータケシ

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