CAR

2023.02.14

トヨタ新型プリウスは脱エコカー! ガイシャ好きこそ試すべき【試乗】

先日、トヨタ・プリウスPHEV(プラグインハイブリッド)のプロトタイプの試乗会が開催された。これで、プリウスのラインアップがひとまず勢揃いしたことになる。ここで一度、新型プリウスがどれだけ変わったのかをまとめておきたい。連載「クルマの最旬学」とは……

新型プリウス

外観も内装も尖っている

すでに報道されているように、5代目となる新型プリウスの開発にあたってはトヨタ社内で「愛車にするのか、コモディティ化するのか」の議論があった。結果として愛車派の意見が通った形となり、「ひとめぼれから始まるデザイン」と、「意のままに走るドライブフィール」という二本立ての目標で開発が行われた。

真横から見るとフロントウィンドウとボンネットが連続するようなデザインは、往年のスーパーカーを思わせるほどのウェッジシェイプで、新旧を見比べてみると、違いがよくわかる。

2015年に登場した4代目プリウス。

こちらが、2015年に登場した4代目プリウス。

5代目となる新型プリウス。

そしてこちらが5代目となる新型プリウス。エッジィな造形に目を奪われるけれど、たしかにワンモーションフォルムというプリウスの伝統に回帰していることがわかる。

ただしデザイナーに話を聞くと、「4代目で崩れてしまった“ワンモーションフォルム”というプリウスらしさを取り戻すことも考えた」という。ワンモーションフォルムとは、車体の先端から後端までが滑らかに連続する未来的なシルエットで、いわれてみれば新型はプリウスの伝統に回帰したようにも見える。また、差別化を図るための奇をてらった造形ではなく、あくまでデザイナーが格好いいと思ったスケッチを形にしたのがこのスタイリングだという言葉も聞いた。

びっくりするのは外観だけでなく、運転席に座ってインテリアを見渡すと、思わず「おおっ」という声が出る。

どのように変わっているかというと、小径にしたハンドルの上からメーターパネルを見る構造になっているのだ。ただし、似たレイアウトを採用しているプジョーでも感じるけれど、実際に走り出すと、まっすぐに進行方向を向くことで視線を動かす頻度が減るから、運転に集中することができる。

5代目新型プリウスのインテリア

インテリアのレイアウトも大変革で、ドライバーはこうしてハンドルの上からメーターを見ることになる。慣れると視線移動が少なくて済むから、運転に集中できるし疲れない。

アクセルペダルに注目せよ!

エクステリアもインテリアも変わったけれど、同じくらいかそれ以上に、ドライブフィールが変わった。インプレッションの前に、まず簡単にモデル構成を紹介しておきたい。

ハイブリッド仕様には、1.8ℓエンジンと2ℓエンジンの2種類がある。けれども、1.8ℓエンジン仕様の「X」グレードは法人向け、「U」グレードはサブスクリプションの「KINTO」専用となるので、一般の方の購入対象となるのは2ℓエンジン仕様となる。2ℓエンジン仕様にはFF(前輪駆動)とE-Fourと呼ばれる4輪駆動が用意される。

5代目新型プリウスのインテリア

インテリアで好ましいと感じたのは、空調やオーディオのボリュームなど、さっと操作したい操作系はスイッチやツマミが残されている点。最近はすべてタッチパネルで操作するインターフェイスが多いけれど、頻繁に使うスイッチ類は残してくれたほうがありがたい。

まずFFに乗って、その軽快な加速フィールに驚かされる。モーターもエンジンも大幅にパワフルになっていて、従来型プリウスが「ハイブリッドのわりにはよく走る」という印象だったのに対して、新型プリウスは「ハイブリッドなのに速い」と、評価がひっくり返った。

ただ速いだけでなく、アクセル操作に対して自然に反応するようになったのがうれしい。

実は、アクセル操作に対するレスポンスがよくなったことには、少しマニアックな理由がある。従来型プリウスのアクセルペダルは吊り下げ式だったのに対して、新型のアクセルペダルはポルシェなどと同じオルガン式に改められているのだ。オルガン式は、アクセルを踏む力の微妙な加減を繊細に伝えてくれるのだ。

細かいところではあるけれど、神は細部に宿るというように、実はアクセルペダルに開発陣の意気込みが表れているといってもいいだろう。

コーナリングは牛若丸のように身軽で、スパンスパンと曲がって気持ちがいい。大事なのは、ただ身軽なだけでなく、乗り心地のよさもしっかり両立している点だ。足まわりを固めればキュンキュン曲がるようになるけれど、それだけだと乗り心地がピョコタンしてしまう。

快適さを保ちながら気持ちよく曲がる、しっとりとした大人の足まわりに仕上がっている点が素晴らしい。メカニズムと運転に通じたエキスパートたちが、入念にチューニングしたことが伝わってくる。

FF仕様で比べると、新型プリウスの2ℓエンジンの最高出力は152ps、モーターの最高出力は113ps。

FF仕様で比べると、新型の2ℓエンジンの最高出力は152ps、モーターの最高出力は113ps。従来型はそれぞれ98psと72psだから、スペック的にも圧倒的な違いがある。

強力なプラグインハイブリッドも控えている

ここで、後輪をモーターが駆動する4輪駆動(E-Four)に乗り換える。軽やかに気持ちよく走るというベースは同じであるけれど、若干キャラクターが違う。

強力なモーターが後輪をプッシュすること、FFより少し車重が重いこと、そしてこのふたつを鑑みたセッティングが施されていることで、しっかり感が増しているのだ。4輪駆動なので雪道などで滑りにくくなるのはもちろん、E-Fourは適切なトルク配分を行うことで、ドライ路面でも素早く安定した姿勢で曲がることにも貢献する。

FFにすべきか、E-Fourにすべきかは、かなり悩むところだ。軽快さをお望みならFF、重厚感を求めるならE-Fourということになるけれど、キャラはかなり違う。購入を検討されている方は、ディーラーで比較試乗することを強くお勧めしたい。

ディーラーで試乗といえば、後席の広さもぜひ確認していただきたい。ほとんど死角がないと感じた新型プリウスのなかで、格好いいスタイリングの代償として後席の居住空間だけが「むむむ……」だ。

実際に後席に乗り込んでみると、外から見るよりは余裕があるけれど、それでも頭上にはそこそこの圧迫感を感じる。おもしろいのは社内の評価で、日本人からは「むむむ……」という意見が出たけれど、より大柄なユーザーを相手にする欧米の評価者の意見は、「格好いいからこれくらい仕方がない」というものが大半だったという。

新型プリウスのインテリア

新型プリウスで唯一といっていいほどの弱点が、スポーティなフォルムとトレードオフとなる後席の居住空間。ただし、頭上空間にはもう少し余裕がほしいけれど、足元は広い。

最後に、プリウスPHEVについてふれておきたい。こちらはプロトタイプをクローズドコースで試乗しただけなので詳細な評価は控えるけれど、プリウスの「エコ版」ではなく、「プレミアム高性能版」だった。より上質で、よりパワフルだ。しかも、従来型のプリウスのプラグインハイブリッド仕様より、5割増しのEV走行が可能だという。一般道で試乗するのが楽しみだ。

プリウスPHEV

プリウスPHEV

クローズドコースで試乗することができたプリウスPHEV。最高出力151psのエンジンと163psのモーターを組み合わせて、風のように走った。

FFにすべきか、E-Fourにするか、それともPHEVか。いずれにせよ、プリウスはエコカーからファンカーに変身した。今までのプリウスに興味を持ってなかった、ガイシャ好きやドイツ車マニアにこそ試してほしい。おそらく、目からうろこが落ちるはずだ。

トヨタ・プリウスZ(FF)
全長✕全幅✕全高:4600✕1780✕1430mm
ホイールベース:2750mm 
車両重量:1440kg
エンジン型式:2ℓ直列4気筒ガソリン
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:152ps/6000rpm
エンジン最大トルク:188Nm/4400〜5200rpm
モーター最高出力:113ps
モーター最大トルク:206Nm
乗車定員:5名
価格:¥3,700,000(税込)

問い合わせ
トヨタ自動車お客様相談センター TEL:0800-700-700

Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

過去連載記事

■連載「クルマの最旬学」とは……
話題の新車や自動運転、カーシェアリングの隆盛、世界のクルマ市場など、自動車ジャーナリスト・サトータケシが、クルマ好きなら知っておくべき自動車トレンドの最前線を追いかける連載。

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TEXT=サトータケシ

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