GOURMET

2024.08.16

フレンチの匠が新天地・沖縄で魅せる集大成「デルニエ・シャピートル・K」に潜入

沖縄に“住む”となれば、知っておきたいのが特別な気分と料理を味わえる美食レストラン。今、行くべき注目店を厳選してご紹介。今回は、那覇市の「dernier chapitre k(デルニエ・シャピートル・K)」。【特集 沖縄に住む】

「デルニエ・シャピートル・K」の店内
重厚感のある店内。井上シェフの軽妙なトークも楽しみのひとつ。

完全紹介制。カウンターで美味美酒を味わう贅沢なひと時

ミシュランガイドの“レッド”に対して“イエローグルメガイドブック”と呼ばれ、世界中の食通に愛読されている『ゴ・エ・ミヨ』。2024年版では沖縄のレストランが8軒選出されていることからもわかるとおり、最近はそのレベルも注目度も急上昇している。

食も人生の楽しみのひとつと捉える人にとって、自分が拠点を置く場所の美食レストランをいくつか知っておきたいものだが、その答えを那覇に求めるならば美栄橋の「dernier chapitre k」は、絶対に外すことのできない1軒だ。オープンは2024年3月と新しいが、厨房で腕を振るうのが、日本のフランス料理業界の黎明期を支えた井上桂三シェフと聞けば、そのニュース性の高さに驚く人も多いだろう。

18歳の時に伝説のレストラン「ステラマリス」で修業を始め、吉野建シェフの右腕として頭角を現し、24歳で渡仏。その後、フランスの名だたる店で働き、帰国後は当時、国分寺のグランメゾンとして知られた「シェ ジョルジュ・マルソー」へ。40歳の時に西麻布に構えた自身の店には、食通はもちろん同業者も多く訪れた。

当時、カウンター割烹スタイルのフランス料理店はめずらしく、クラシカルな料理に和洋中の要素を盛りこみ、革新的と話題を集めたが「都会の生活を楽しみながらも、少し疲れていたのかもしれないですね」と井上シェフ。

その時に沖縄の常連客から熱心に誘いを受け、2度断ったのちに“新天地”で新しい料理人人生を送る決意をしたという。はじめは西麻布時代と同じ「KEIZO」として那覇市内に店を構え、現在は仏語で“最終章”を意味する屋号で、完全紹介制の店として営業。前菜からデザートまで6品で構成される2万2000円のコースのみを提供する。

暑い夏に合わせ“冷やしおでん”のイメージでつくった冷前菜や西麻布時代から常連に愛されてきたしじみのフランも。地元食材の取り入れ方も自然体で「この時季の沖縄のメジマグロはとても美味しい」と赤ピーマンやキュウリとともにガスパチョ仕立てで楽しませる。

確かな技術と遊び心によって生みだされる料理に気分がひたすら高揚する。井上シェフが20年以上前から大切にしてきた、カウンターでのコミュニケーションを楽しみながら美味美酒を味わうのは最高に贅沢なひと時。

通常は紹介制だが、予約時に「ゲーテを見た」と伝えれば特別に席を開放してくれるというので、この機会にぜひ!

dernier chapitre k/デルニエ・シャピートル・K
住所:沖縄県那覇市松山1-35-14 トキワビル1F
TEL:070-4173-2846
定休日:無休 ※店舗に要問い合わせ
営業時間:17:00~25:00
料金:コース¥22,000

【特集 沖縄に住む】

この記事はGOETHE 2024年9月号「総力特集:人生の楽しみ上手が集う島 沖縄に住む」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=小寺慶子

PHOTOGRAPH=G-KEN

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