今、日本の中国料理の躍進を支えているのはその神髄を愚直なまでに深掘りする料理人の存在だ。東京・下町の浅草で、強烈な個性を放つ「四川料理 巴蜀(はしょく)」とは――。【連載 仕事に効くレストラン】
四川の“黄金時代”に着目した料理が満載
文化とはその時代や地域性を映す鏡のようなものであり、料理の歴史を紐解けば、人間の知恵や創造の根源に触れることができる。そうした考えのもとに中国料理の世界を探求し続けるのが「四川料理 巴蜀」の荻野亮平シェフだ。
中国料理のみならず、学びを深めるために福建料理にルーツを持つ台湾料理店でも修業を積んだ。福岡に店を構えて15年目に上京を決意したのは、単に東京で勝負をしたいという思いだけではなく、中国料理研究の新たな一歩を踏みだすためだ。
これまで取り組んできたテーマのひとつが1980年から2000年の“四川料理の黄金期”にフォーカスすること。「四川料理がもっとも四川料理らしかった時代」を掘り下げると同時に、先人の“知恵の泉”である発酵文化にも着目。専門的な知識を料理に取り入れたいと、春からは大学に通い、発酵を学ぶというからその勤勉さに頭が下がる。
昼夜ともにコースのみの提供で、発酵調理に重点をおいた料理も多数。香辛料を合わせた塩水に漬け、桜チップで燻(いぶ)してから揚げるスモークダックなど、知識と経験に裏打ちされた逸品も。
心技一体で突き進む求道者から目が離せない。
四川料理 巴蜀/Shisenryori Hashoku
住所:東京都台東区浅草6-5-3
TEL:090-6975-2371
営業時間:11:30~13:30(最終入店)、18:00~20:00(最終入店)
定休日:日曜、祝日
座席数:テーブル20席
料金:ランチコース¥6,600~、ディナーコース¥13,200・¥22,000