日本ワインの飛躍が目覚ましい。なかでも年々、注目度が高まっている産地が、北海道。地形と気候に恵まれた「ワインの神に愛された土地」が最注目エリアだ。今回は、ワインでの町おこしを掲げてきた余市の「ドメーヌ・タカヒコ」を訪れた。【特集 北海道LOVE!】
2023年秋、余市町で開催される「La Fêtedes Vigneronsà YOICHI」。参加者がワイナリーやブドウ農園をめぐる“農園開放祭”の一般チケットは、ネットで発売が開始されるなり、たった2分でソールドアウトとなった。大手エアラインがツアーを組み、海外からそのために訪れる人も。
余市のワインが今、いかに注目を集めているかがわかるが、これほどまでにワインラバーを夢中にさせている理由には、世界に誇れるワインで町おこしをしたいと心から願う人々の存在がある。
2018年に余市町の町長に就任した齊藤啓輔さんは、地元の人たちが住み続けたいと思う町プロジェクトの一環として、ワインでの町おこしを掲げてきた。余市はもともとブドウの栽培が盛んであったが、ドイツ品種のケルナーが主体。これからのワインの可能性を広げるため、ピノ・ノワールやシャルドネを新たに育てる生産者には助成金にインセンティブをつけるなど、その発展を視野に入れて邁進してきた。
時には「なぜ、ワインばっかり」と逆風を受けることもあったが、ブレずに政策を進めてこられたのは、余市町が世界に誇るワイナリー「ドメーヌ・タカヒコ」の曽我貴彦さんがいたからこそと齊藤町長は語る。
「曽我さんがいなければ、ワインで町おこしというプロジェクトの方向性も進め方もまったく変わっていたかもしれない。余市では1970年代からワイン造りが行われてきましたが、その歩みが海を超えて世界の知るところとなったことに大きな喜びと感謝を感じています」
「リーデル」も全力エール。“余市産ワインの雄”を訪ねて
2022年3月にはオーストリアの老舗ワイングラスメーカー、リーデルとの包括連携協定を締結。余市がワイン銘醸地として発展していくために、力強いパートナーを得た形となった。
リーデル・ジャパンの白水健さんは「グラスはあくまでワインの黒子。でも複雑な香りとのびやかな余韻が魅力的な余市のワインを味わうには、適切なグラスの存在は不可欠だと思っています」と話す。
締結後は齊藤町長のアイデアで、町内の飲食店に余市町オリジナルグラスを町の補助で1個500円で提供するという試みも。これも「余市のワインが持つ個性をより深く知ってもらいたい」という強い思いがあればこそだ。現在は「ドメーヌ・タカヒコ」で特別なワインを造るプロジェクトを推進中。
ワインをこよなく愛する人々の挑戦の先に、前人未踏の輝かしい未来が見える。
ドメーヌ・タカヒコ/Domaine Takahiko
入手困難なワインだったが、世界一のレストランと称されるデンマーク「noma」のワインリストに採用されたことをきっかけに、まったく手に入らなくなり、“幻のワイン”とも。
この記事はGOETHE2023年9月号「総力特集:北海道LOVE!」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら