連載「オークションから読む高級時計の行方」の第15回は、カシオのG-SHOCK「G-D001」を取り上げる。
オークション界隈を騒然とさせた、G-SHOCKのユニークピース
事件が起きたのは2023年の12月10日。フィリップスが主催するチャリティオークションでの出来事だった。このオークションのために製作されたG-SHOCK「G-D001」が、なんと40万50ドル(日本円にして約5800万円)で落札されたのだ。
G-SHOCKがフルゴールドのモデルを発表したのは、これが初めてのことではない。では、なぜ「G-D001」がこれだけの高額で落札されたのか。
第一の理由として、G-SHOCK40周年を記念した世界にひとつのユニークピースであることが挙げられるだろう。
次に見るべきポイントは、ゴールドに煌めく豪華絢爛なスタイリングだ。ここまで豪奢な身ぶりのデザインは、G-SHOCKでも前例がない。素材に18Kイエローゴールドを使用した装飾的なディテールと、G-SHOCKが誇るタフネスな構造の融合は、見るものに独特の高揚感を与えてくれる。
しかも驚くべきことに、このモデルの外装設計は、CASIOの開発チームがAIを活用して完成させたという。人とAIの共創により生み出された、独創的な有機形状を持つフルメタル耐衝撃構造は、多くの時計開発者および目の肥えた愛好家たちの度肝を抜いたのだ。
また、落札者用に機能のカスタムやブレスレットが調整されて納品されるのも面白い。
繰り返しになるが、つまり“唯一無二の1本”であることが「G-D001」の存在意義であり、圧倒的な価値なのだ。
「G-D001」の出品及び落札が、時計マーケットにどのような影響を与えるのか。今後の注目すべき論点になるだろう。なぜなら、近年オークションハウスでの落札はブランディングやマーケティングにおける重要な役割を果たしているからだ。
その意味を含めて、2024年のG-SHOCKのラグジュアリー路線の動向は見逃せない。我々の想像を上回るユニークなアイデアに溢れたタイムピースの登場に期待したい。
■連載「オークションから読む高級時計の行方」...
新興の富裕層を巻き込み、かつてない白熱した落札が繰り広げられる時計オークション。本連載では、ジャンルは一切問わず、高級時計のトレンドを占う注目の時計をフォーカスする。