放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「令和ロマン」「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を輩出した桝本壮志のコラム。

「10月に人事部へ異動になりました。1万人の若手を育成してこられた桝本さんにとって、『一番育てにくいタイプ』はどんな人ですか? 人材育成・研修の参考にしたいので、ぜひ教えてください」という質問をいただきました。
会社には豊かな個性が集うものですが、こと吉本NSCには日本全国のツワモノたちが集結します。
なぜか入学から卒業まで全裸で授業に出ていた男性、なぜか亀甲縛りが正装だという女性、なぜか僕の名前で教室に牛丼50杯をウーバーした巨漢、なぜか毎回ネタを見せず、「オレのネタを見たらビビるよ! でも、今やるとパクられるからやらない!」と言い続けて消えた人もいました――。
けれど、彼らは「育てにくいタイプ」ではありません。彼らの無軌道さには手を焼きましたが、それを遙かに超える手を焼くタイプ、いわば「一番育てにくい人」が存在するのです。
ちなみに先日、某大手企業で講演をしたとき、この「一番育てにくい人の特徴」についても語ったのですが、社員アンケートでベスト5に入る「とくに印象に残った話」だったそうです。
一体、どんな人が「一番育てにくいタイプ」なのか? リーダー職は今後の対策として、若手社員は今後の気がまえとして、ぜひ読み進めてみてください。
一番育てにくいのは「会社が育ててくれると思っている人」
17年間の人材育成・企業研修講師業で分かってきたことは、若手のなかには「会社が育ててくれる」と思っている人が一定数いることです。
このタイプの人には共通点があります。それは、「いま・ここに憧れてきた」という傾向です。
先日講演をした企業は、よく記事で見る「年収が高い会社トップ〇社」の常連でもあるので、入社できたことで満足している人がいます。
また、最近のお笑い界は、芸人の追っかけをしていた元ファンが芸人になるケースも多く、なかには大好きだった芸人と同じ学校に入れたことで、すでに達成感を得ている人がいるのです。
彼らが入社(入学)後に陥りやすいマインドは、「すでに私は幸せになるパスポートを持っている」という幻想です。
気持ちは分かります。それなりの努力を重ね、高い競争率を勝ち抜いて入ったのだから、「私たちには最高の育成を施してほしい」と思うのでしょう。
しかし、現実はくっきり違います。
若い人材は「会社の宝」です。それは間違いありません。が、入社はゴールでなくスタートですし、会社は「無条件にあなたを育ててくれる場所」ではなく、「ある条件を満たした人が育つフィールド」なのです。
勘のいい皆さんは、もうお気づきですよね。その条件とは「育つ気がある人」なのです。
会社は、育つ気がある人と握手をして、手をつなぎながら有益な学びを付与していきます。
いつまでも「育つ・育たないは会社の責任だ」という考えに居ついてしまう人は、もっとも扱いにくく伸びにくい人材となってしまうので注意が必要なんですね。
吉本芸人の強みは「育ててもらう」でなく「育ってやる」
そういった「一番育てにくい人」に対して、僕が毎年語ってきたのが、吉本芸人の立身出世の強みとなってきた成長マインドです。
皆さんは、吉本の大御所が「ケチ本興業」と言って会社を揶揄したり、中堅芸人が「トンデモない営業に行かされた」と冗談まじりに会社批判をしているシーンを見たことはありませんか?
そういった軽口を叩ける関係から見えてくるのは、数多のスター芸人を輩出してきた吉本興業の強み。
いい意味で、はなから芸人が「会社がワシらを育ててくれることなんてあるわけがない」と達観した伝統があるのです。
多くの企業の若手は「会社が育ててくれる」と思っています。しかし、吉本では、多くの若手が「会社が育ててくれるとは限らない」と考え「自分で育ってやる」を芽吹かせる。
幸いにも、吉本には多くの劇場や同期といった、自発によって生まれる成長と、主体的に動くことによって生まれるチャンスがたくさん転がっている。
この「育ててもらえるとは限らない」→「自分で育ってやる」→「自発的に動くしかない」→「あれ? オレ売れ始めた……?」といったフローチャートが、吉本の売れっ子の多さであると僕は分析しています。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。「令和ロマン」をはじめ、教え子は1万人以上。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中! 桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。
皆さんも、「いまの会社と環境を利用して育ってやる」という感覚を育ててみてくださいね。
では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

