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2026.04.11

「素人が作ったシュウマイみたいな顔だなあ」。パンサー向井が知ったタモリさんの凄さ【桝本壮志対談①】

放送作家の他、NSC(吉本総合芸能学院)の講師として人気1位を10年以上獲得する桝本壮志の対談連載。今回はパンサー・向井慧。第1回は2人が13年前に出会った『笑っていいとも!』の現場と、タモリの「続ける凄み」、若手時代から光っていた向井の才覚について。

「素人が作ったシュウマイみたいな顔だなあ」。パンサー向井が知ったタモリさんの凄さ【桝本壮志対談①】

13年前の『いいとも!』で出会った、桝本壮志と“テレビ1年生”の向井慧

桝本 僕らの出会いは『笑っていいとも!』(フジテレビ系列)なんですよね。

向井 そうです! パンサーがテレビに出始めた2013年頃、“テレビ1年生”の状態で、桝本さんが作家をされている『笑っていいとも!』に出させていただいてました。

桝本 たまたま僕が担当する曜日の週替わりレギュラーが、パンサーとウエストランドとアルコ&ピースになったんです。出演日には必ず楽屋で話していましたよね。『笑っていいとも!』の終盤に近い時期です。

向井 フジテレビ地下のリハ室でオーディションを受けたのを、メチャクチャ覚えてます。吉本興業やタイタン、太田プロから何組か若手が呼ばれて、タモリさんや曜日レギュラーの方々の札を下げたスタッフさんと、『いいとも!』のコーナーを実際にやってみるオーディションだったんです。それでたまたま受かったのがパンサー、アルコ&ピース、ウエストランド。いま振り返ると凄いですよね。

桝本 『いいとも!』スタッフに先見の明があったんですよ。で、僕ら作家が、その未来の売れっ子やM-1チャンピオンに何をさせたかというと、「納豆を一週間かき混ぜたらどうなるのか」みたいな企画(笑)。

向井 そういうチャレンジ企画をやってました……笑。

桝本 パンサーのお三方には「シャチハタのスタンプは何回押したらインクが切れるのか?」とかを頼んだのかな。それを生放送でタモリさんに発表するという、『いいとも!』らしくない企画をやってたんですよ。

向井 僕らとしては、役割を与えてもらえるチャレンジ企画はありがたかったです。時間と体力と気力を使って発表することで、その場面だけは主役になれましたから。

パンサー向井
向井慧/Satoshi Mukai
1985年愛知県生まれ。NSC東京校(11期)入学と前コンビでの活動を経て、2008年に菅良太郎、尾形貴弘とお笑いトリオ・パンサーを結成。テレビ・ラジオ等で幅広く活躍。個人としてはラジオでも活躍の場を広げ、2022年からTBSラジオの朝の帯番組『パンサー向井の#ふらっと』のパーソナリティを務める。

「何もできなかった」という挫折。同志アルピー、ウエストランドと苦闘した『笑っていいとも!』最終期

向井 いまだにアルコ&ピースさんやウエストランドと会うと“同志”という感覚があるんです。それは、3組とも与えられた企画以外は「ほとんど何もできなかった」という記憶しかないから。

『いいとも!』が番組終了に向かってお祭り騒ぎになっていくなか、毎週何にもできずに生放送が終わっちゃって、「増刊号で使われるアフタートークで何とか喋りたい」と思っていました。が、そこでも勇気が足りず、エピソードトークもできなくて……。そういう挫折を3組とも感じている一方で、「あの場にいれたことがどれだけ財産になったか」も自覚しています。

桝本 覚えてるかなぁ。『いいとも!』最終回の時に、タモリさんが座っているテーブルに向井さんを座らせて、僕が写真を撮ったんですよ。「絶対に歴史に残る番組だから撮っておいたほうがええよ」と言って。

向井 撮っていただいた記憶、確かにあります。あの最終回の現場に立ち会えたのは、芸人冥利に尽きすぎますよね。同世代の芸人たちが今からどれだけ頑張っても絶対に実現できないことですから。

桝本 最後にウンナンさん、ダウンタウンさん、とんねるずさん、爆笑さん、ナイナイさん、中居さんといった全員が集まってきて、一個の画面に収まったあの瞬間に、僕らは立ち会っていましたもんね。

桝本壮志
桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。「令和ロマン」をはじめ、教え子は1万人以上。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中! 桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。

32年続いた生放送の境地。帯番組を背負って気づいたタモリさんの「続ける凄み」

桝本 その後で行われた二次会では、会場に1000人くらいの人がいたんですけど、タモリさんがその1000人の一人ひとりと握手をしたんです。そして、僕が今までしてきたなかで、一番強い握手が、あのときのタモリさんの握手でした。タモリさんは静かな方ですが、本当に痛いぐらいの握手に、番組に込めた思いが凝縮されている気がしました。

向井 タモリさんの凄さは、歳を重ねるほどに分かってきました。もちろん当時も「凄いなぁ」と思っていたんですよ。タモリさんって、はじめて会った方の顔を独特な例えで表現されるじゃないですか。それで初めて僕を見たときは、「お前、素人が作ったシュウマイみたいな顔してるな」と言ったんですよ(笑)。もちろんめちゃくちゃウケてました。

でも『いいとも!』に出ていたころ、僕はまだ26、7歳で。お笑いビッグ3でいうと、さんまさんやたけしさんの攻撃性のある笑いに惹かれがちだったんですよね。それが今、『いいとも!』とは全く規模が違いますが、朝の帯番組をラジオでやらせていただくようになって、月〜金の12時〜1時の生放送を何十年もやることの凄さが本当に身に染みて分かりました。

桝本 そこに繋がるんだね。

向井 はい。よくタモリさんが「毎日やることだから反省なんかしないよ」と言っていたんですよね。そのしなやかなスタンスに、僕は全くたどり着けていません。

桝本 1回の生放送を伝説にしようと思うと、32年は続かないんですよ。でも、特に西の芸人さんは、「1回の出演でいかに爪痕を残すか」というマインドを育成段階で授けられているから、どうしても力が入っちゃう。そこを1回1回淡々と、鷹揚にこなしていくスタンスがタモリさんにはありますよね。一方で「遊びなんだから本気でやれ」という方でもあるので、力は抜けていても手は抜いていないんですね。

向井 その凄さありますよね。『いいとも!』の最終回を改めて考えると、本当に豪華な芸人さんやタレントさんが自由に笑いをとっていましたけど、「あれはタモリさんという土台の上で成り立っていたものなんだな」と今は感じます。

桝本壮志×パンサー向井

「パンサーはこの人で持っている」。桝本が見抜いた、若き向井慧の才覚とは

桝本 『いいとも!』の打ち合わせで初めて楽屋で話をしたときに、向井さんは尾形さんと菅さんに後輩感のある振る舞いも見せていましたが、「このトリオはこの人(向井さん)でもっているな」と感じさせる空気がありました。

だから、いまラジオで活躍されている理由も分かるんですよね。前へ出て「印象に残るフレーズを言ってやろう」というタイプではないんですが、ちゃんと自分のところにボールが集まって、みんなに上手く配給するゲームメーカー的な能力が本当に高い。それを初めてお会いしたときにも感じました。

パンサーの3人のなかでも、菅さんは独自のスタンスを持っているので、かなり自由にやってもらってる感じですよね。

向井 職人気質なところがありますからね。

桝本 ですよね。だから菅さんには、ある程度フリーに動いてもらう。そして尾形さんは3人のなかで最初に動くタイプというか、番組の意図を汲み取って動いてくれる人ですよね。向井さんは、その2人を上手くマネジメントして、パンサーの3人としてお仕事をまとめられる方だと思っていたので、僕は打ち合わせでも主に向井さんに色んな話をしていました。

向井 そんなふうに思っていただけていたなんて、めっちゃ嬉しいですね。

桝本 そしてパンサーの3人は、初めて会ったときから印象がまったく変わらないんです。人当たりが本当に良いし、尾形さんは今でも「あけましておめでとうございます」のメールを毎年くれます。菅さんとは向井さん以上にLINEをしてるんです。本当に、お三方とも素敵な方々だというのが僕の印象です。

向井 嬉しいですね。僕は『いいとも!』だけじゃなく、桝本さんが作家をされていた『今夜くらべてみました』に若手の時期に出演したことも凄く印象に残っています。

ひな壇に座る芸人が20代、30代、40代にカテゴライズされて喋るスペシャル回のとき、20代でテレビに多く出ている芸人が凄く少なかったんですよね。そこで僕は、20代の芸人のなかで「裏回し」的な役割を桝本さんに任せていただいた記憶があります。その後、芸人として色々な経験をして、自分に得意なことも苦手なことも分かってきましたが、桝本さんに与えてもらった「色々な人が面白いことをできる環境づくりを手伝う」という役割は、僕の核になっています。

桝本 僕は当時から、それだけ向井さんが頼もしい方だと思っていました。芸人は「間が怖い生き物」で、誰も喋らないでいると言葉で埋めようとしてしまう性(さが)がありますが、向井さんは喋らずに待てるんです。それは向井さんと仲のいい先輩の又吉(ピース・又吉直樹)さんとも似ているところで、そこにトークの凄さの秘訣があると感じていますし、だからラジオも本当に聞きやすいんです。

※2回目に続く

TEXT=古澤誠一郎

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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