2026年2月初旬に広島蔦屋書店で行われた、吉本NSCの人気No.1講師・桝本壮志氏の最新刊『時間と自信を奪う人とは距離を置く』の刊行記念イベント。地元芸人のボールボーイ佐竹氏を相方に迎え、笑いのなかにも核心を突いた「人生相談」は参加者たちの心を揺さぶった。その珠玉のトークの一部を特別公開する。3回目。【他の記事はコチラ】

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。「令和ロマン」「空気階段」「エバース」…多くの人気芸人を輩出。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中! 桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。
【相談③】面白いアイデアや企画を求められても、なかなか形になりません。クリエイティブな発想をするためのトレーニング法はありますか?
「自由に企画を考えていいよ」と言われるのが、実はクリエイターにとって一番難しいことなんです。皆さんもそう思いませんか?
若手の皆さんが陥りがちなのは、「何でもいいから面白いことを」という無限の選択肢という大海原に放り出され、どちらへ泳げばいいか分からず翻弄されてしまうことです。実は、クリエイティブの本質というのは、何もない空間から生み出すことではなく、あえて「制限(リミット)」を設けることにあるんです。
例えば、大ヒットした映画『カメラを止めるな!』を例に挙げてみましょう。あの作品は、わずか300万円という極めて限られた制作費、そして無名の俳優陣という、一見すると絶望的な「制限」がありました。
しかし、その強烈な不自由さがあったからこそ、それを突破するために「ワンカットで撮り切る」「構造を二重にする」といった、独創的な作品が絞り出されたんです。もし潤沢な資金があり、有名な俳優を何人も使えたとしたら、あのようなエッジの効いた歴史的傑作は生まれていなかったに違いありません。
予算がない、時間がない、場所がない。その「ない」こそが、脳をフル回転させる最高のガソリンになるんです。
また、発想のヒントを求めて、遠い異国や海外へ「自分探し」の旅に出る必要もありません。私は「自分の親と2時間じっくり膝を突き合わせて、これまで聞けなかった話を深掘りする方が、よほど深い企画のヒントが見つかる」と思っています。
発想の源泉は、遠いどこかではなく、皆さんのごく身近な人間関係や、日常でふと感じる「なぜだろう?」「なんだかおかしいな」という小さな違和感の中に、宝物のように隠れているものなんです。
そして、今の時代に何より欠かせないのが、「競争」ではなく「協力・共創」の精神です。かつてはライバルを蹴落として一人勝ちすることが美徳とされた時代もありました。しかし今は、一人で悩みを抱え込むのではなく、他者と対話して異なる視点を取り入れ、アイデアを掛け合わせることでこそ、想像もつかないような飛躍が生まれます。
自分の弱みを見せることで他者の強みを引き出し、パズルのピースを合わせるように「共創」する。そのマインドを持つことで、目の前の「制限」すらも、人々を驚かせる面白い武器に変えていけるのです。
良い企画を作るためのトレーニングは、まず「条件を絞り込む」ことから始めてみてください。予算を10分の1に設定してみる、ターゲットをたった一人に絞ってみる。そうして現れた「制限」という名の壁は、あなたを閉じ込める監獄ではなく、より高く飛ぶための「跳躍台」になります。
「さあ、この不自由さをどう逆手に取ってやろうか」とニヤリと面白がる。その「芸人マインド」こそが、新しい時代を切り拓く企画を生み出す源泉になるんですよ。
※4回目に続く

