PERSON

2025.11.23

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、舞台『千と千尋の神隠し』…俳優・福地桃子「お芝居も取材も、いまだに緊張します」

是枝裕和監督作『ラストシーン』などでも注目され、先日行われた第38回東京国際映画祭では映画『恒星の向こう側』で最優秀女優賞を受賞した俳優・福地桃子さん。今回、2025年11月28日公開される主演作『そこにきみはいて』を通して体得した、仕事との向き合い方を語ってもらった。インタビュー第3回は、緊張との向き合い方、オフ時間の過ごし方を聞いた。

映画『そこにきみはいて』、福地桃子さんインタビュー

緊張した分だけ、お客さんの拍手が嬉しい

俳優としてデビューして9年、大河ドラマや朝の連続テレビ小説、映画に配信ドラマにと多くの作品に出演、2024年は舞台『千と千尋の神隠し』でロンドン公演を成功させた。そして2025年11月28日には主演を務めた映画『そこにきみはいて』も公開されるなど、活躍の場を広げている福地桃子さん。自身では成長や変化を感じているのだろうか。

「変化はもちろんしていると思いますが、お芝居をする時も、こうして取材で話す時も、いまだに緊張してしまいます。そういえば先日、大先輩の俳優の方とお話しをしていて『緊張ってもうしないんですか』って聞いてみたんです。そうしたら『全然、毎回するよ。だって冷静に考えたらお芝居って変なことをしているからね。大勢の前で泣いたり笑ったり。でも好きでやっているからいいんだけどね』っておっしゃっていて。なんだか、『緊張』も大切にしたいなと思ったんです」

けれど経験を重ねて、自分なりに「緊張をほぐす方法」を見つけてきたという。

「取材で緊張する時は、事前に伝えたいことを文章にしておくこと。撮影など不安なことがある時は、少しでも外に出て散歩して風にあたること。でも、緊張するって、私はいいことだと思うんです。“Hungry is the best sauce”ってフレーズがありますよね、これは私の母がよく言うのですが、『お腹が空いている時が一番美味しく食べられる』ということ。それと一緒で、緊張している分、お客さんから拍手をもらった時の嬉しさは大きくなりますから」

映画『そこにきみはいて』、福地桃子さんインタビュー
『そこにきみはいて』
誰にも恋愛感情を抱くことのない香里は、理解者であった健流と婚約。しかし入籍を前に健流は自ら命を断つ。健流の親友であった作家・中野慎吾を誘い、ふたりで街をめぐり始める。

脚本・監督:竹馬靖具 原案:中川龍太郎 出演:福地桃子、寛一郎、中川龍太郎ほか
2025年11月28日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
©「そこにきみはいて」製作委員会

そう笑う福地さんの手元には、この取材で伝えるべきことをまとめてきてくれたであろう、紙が握られていた。仕事ひとつひとつに真摯に取り組む福地さん、オフはどんなふうにリラックスしているのか聞いてみると。

「季節を感じると、リラックスしますね。レジャーとか特別なことをしなくても、風が秋っぽくっていいなって感じて、それを誰かと共有するのが嬉しい。『秋ってなんだか寂しい気持ちになりますよね』『ね』って。こういう季節の話題って、誰とでも話せるじゃないですか。さらに人によっては『この時期の植物はね……』なんて教えてくれたり。そういう些細なやりとりに安らぎを感じますね」

今年の夏は季節を感じるために川辺に行ったりもしたそう。

「川辺でひたすら石を拾っている人がいて、水に足をつけながら、それをぼーっと見ている、という休日でした(笑)」

人と関わり、人を癒やす仕事をしたい

ゆるりと過ごすオフの時間にも、ふと「仕事」に思いを馳せることがある。

「休日にある作家さんがやっているショップにふらりと入ってみたんです。その方がつくり上げた作品と居心地のいい空間がそこには広がっていて。さらにお客さんと目が合うとにっこり微笑まれるんですよ。その方がその人生でつくってきたものが、空間全体に滲みでていた。ああ、いいなぁと思ったんです。そういうふうに、私とは別の職業でも、すべての職業から学ぶところがあって、具体的にどう自分の仕事に活かすのかはわからないけど、でもいいなと思ったところは、誰のなんでも、全部自分の仕事においても真似したい。そう思うんです」

「仕事」に心をこめ、心を砕く福地さんに、つきなみだけれど聞いてみたくなった。「もし、俳優でなかったらなんの仕事をしていたと思うか」と。すると迷わずにこう答えてくれた。

「今と変わらず、人と関わる仕事がいいなと思っています」

そう微笑む福地さんが、思いをこめてつくった映画やドラマに、これからも多くの人が癒やされることだろう。

映画『そこにきみはいて』、福地桃子さんインタビュー

福地桃子/Momoko Fukuchi
1997年東京都生まれ。2016年俳優デビュー。NHK連続テレビ小説『なつぞら』で話題となる。近年の出演作に大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、『舞妓さんちのまかないさん』、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』、映画『サバカン SABAKAN』、『あの娘は知らない』など。舞台『千と千尋の神隠し』にて主人公・千尋役を務めロンドン公演も成功させた。映画『恒星の向こう側』(中川龍太郎監督)にて、第38回東京国際映画祭コンペティション部門 最優秀女優賞を受賞。

<衣装クレジット>
トップス¥44,000、スカート¥57,200(ともにマメ クロゴウチ/マメ クロゴウチ オンラインストア www.mamekurogouchi.com) 靴¥137,500(ジェイエムウエストン/ジェイエムウエストン 青山店 TEL:03-5485-0306) ピアス¥29,040、リング¥20,900(ともにSAMAC TEL:03-6434-1128)

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=野﨑慧嗣

STYLING=梅田一秀 

HAIR&MAKE-UP=鷲塚明寿美

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