HKT48の中心メンバーとして輝いていた兒玉遥さん。毎日続けた“反省ノート”は、努力の証ではなく、心を追い込む道具となり、完璧主義ゆえに躁うつ病に苦しむきっかけにもなった。現在は「ジャーナリング」という新しい習慣で心を整えている。アイドルとしてのリアルな体験から学ぶ、心の整え方とメンタルマネジメントのヒントとは。インタビュー2回目。

完璧主義が招いた「反省ノート」の罠
15歳でHKT48のセンターとしてデビューするも、21歳で躁うつ病と診断された兒玉遥さん。自分でよかれとやっていた習慣が、自分を追い込んでしまうこともあるのだと、教えてくれた。それが「反省ノート」だ。
兒玉さんは当時、「自分ができなかったこと」をひたすら書き連ねるノートをつけていた。
ダンスでミスした、ダイエット中なのに食べてしまった、トーク番組でうまく話せなかった……。問題点を書き出し、整理する作業はビジネスにおいても行われるが、兒玉さんが書いていたのは、すべて自分自身の「至らない点」。
そのノートには「デブ」「ブス」「痩せろ」といった自分を中傷する言葉がびっしりと並んでいた。反省のつもりが、いつしか自分を追い込む刃となっていたのだ。

1996年福岡県生まれ。アイドルグループ・HKT48の1期生。「はるっぴ」の愛称で親しまれ、2012年にAKB48「真夏のSounds good!」で初選抜入りを果たす。2016年にはAKB48選抜総選挙で9位に輝いた。2017年2月に躁うつ病を発症し休業。復帰後の2019年6月にHKT48を卒業し、俳優としての活動を本格化した。出演作に、NHK朝の連続ドラマ小説『おむすび』、映画『空のない世界から』など。出演映画『そこにきみはいて』が2025年11月28日公開。
今の子は“メタ認知”ができている
「自分はなんでこんなにできないんだ。もっとできるはずだ、怠けるな!と、どんどん自分で自分を追い込んでいました。
今考えれば、ダンスができなくても頑張っている子は応援したくなりますよね。ちょっとぽっちゃりがかわいい子もいる。いろんな子がいていいんだから、それぞれの個性を磨けばいい。なのに私はすべてにおいて完璧を目指さなければいけないと、そして完璧になれない自分に絶望して苦しんでいました」
今でこそ冷静に語れるが、当時は「完璧なアイドルでなければ」という呪縛が、躁うつ病を悪化させる要因となっていた。一方で、兒玉さんは現代のアイドルを「メタ認知ができている」と評する。
「集団のなかで自分がどういう存在で、どういう役割なのかを、俯瞰して客観的に見ることができている印象です。私は現在29歳ですが、令和の若者はすごいなって思っちゃいます(笑)」

悩みを書き出す「ジャーナリング」で心を整理
現在はうつに揺り戻されないために、そして自分をメタ認知するために、「反省ノート」ではなく、「ジャーナリング」を習慣にしているという。
ジャーナリングとは、悩みや考えを紙に書き出して整理する方法。悩みを書き出す点は「反省ノート」と同じだが、客観的に自分を俯瞰する「メタ認知」を意識しながら、解決策までしっかり書き出すことが重要だ。
「問題点を、上空から眺めるような意識でいったん書き出す。そうすると『これはいつまでにやればいい』『これはこうすればいいのでは』とわかってきて、『なんだ、たいした悩みじゃなかった!』と気づくこともあります。
書いた紙は解決したらすぐ捨てます。だから1週間後には、何を書いたかも忘れてる。それを積み重ねていくと、悩みは自分が思っているほどたいしたことじゃないと体感できるんです」
朝のジャーナリングでネガティブ思考をリセット
兒玉さんはジャーナリングを「必ず朝に行う」のがポイントだという。
「夜は誰でもネガティブになりやすいです。私もうつの時は、夜にいろいろ考えすぎて自分を責めて、一睡もできないということがよくありました。だから、何かを考えるのは朝!
30分早起きして書き出して、解決策を前向きに探ってみるんです。朝のほうが頭も動くし、余計なことは考えません!」
考えを書き出すことは、自分のなかに溜まっているなにかを吐き出すことでもある。そしてその行為自体が時に自分を解放してくれる。
自伝『1割の不死蝶 うつを卒業した元アイドルの730日』で、躁うつ病で苦しんだ過去と療養の日々を赤裸々に吐き出した。自身のなかに変化はあったのだろうか。
「吐き出しすぎて、何が赤裸々なのかわからなくなりました(笑)。それくらい、すべてを脱ぎ捨てました。過去のイタい自分まで綴っているので、それが読んでくれた人にどう響くのか、今は少しだけ怖い気持ちもあります」
インタビュー3回目に続く。
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