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2025.02.27

“商業ビル”の常識を覆すソルト・グループCEOの仕事術「強い想いを持つ経営者のトップダウンが、唯一無二をつくる」

飲食を軸に、商業施設や不動産などのコンテンツ開発などを行うソルト・グループ。リリースするたびに話題となるコンセプチュアルな商業施設は、どのように生まれるのか。CEO、井上盛夫氏に話を聞いた。

ソルト・グループCEO、井上盛夫氏

日本の商業ビルは個性がない

飲食店を軸に事業を拡大し、近年は、勝浦の海を一望できるレストラン&サーマルスプリングスパ「edén」や、名門ゴルフ場内に佇む会員制グランピング施設「TOKYO CLASSIC CLUB」、1棟のビル内で、食事も仕事も遊びも完結できる「EAT PLAY WORKS広尾」など、コンセプトが明確な複合施設を続々と誕生させているソルト・グループ。どれもロケーションを生かしたユニークなコンテンツが詰まっており、感度の高いエグゼクティブたちの心を掴んでいる。それらの仕掛人が、同グループCEOの井上盛夫氏だ。

「『EAT PLAY WORKS広尾』は、“食べて、遊んで、仕事して”をコンセプトに、ビル一棟丸ごとプロデュースさせていただきました。16店舗が横丁形式に並ぶ1・2階の『THE RESTAURANT』はどなたでもご利用いただけますが、3・4階のラウンジと5・6階のオフィスはメンバーシップ専用。コンセプトに共感してくださったメンバーたちが、この場所を通じて交流を深め、互いに刺激を与え合い、新たなビジネスの種も生まれているようです。マインドフルネスのレッスンやビジネスマッチング、クリスマスパーティーなど、メンバー対象のイベントも開催していて、みなさん活用してくださっています」と井上氏は楽しげに語る。

近年日本では多くの商業ビルが新設されているが、大半は、低層階に飲食店やショップが入り、高層階はオフィスやホテルという構成で、既視感が否めない。しかも、低層階と高層階の運営者が違うせいか、フロアごとにコンセプトが異なるケースが目立つ。そのせいか、「ビルの内部が分断されている印象を受けてしまいます」と井上氏。

「それに対して、コンセプチュアルなビルの場合、そのコンセプトに惹かれる人々が集まり、フロアをまたいで回遊してくれるので、ビル全体の集客が見込め、収益も上がります。利用する立場としても、その方がワクワクするし、おもしろいのではないかと。少なくとも僕は、明確なコンセプトを打ち出した場所の方が楽しいし、好きですね」

自分が好きかどうか。これこそが、井上氏がビジネスで大切にしているひとつだ。

ソルト・グループCEO、井上盛夫氏
井上盛夫/Morio Inoue
1966年兵庫県生まれ。立命館大学在学中から飲食店経営に携わる。2002年、ソルト・コンソーシアムを設立し、自社ブランドの飲食店運営をはじめ、商業施設・不動産などのバリューアップ、ウェディング、グランピング、海外でのレストラン展開など、7つの事業を展開。日本の食文化を世界に発信する日本ファインダイニング協会(JFDA)を発足。

「あったらいい」という妄想を形にする

仕事の指針をたずねたところ、井上氏の口から発せられたのは、「経営者らしくなくて申し訳ないですが、指針なんてたいそうなものはないですよ。ただ、『こんなんあったらいいな』と思うものを形にしてきただけ」という言葉だった。

「『きれいな海が見える岸壁に、スパとサウナ、おいしいレストランがあったら素敵だなぁとか、自然に囲まれてゴルフとキャンプができたら最高だろうな』と妄想し、ロケーションや費用を含め、成立するかしないかを考え、『いけそうだ!』となったら実行に移す。この業界に携わって30年以上になりますが、このスタイルはずっと変わりません。その時々に自分がやりたいとイメージしたことを形にし、そこにお客様がいらしてくださり、喜んでいただいて。それで、お金がもらえるのですから、本当に幸せな仕事です」

自分が好きで関心があることだからこそ、いろいろリサーチし、どうやったら実現できるか、頭をひねる。井上氏の発想は、潔いほどシンプルだ。

経営者ゆえ、成功するか否かについては熟考し、冷静に判断する。かといって、勝算がありそうだからといって、自分自身が興味のないものには手は出さない。言い換えるなら、ソルト・グループが手掛けている飲食店や施設は、どれも井上氏の「あったらいい!」という想いが込められたものなのだ。

ソルト・グループCEO、井上盛夫氏
今回インタビューを実施したのは、2024年秋、井上氏が銀座にオープンしたホリスティック・ウェルネス複合施設「THE HUNDRE ロンジェビティハウス」にて。注目の先端医療を井上流アプローチで提供するとあって、早くもエグゼクティブの間で話題に。

「僕は旅行も好きで、世界中のいろいろなホテルに泊まっていますが、素敵だなと思うホテルのオーナーと話をすると、みんな“想い”が強いんですよ。その想いをベースに、場所選びから規模、インテリアにサービスなど、あらゆることにこだわってつくる。建物は建築家に丸投げ…なんて他人に任せたりせず、細かいところにまで、とことん口を出す(笑)。いわば、トップダウンですね。

そんな風に、トップに明確にやりたいことや表現したい世界観があって、それを実現したいと強烈に思って取り組むからこそ、人の心をワクワクさせるような、コンセプチュアルでおもしろい施設ができるのだと思います」

餅は餅屋という言葉に代表されるように、日本は「専門家に任せれば間違いない」という意識があり、オーナーといえども、専門家の意見を尊重するケースが珍しくない。また、「広く受け入れられるもの」を重んじ、「前例のないこと」を嫌う風潮も根強く残っているからか、際立った個性のあるものが生まれづらい。

「自分が妄想したものを形にしているだけ」と、明るく、きっぱりと言ってのける井上氏のような経営者だからこそ、唯一無二の施設が誕生するのだろう。

後編(2/28公開)では、井上氏が新たに手掛けた唯一無二のロンジェビティ施設について話を聞く。

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=干田哲平

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