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2024.11.11

「いかにも成金でしょ?」にしたんクリニック・西村誠司、30億の豪邸が“金だらけ”の理由

「イモトのWiFi」「にしたんクリニック」、不妊治療の「にしたんARTクリニック」などさまざまな事業を手掛けるエクスコムグローバル代表取締役社長・西村誠司氏。25歳で起業し、現在は個人純資産300億円といわれる西村氏は、いかにして成功したのか!? 渋谷の一等地に完成した豪華絢爛な住宅で、その半生を語るインタビュー第3回。なぜここまで派手な家をつくり、メディアに公開しまくるのか、その理由に迫る。【他の回はこちら。※11/10以降順次公開】

にしたんクリニック西村誠司と30億の豪邸

金のシャンデリアに金の滑り台! まさに「成金趣味」の邸宅

渋谷にある西村邸、軒先に植えられた2本で7000万円超えの樹木をわき目に、室内へと進む。

玄関を入った先、現れる巨大な扉が開けば、そこには金色のシャンデリアが燦然と輝く応接室が。巨大なワインセラーにはアルマン・ド・ブリニャックのシャンパンがずらっと並び、庭先には清らかな水が湛えられている。

「上の階にも行ってみてください」

今度はそう案内されエレベーターに乗り込む。その内部もまた豪華絢爛な金色で、ここが渋谷区の一個人の住宅であることがにわかには信じ難くなってくる。

たどり着いた屋上には、渋谷の街を一望できるインフィニティプール、サウナ、さらに炭酸泉の温浴スペースも。プールの横にはこれまた黄金に輝く巨大滑り台が鎮座。ここからインフィニティプールに滑り込めば、まるで渋谷の街にダイブするような感覚になるのだろう。ちなみにこの滑り台だけで4000万円かかったという。

「いかにも、成金趣味でしょう?」

西村氏はそう、こちらを挑発するように笑った。

西村邸はインテリアも空間もすべてスタイリッシュで、5つ星ホテル内にいるような感覚になる場所だ。しかし、いたるところに散りばめられた金のモチーフがあまりに眩すぎて、その「成金趣味」という言葉に頷かざるを得ない。

「もちろん、わかってやっているんです。ステレオタイプの、いかにも(・・・・)な成金。そういう存在ってよくも悪くも目立つでしょう。『金の〇〇』ってすごくキャッチーだし、わかりやすい。こうやってメディアにも取り上げてもらえますから(笑)。

『にしたんクリニックの社長の家はヤバイ』とか『にしたんクリニックの人の家には金の滑り台がある』とか、なんでもいいからとにかく、人に知ってもらうこと。それこそがマーケディングにおいて一番大事なことだと思っているんです」

認知されていないものに、アンチなんて生まれない

悪名は無名に勝る。人は知らないものより、知っているものを選ぶ。

だからこそにしたんクリニックのコマーシャルは、内容よりもクリニック名を連呼し続け、街のあらゆる場所に巨大広告を打ち続ける。

「認知されていないものにアンチなんて生まれない。マイナスイメージから入ることも“狙い”なんです。実際クリニックに行っていただけたら、医療の質が高く、スタッフも丁寧であることがわかるはず。そうなれば『あれ? 意外といいじゃない、すごくいいじゃない』となっていく。コワモテのお兄さんが捨て猫を拾って可愛がっていたら、すごくいい人に見える、あの手法ですね」

だから、西村氏はこうして自宅をさらし、あえてのステレオタイプの成金を演じているというのか。

「この家やクルマなど、欲しいものが手に入ったとこのインタビューの最初に言いましたけれど、実際は全然、私の趣味ではありませんから(笑)。社長が悪目立ちするのが、マーケティングとして一番効果が高いので。実際、私が一番興味があるものは、家でも金でもクルマでもないんですよ」

にしたんクリニック西村誠司と30億の豪邸
渋谷の街と自邸のプールを背景にポーズをとり、小誌撮影隊を盛り上げてくれる西村氏。

自分のためにだけ金を使っていては次なる成長はない

では一体、何にもっとも興味をもっているというのだろう。単刀直入にそう尋ねると、西村氏は真剣な顔つきで答えた。

「社会貢献です。その想いを反映した『にしたんARTクリニック』は、私たち夫婦がアメリカでの不妊治療の体験をきっかけにつくった、不妊治療専門クリニックなんです」

「にしたんARTクリニック」は2022年6月に新宿院を開院し、現在までに全国に9院を展開。この先10年で50院開院を目指している。その最大の特徴は、22時まで診療を行っていることだ。

「日本は女性活躍を声高に言うけれど、大部分のクリニックは18時ぐらいまでの診療で、日曜日も休院しています。これでは仕事と不妊治療の両立は難しい」と西村氏。そこで開院前、スタッフに『22時まで診療を行えば、患者さんは仕事が終わってからでも通える』と説得したのだという。

「確かに、スタッフの仕事は大変です。でも仕事なら、人様のために重い荷物を背負って人を助けるのが当たり前だと私は思っています。スタッフにも、今までできなかったことをやろう、いちクリニックとしてではなく日本のために頑張ろう、と話しました。そして、日本の少子化に少しでも歯止めをかけることができたら――。だからこのクリニックは採算がとれなくてもいい、そう思って始めたんですよ」

さらに西村氏は昨年、自身の「にしたんこども基金」にて、シングルマザー、シングルファーザーの家庭に旅行をプレゼントするという企画を行い、SNS上でも大いに話題になった。今、西村氏の興味はもはや自分自身になく、もっと大きな世界に向いている。

にしたんクリニック西村誠司
有名起業家からも「さらに金を稼ぎたい」とよく相談を受けるという西村氏。「金はもういいから、もっと世の中のことを考えるフェーズに行くべきだと伝えました」

「会社の売上でいくと、年間2〜4億くらい、従業員は30人以下という企業の経営者が、一番派手に自分自身に金を使いがちです。ご自身の給料は3〜4000万くらいでしょうか。六本木で夜な夜な飲み歩く、確かに最初はそういう生活は楽しいでしょう。けれどそこに止まっていたらステップアップはあり得ない。資産が数百億の人たちはみんなお金儲けではなく、事業を通じて世の中を変えたいという人たちばかりです。

だって、社長がお金お金と言い続けていたら、従業員はついてきません。数百億の事業だとしたら、従業員が数百、数千の組織になるわけですよね? それだけの人間を、金にしか興味のない人間が率いることはできません。私のこの『成金趣味』は、話題づくり。にしたんの名前を世の中に知ってもらうためのポーズ。『話してみると西村さんって、普通なんですね』とよく言われますよ(笑)。

動かす額が大きくなればなるほど、人として、次の段階へ行くことができるチャンスになります。お金より、自分のやることが社会に役立つことに喜びを感じ、だからこそさらに人を惹きつけて、結果的により多くのお金を生み出すことができる。どんどん突き抜けていけば、個人の所得も会社の売り上げも増えて、それをまた社会に返していく。そういう循環に、ある程度までいったら入らないといけないんですよ」

西村氏はひと呼吸おいてから、こう言った。

「もちろん、私だって自分に派手に金を使って、社会のことなんて考えない若い時期もありました。でもそれを変えてくれたのは、子供の存在かもしれません」

インタビュー最終回では、究極の子育て論を語る。

【他の回はこちら。※11/10以降順次公開】

西村誠司/Seiji Nishimura
1970年愛知県生まれ。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)を経て、1995年インターコミュニケーションズ(現エクスコムグローバル)を設立。モバイル通信サービス「イモトのWiFi」、メディカル支援サービス「にしたんクリニック」「にしたんARTクリニック」などさまざまな事業を展開。著書に『最強知名度のつくり方 売上98%減からのV字逆転を実現した必勝術』がある。

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=干田哲平

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