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2024.11.10

にしたんクリニック・西村誠司「イケるかも、と思ってからでは遅い」次々と事業を成功させる手腕の原点

「イモトのWiFi」「にしたんクリニック」、不妊治療の「にしたんARTクリニック」などさまざまな事業を手掛けるエクスコムグローバル代表取締役社長・西村誠司氏。25歳で起業し、現在は個人純資産300億円といわれる西村氏は、いかにして成功したのか!? 渋谷の一等地に完成した豪華絢爛な住宅で、その半生を語るインタビュー第2回。リスクを恐れない、ビジネスパーソンの生き方とは。【他の回はこちら。※11/10以降順次公開】

にしたんクリニック西村誠司

最初から「イケる」と思えた事業はなかった

貧しい家庭で育った西村氏は、13歳から新聞配達を始め、奨学金で大学へ。アクセンチュアの前身アンダーセンコンサルティングに勤務したのち、25歳で起業を果たす。

「もともと起業したいと思っていまして、会社には『3年で辞める』と言って入社したんです。上司もそれを面白がって、『君が起業家として成功すれば、アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)としてもいい宣伝になるから』と応援してくれたんですよ。

けれど実際は3年待てずに、2年で起業。ボイスメールといって、音声メッセージを送るシステムがあればいいのになと、それが最初の起業アイディアでした。早くカタチにしないと他の人にやられてしまうと焦って、計画より早く起業することになったんです。今思えば、誰もそんなサービスやらないよ、って思いますけど(笑)」

いさんで独立、起業したものの事業はなかなか軌道に乗らず、2年で7000万円の借金を背負うことに。

「正直いまだに、新しいビジネスを始める際は手探りで、どうやれば成功するかが、わからないんです。でも、とにかくスタートしないとなんにも始まりません。

今、軌道にのっているいくつかの事業も、最初からイケると思って始めたものはひとつもないんです。2022年に不妊治療の『にしたんARTクリニック』を始めて、今はうまくいっていますけれど、これだってビジネスとして成功するイメージはもっていなかった。ただ自分のやるべきことを、やってみる。やっていくうちに自然と自分たちの足で立てるようになり、そのビジネスにおけるオセロの角、みたいなものがどこにあるかが見えてくる。その時になってやっと、そのオセロの角をどうやって取りにいくかを考える。私はいつも、そういうふうに事業を始めて、進めていくんですよ。だから裏を返せば、失敗するリスクが実はすごくあるんです」

にしたんARTクリニック
「にしたんARTクリニック」新宿院の広さ90㎡のワークスペースを備えた待合スペース。明るく、リラックスできる空間だ。

リスクをとることが怖くない

西村氏は、自身の経営者としての最大の特徴は「リスクを恐れない」ことにあると考えている。

「とにかくリスクのある方に進むんです。怖くないんですよ。これはもう生まれつきのものかもしれない。やってみて失敗したらしたでしょうがないかな、くらいにしか思いません。

たとえば今、私のこの家はテレビなどさまざまなメディアに取材してもらって、場所も間取りも世間にバレてしまっています。泥棒が入るリスクがあるけれど、でも最悪それが報道されればニュースで『にしたんクリニックの社長の家に泥棒が入りました』と繰り返し流れて、宣伝になるかもしれないし(笑)。私にとってあらゆるリスクは、そのくらいの感覚のものなんです」

その言葉通り、西村氏は20代でそうそうに事業に失敗し借金をつくるも、まったく怯むことなく次々に事業を展開。気がついたら借金完済まで漕ぎ着けていたのだという。

「土俵際でどれだけ粘れるか。それが経営者にとって一番大事なことだと思いますから」

にしたんクリニック西村誠司と30億の豪邸
新潟で温泉付きの別荘建設を計画しているという西村氏。「見積もりが13億と出ているんですが、よく考えたら1泊10万円の旅館に1万3000泊できるなと。やめようかなとも考えています……(笑)」

事実、エクスコムグローバルの事業のひとつ、「イモトのWiFi」がコロナ禍で打撃を受けた際にも、その土俵際の粘りは凄まじいものがあった。

「海外渡航ができないんですから、海外に持っていくWi-Fiルーターの事業は困難に陥りました。まさに追い込まれた土俵際でしたね。でもこのWi-Fi事業はコロナが向かい風になったけれど、逆にコロナを追い風にできる事業があるんじゃないか、そう考えてはじめたPCRの検査事業で、会社の立て直しに成功しました」

パンデミック初期の世界的混乱のなかで、粛々と従業員の安全性を確認しながらPCR検査事業を準備していく。未知のウィルスを相手にするということはリスクを多大に含んでいるが、この時もまた西村氏が恐れることはなかった。

「リスクをとらないかぎり、前に進むことはできない。当時はそれこそ、『テナントが嫌がるから』とPCR検査の会場を借りることすら困難でした。けれど最終的には街中に検査場がたくさんできましたよね。イケるかも、と思って事業を始めたのでは他に遅れをとる。なんでも先陣を切ってリスクを承知で向かっていかないと成功はありえませんから」

自分の存在を誰かのために役立てたい

現在、西村氏は自身のSNSアカウントや会社に届いたメッセージを、ひとつひとつ読み、できる限り返事を書くようにしている。

「先日、ある手紙を受け取りました。とても達筆で、美しい言葉がしたためられた手紙だったんです。よくよく読んでみればなんと2年前まで、刑務所に20年間服役していた方からのものでした。不登校の14歳の子と話している私のTikTokの投稿を見てお手紙をくれたのだそうです。おつとめを終えて、心を入れ替えて生きていく。そのためのアドバイスをもらえないか、そういう内容でした。

あまりに美しい字と丁寧な言葉で、とても興味が湧いたんですよ。いったいどんな方なのだろうと。きっと今後、20年も刑務所にいた方と話すことはないでしょう。だから思い切って電話をかけてみたんです」

にしたんクリニック西村誠司と30億の豪邸
自身のTikTokアカウントでは、「リアルを見せる」と給与明細や、カード利用額も公開し、話題を読んでいる。

見知らぬ人に、大企業の社長が自らコンタクトをとる。それだけでもリスクは大きいはずだが、さらにそれが最近まで刑務所にいた人物となればなおさらだ。しかし西村氏は、そこにも恐れを抱くことはなかった。

「電話をしたら、すごく喜んでくださった。刑務所のなかに差し入れられる雑誌に私の記事が出ていて、それで興味を持ってくださったということでした。怖くなかったかって? いやいや、そこにリスクがあろうとも、自分の知らない世界から学べることは必ずある。そしてリスクをとってでも、自分の存在を誰かのために役立てたい。そういう思いでした」

リスクを恐れることなどまるでない。それはもはや、西村氏が生まれつきもつ特異体質のようなもので、簡単に真似できることではないだろう。だからこそ、西村氏はビジネスにおいて唯一無二の人なのだ。

インタビュー第3回では、西村氏の邸宅、その全貌を公開する。

【他の回はこちら。※11/10以降順次公開】

西村誠司/Seiji Nishimura
1970年愛知県生まれ。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)を経て、1995年インターコミュニケーションズ(現エクスコムグローバル)を設立。モバイル通信サービス「イモトのWiFi」、メディカル支援サービス「にしたんクリニック」「にしたんARTクリニック」などさまざまな事業を展開。著書に『最強知名度のつくり方 売上98%減からのV字逆転を実現した必勝術』がある。

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=干田哲平

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