放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。
こんな御相談がきました。
「いくら歳を重ねても、いつも同じような失敗を繰り返してしまいます。そんな自分との向き合い方、楽になる考え方ってあるんでしょうか?」
なるほど。遅刻をしてしまう、期日が守れない、部下にキツく当たってしまう……など、同じ失敗をやらかした自分を責め、イヤになり、落ち込む。
似たような悩みを持っている方はたくさんいますよね。
そこで今回は、吉本興業で多くの芸人さんのメンタルケアに取り組んできた僕なりの知見、思考法をシェアしてみます。同じ失敗を繰り返してしまう自分との「向き合い方」や「悩み」が、ちょっとでも和らげば幸いです。
同じ失敗ではなく「シン・失敗」
吉本NSCにも「同じ失敗を繰り返す自分」に悩む生徒が多くいます。彼らはよく「成長していない自分が歯がゆい」と口にするので、僕はまずこんなふうに伝えます。
「新しいことができるようになった時じゃなく、新しい見方ができるようになった時が成長だよ」と。
例えば、なぜ同じ失敗をしてしまうのでしょう? それは、私たちが「忘れる」という最高のスペックを持っているからです。
失恋の痛み、他者からの中傷などの辛い経験も、やがて忘却できる。それと引き換えに失敗やミスも忘れ、また繰り返してしまうんです。
そして次に、こんな視点も伝えます。
「よく新ネタの舞台で、セリフを飛ばして落ち込む若手がいるけど、それは新ネタという“新しい仕事”にチャレンジしたから。『飛ばした』という事実だけを拡大すると同じ失敗に思えるけど“新しい仕事の失敗は、いつも新しい失敗”であるのも事実だよ」と。
あなたは、自分の失敗だけを拡大していませんか? 仕事はつねに「相手」があり、つねに「新規」をこなしていくもの。
同じ失敗のようでもプロセスと登場人物が違うので、シン・ゴジラ、シン・ウルトラマンのように、主人公は一緒でもストーリーは別の「シン・失敗」とも言える。そんな視点を持つことも大切なんです。
失敗を「失点」に置き換えてみましょう
さらに僕は、生徒たちに「失敗を、失点に置き換えてみよう」とも伝えます。
例えば、サッカーの失点は、誰かの失敗やミスによって起こりますが、プレイヤーも観客も「失点は仕方ない。逆転しよう!」と、おのずと前向きに、ポジティブに考えることができます。
日常で起こる私たちの失敗も、ただの“途中経過”であるのは同じ。でも、いざ自分事になるとネガティブになり、ピッチで足を止めてしまう。これが失敗の悪魔性です。
なので私たちは、スポーツ観戦をするように、ビジネスシーンでプレーしている自分を、俯瞰で見る視座をもつことが必要ですし、野球が1-0の接戦より、8-7で勝つルーズヴェルト・ゲームが最も面白いと言われているように、「点を取ったり取られたりするほうが燃えるよな」といった感覚を養い、“失敗を失点に置き換えて思考していく”ことも大切なんですね。
同じ失敗をしたあとに必要な3つのマインド
最後に、同じような失敗をすることは誰にでもあることですが、押さえておきたいのは“そのあと”です。
どんな態度、どんな姿勢で仕事に向かうべきなのでしょう?
若手芸人はよく、失敗のあとに「リベンジする」という言葉を使うのですが、僕としてはハードルが高く感じるし、同じ失敗を繰り返すことも十分にあり得るので、次の3つのマインドを念頭においています。
それは“①動く ②自分らしく失敗する ③繰り返す”です。
失敗後のあるあるは、足が止まることなので「それでも動く」をデフォルトにする。再び失敗する可能性もあるけど「前回よりも自分らしく失敗することを目指す」。そしてそれを「繰り返してもいい」という心づもりで生きていく……といった思考です。
いかがだったでしょうか? ひとつでも活かせそうな言葉があったら嬉しいです。ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。