PERSON

2024.10.12

Snow Man ラウール、単身パリへ。ショーモデル挑戦と挫折を語る

人気絶頂のアイドルグループSnow Manのメンバーとして、日々スポットライトを浴びるラウールが、ショーモデルとして世界の頂点を目指すべく、一念発起して単身パリへ。挫折を重ねながらも成長した21歳が、ニュートラディショナルなモードの最新を艶やかに着こなす。【特集 大人服2024】

Snow Man ラウールさん
ブランドのアイコンであり、メンズアウターの定番であるトレンチコートを、くるぶしまで届きそうなロング丈としなやかなウール生地の半裏仕立てで軽やかにアレンジ。チェックパンツが、小気味いいアクセントに。コート¥418,000、タートルニット¥156,200、パンツ¥176,000、シューズ¥264,000(すべてバーバリー/バーバリー・ジャパン TEL:0066-33-812819)

自分の力で成果を摑みとることが、最も大事なことでした

今をときめくセレブリティやジャーナリスト、バイヤーが世界中から集結し、名だたるトップブランドが最新コレクションを発表するパリ・ファッションウィーク。とりわけ昨今は、ブランドの招待で最新ルックに身を包んだ各国の人気アイドルが会場を訪れ、最前列で他のセレブリティと並んでショーを見る光景がおなじみだ。

しかし、「彼」は違った。超人気アイドルグループのSnow Manのメンバーで、自他ともに認めるファッショニスタ。ベネズエラと日本のハーフという恵まれたルックスに加え、超絶的なダンスのセンスを持つラウールは、いち「モデル」としてパリメンズファッションウィークの「ランウェイを歩く」ことを選んだ。

別軸でキャリアをつくれば表現の説得力が増すと確信

「16歳で初めてファッション撮影をした際に、モデルとして服を着て、カメラの前に立つことがすごく楽しかったんです。以来、何度もファッション撮影やランウェイショーを経験させていただきましたが、アイドルとして活動している以上は、『Snow Manのラウール』が『服を着ている』というフィルターがどうしてもかかってしまう。とてもありがたいことではあっても、表現者としては、ファッションの魅力がきちんと伝えられているのかいつも気になっていたんです。

服の魅力を純粋に伝えたい、と思った時に、もしかしたら自分にモデルのキャリアを別軸でつくるのもアリかもと。だったらモデルの仕事の頂点でもある、パリ・ファッションウィークのランウェイを歩けば説得力がより増すだろうと思ったんです」

アイドルのチャレンジに対して、「どうせ」とか「しょせん」とかと揶揄する人々は残念ながらまだまだ多い。ラウールは、そんな雑音や向かい風をものともせず、むしろ圧倒的な結果で制圧してやろうという意気込みで、2024年6月に単身パリへと向かい、現地の老舗モデル事務所に所属。オーディションに足繁く通った。およそ1ヵ月の滞在で、その数は40にもおよんだという。

「パリ滞在中は、身体をモデル向きに仕上げると同時に、いつどこでどのブランドのオーディションが入っても駆けつけられるよう、スマホと自転車が手放せませんでした。ただ、アイドルとしてある程度のキャリアはあっても、モデルとしては新人。ダメ出しをされれば単純にヘコみますし、時には自信を失いかけたことも。でも振り返ってみれば、ジュニア時代に同じようなことはよくあったことなので、アイドルの下積み時代の経験が、メンタルを保つうえですごく役に立ちましたね」

モデルがオーディションを受け、ショーのランウェイを歩くまでには、いくつもの選考段階がある。新作を身につけてデザイナーの目の前をウォーキングし、フィッティングをした後でさえも、ふるい落とされるのは珍しくない。

今回のラウールの挑戦は、メゾン ミハラヤスヒロのショーのみという結果になったが、心が折れ、自信も失い、悔しい思いをたくさんしたというのに、自身は「次の道筋が見えた」と前向きさを失わない。

「ショーに出させていただいたメゾン ミハラヤスヒロには、素晴らしい経験をさせていただき、感謝しかありません。受かる直前まで選考が進んだブランドもいくつかあり、次からは自分なりに修正して挑めばいいという知見も得ました。

僕にとって今回のチャレンジは『自分の力で何かを摑みとった』ということが最も大事なことでした。アイドルなのにガチでモデルもやっちゃうの? という意外性だったり、アイドルの笑顔ではないモデルとしてのクールな表情をみせる二面性だったりが、自分の中のエンタメ性として重要なことだと思っていますから」

信念を貫いたものが伝統と呼ばれるものになる

ファッションの聖地でのモデル経験を経て、今号ではトラディショナルながらヒネリを加えたアイテムをエモーショナルにモダンに表現。現在21歳の彼が「トラディショナル」と聞いて頭の中に思い浮かぶイメージは、どういったものなのだろうか。

「重ねた年月が長いほどロマンを感じることはありますが、1年でも10年でも、貫かれた信念があるのなら、それはもう『トラディショナル』だと思います。ぶれない軸があって、そこに精神が通っているのであれば、その果てには『トラディショナル』と呼ばれる未来が待っている。僕も芸歴10年になりましたが、まだまだ頑張らなきゃですね」

2024年9月に開催されるウィメンズ・ファッションウィークでは、数少ないメンズ枠を狙い、再びパリを訪れ、オーディションに挑戦すると語ったラウール。アイドルながら自己研鑽を怠らず、自身の未来の姿に向かって進む若き求道者の姿が眩しく、新しきクラシックな服と相まって、輝いて見える。

Raul
2003年東京都生まれ。幼少期からダンスを習いはじめ、11歳でエンタメの世界へ。2019年にSnow Manに加入し、センターに抜擢される。2024年公開の映画『赤羽骨子のボディガード』では主演を務め、俳優としても活躍。10月30日にはSnow Manの4枚目のアルバム『RAYS』が発売。

【特集 大人服2024】

この記事はGOETHE 2024年11月号「特集:トレンドを超越した、古くて新しい大人服」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=畠山里子

PHOTOGRAPH=HIRO KIMURA(W)

STYLING=横田勝広

HAIR&MAKE-UP=小田切ヒロ(Nous)

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