日常に刺激を与え、新たな考え方やアイデアを生みだすきっかけにもなる器。器を愛する3人のコレクション紹介記事をまとめてお届け! ※2024年3月掲載記事を再編。
1.伊勢谷友介、こだわりの器コレクションを公開!
高台にスタッズをあしらった萩焼(はぎやき)の器に、天然木をくりぬいたマグカップ、シャープなステンレスのタンブラー、職人の素朴な手仕事が息づくプレート。俳優の伊勢谷友介氏が日頃から愛用するテーブルウェアはそれぞれ、つくり手はもちろん、素材や製法、醸しだす雰囲気すらも異なる。
「家にはたくさんの器がありますが、統一感はゼロ(笑)。特定のブランドやシリーズで揃えることもないですし、食器をセットで買うこともほとんどありません。その時々に自分がひと目惚れしたものを買うことが多いので、結果的に“無ジャンル”になってしまうんです」
自身がリノベーションに携わった自宅も、古材やタイル、コンクリートなど多様な素材を用い、流木のオブジェにフォークロアなファブリックなど、異なるベクトルのアイテムを配しながら、不思議とすべてが調和する“伊勢谷ワールド”に仕立て上げられている。その空間に、これらの器がしっくりなじむと言う。
「器やインテリアに限らず、みんながいいと思うものや流行りのものには興味が湧かない。この縦に模様が入ったプレートにしても、縁が歪んでいてペイントも均一ではないから、人によっては不格好に見えるかもしれません。でも僕はだからこそ、つくり手の手間や人の想いを感じるし、そこに惹かれます」
2.天才シェフ・脇屋友詞が愛用する、“料理が変わる!”器コレクション公開
「白菜を横から切ると、断面が牡丹の花みたいに見えるでしょ。それをトロトロに蒸して、この器に盛りつけたら素敵だなと思ったら買わずにはいられなくて」。そう言いながら白磁に青で絵付けを施した深鉢を愛おしそうに眺めるのは、料理×器をテーマにした共著を出すほど器好きな脇屋友詞氏。
15歳で中国料理の道に入った脇屋氏は、大盆・中盆・小盆で供されるのが当たり前だった時代に、さまざまなメニューを少しずつ味わえる1人用のコースを考案。和洋の器も活用しながら華やかにサーブされる美味はヌーベルシノワとして話題になり、中国料理の新定番に。
「ホテルの中国料理店で働いていた時、隣にフレンチの厨房があって、よく覗いていました。調理法や食材の違いにも驚きましたが、一番刺激を受けたのは器と盛りつけ方。あんな風に提供したら、お客様はもっと喜んでくださるんじゃないかとアイデアを温めていたんですよ」
30代で自分の店を持つようになってから“器愛”はさらに加速。25年ほど前からは中国の古い器に惹かれるようになり、日本はもちろん中国や台湾の骨董店にも足をのばした。異なる時代背景を持つ器に、現代を生きる自分がどんな料理を合わせれば、互いの魅力を引きだせるか。古の器が、料理人としての挑戦心を掻き立てたのだろう。
3.味の素・藤江太郎社長、料理を引き立てる器コレクション公開
調味料を筆頭に食品やヘルスケア商品などをグローバルに展開し、世界で3万4000人以上もの従業員を抱える味の素。2022年にそのトップに就任した藤江太郎氏が、多忙な日々のリフレッシュ法のひとつとしてあげるのが料理だ。
「就任直後から月に1回、なじみの鮨店『銀座 藤田』で開かれる少人数制で人気の料理教室に通っています。アジを三枚に下ろして南蛮漬けにしたり、塩辛をつくったりと酒の肴が多いですね。それをつまみにみんなで一杯やるのがまた楽しくて。妻には、『飲みに行っているようなものね』と言われます(笑)」
料理とともに大将から教わったのが、器使いの奥深さ。
「同じ料理でも、器が変われば盛りつけ方が変わり、料理そのものの見え方も変わります。習った料理はたいてい自宅で復習するのですが、ちょっと失敗して見栄えが悪くなったものでも、器がいいと、不思議とおいしく見えますからね。これまでも器は好きで自分でも購入していましたが、大将のおかげで器の奥深さを改めて認識しました」