美しいデザイン、ぬくもりのある佇まい。お気に入りの器で食卓を彩ることは日常に刺激を与え、新たな考え方やアイデアを生みだすきっかけにもなるかもしれない。今回は、俳優の伊勢谷友介氏が日々愛(め)で、使い続けるこだわりのコレクションを紹介。【特集 おいしい器】
「器を選ぶ決め手は直感。統一感にはこだわらない」
高台にスタッズをあしらった萩焼(はぎやき)の器に、天然木をくりぬいたマグカップ、シャープなステンレスのタンブラー、職人の素朴な手仕事が息づくプレート。俳優の伊勢谷友介氏が日頃から愛用するテーブルウェアはそれぞれ、つくり手はもちろん、素材や製法、醸しだす雰囲気すらも異なる。
「家にはたくさんの器がありますが、統一感はゼロ(笑)。特定のブランドやシリーズで揃えることもないですし、食器をセットで買うこともほとんどありません。その時々に自分がひと目惚れしたものを買うことが多いので、結果的に“無ジャンル”になってしまうんです」
自身がリノベーションに携わった自宅も、古材やタイル、コンクリートなど多様な素材を用い、流木のオブジェにフォークロアなファブリックなど、異なるベクトルのアイテムを配しながら、不思議とすべてが調和する“伊勢谷ワールド”に仕立て上げられている。その空間に、これらの器がしっくりなじむと言う。
「器やインテリアに限らず、みんながいいと思うものや流行りのものには興味が湧かない。この縦に模様が入ったプレートにしても、縁が歪んでいてペイントも均一ではないから、人によっては不格好に見えるかもしれません。でも僕はだからこそ、つくり手の手間や人の想いを感じるし、そこに惹かれます」
もうひとつ、伊勢谷氏が器選びでこだわるポイントは、食洗器に入れても大丈夫なこと。
「器自体はとても好きなのですが、食器を洗ったりする時間は極力減らして、趣味や仕事にも時間を費やしたい。だからここにあるのは、食洗器に耐えてきたタフなやつらばかりです」
独自の美意識と合理性に基づいた器選び。そうしたアイテムしか使わないのかと思いきや、そんなこともないと話す。
「人からいただいたものなどもそれなりにありますよ。使えるものを捨てたりはしません。割れたりしない限り、ガシガシ使い続けます」
大量生産、大量消費、大量廃棄、という負の循環に陥っている現代に一石を投じるべく、2008年に“リバースプロジェクト”を発足させ、社会活動にも打ちこんできた伊勢谷氏。2020年の逮捕によってプロジェクトからは退いたものの、その想いは今なお消えていない。また、2024年の3月公開の映画に出演し、俳優復帰も果たす。
新生・伊勢谷友介の今後の活動から目が離せない。
伊勢谷友介氏こだわりの器コレクション
白いお碗と黒のカップは、萩焼の窯元である大屋窯の濱中史朗氏のスタッズシリーズ。「白と黒の夫婦茶碗なんですが、僕はスープを入れることが多いですね」。ネプチューン・原田泰造氏からの誕生日プレゼントだというステンレス製タンブラーは、朝のジュース用に。手触りが気に入っているという木製マグカップはコーヒーを入れる。オーバル皿は「大好きなメーカーのソーセージを2 本載せるのにぴったり。小皿にはマスタードなどを入れています」
伊勢谷友介/Yusuke Iseya
1976年東京都生まれ。俳優や監督、実業家として幅広く活躍。2024年1月、半生を綴った書籍『自刻像』(文藝春秋)を発売。2024年3月には出演映画『ペナルティループ』が公開予定。
伊勢谷友介氏着用:ニット¥23,500(デラックス TEL:03-6805-1661)、イヤリングは本人私物
この記事はGOETHE 2024年3月号「特集:おいしい器」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら