2023年は海外活動をはじめとして、さまざまな活動を精力的にこなしてきたYUさん。2024年はよりYUさんの脳内を巡るあれこれを引きだすべく、連載「大川放送局」をインタビュー形式にしてお届け。第9回は最近の音楽活動の話や、30代も半ばに突入して変化した音楽に対しての思いなどに迫る。連載「大川放送局」とは
Snow Manへの楽曲提供は自信につながった
I Don't Like Mondays.が楽曲提供したSnow Manの「LOVE TRIGGER」が、発売後わずか2日で103万枚を売り上げ、ミリオンを達成したことが一躍話題となった。発売後初週でのミリオン突破となったことはSnow Manとしても、楽曲提供という形で携わったI Don't Like Mondays.としても初の快挙だという。楽曲提供に至るまでの秘話や楽曲制作のエピソードなどについてYUはこう語る。
―Snow Manといえば、メンバーの岩本照さんがラジオなどでI Don't Like Mondays.の楽曲を紹介されたりしているのが印象的ですが、今回の楽曲提供のきっかけは岩本さんだったのでしょうか。
「直接すごく親交があったわけではないんですけど、岩本君が僕たちの曲を聴いてくれているっていうのは知っていて、数年前に渋谷のO-WESTでライブをやった時にもプライベートで来てくれていたらしくて。だからこそ、いつかSnow Manとコラボできたらいいなって思っていたところで、去年の夏頃に、岩本君が主演を務めるドラマ(『恋する警護24時』/テレビ朝日系)の主題歌の話をいただいたのがきっかけで、念願叶って楽曲を提供させていただきました」
―楽曲はどのように制作されたのでしょうか。
「ドラマのタイアップ曲ということでまずドラマの脚本を読み込んで、それからドラマの中でどのタイミングで流れるのか、どんな曲調が求められているのかなど、細かい部分まで含めて確認した上で、バンドメンバー4人で集まって話し合いながら一から作りました」
―具体的にはどんな風に?
「いただいた企画書のなかに、参考楽曲の一つとして僕たちのバンドの曲『美しき世界』が入っていて。この曲は疾走感のある曲なんですが、曲調が良かったのか、コード進行が良かったのかなど、なんでこの曲が入っているんだろうっていうのを他の候補の楽曲はもちろん、かなり論理的に分析しましたね」
―自分たちの楽曲を作る時とは違って、何か意識されたことはありますか?
「Snow Manの新たな一面を引きだすべく、メンバー9人それぞれの良さをどうしたら活かせるかっていうところを意識して、これまでのSnow Manの楽曲やMVをチェックして、誰がどこまで高い音が出せるのかなどを分析しました。それから、バンドだったら僕しかボーカルはいないけど、Snow Manは9人みんなが歌うから、ブレス(息継ぎ)のタイミングをそこまで考えずに曲を作ってみたり、普段とは違うアプローチもしました」
―2曲作られたそうですね。
「ほぼ絶対こっちだろっていう1曲と、おさえでもう1曲作りました。普通は結構ラフで作ってコンペに出す方も多いのですが、今回絶対に決めたくて。Snow Manのメンバーも実際に音源を聴いたみたいで、岩本くんも1つだけ完成度がやばいやつがきたからびっくりしたらしいです (笑)」
―楽曲提供という形で一緒に仕事をしていくなかで、岩本さんの印象は変化しましたか?
「ビジュアルも含めて、実際に話してみて岩本君自体が“芸能人”という気取った感じがなく無骨なところが素敵だなって思いました。あと、岩本君がいることでグループ全体が締まって見える気がして、彼の存在はグループの中で非常に大きいなと思います」
―過去には、TVアニメ『ONEPIECE』の主題歌タイアップやKis-My-Ft2北山宏光さんのソロ作品(『DON'T WANNA DIE』)にも楽曲提供をされていましたが、いわゆるプロデュース的な仕事は向いていると思いますか?
「今までの方がそういうのは得意だった気がします。でも、求められていることを瞬時に理解して、応えられちゃうからこその葛藤みたいなものがあって。ある時から“これ欲しいでしょ”って、ただそれに応えるだけになっているような気がして僕たちってなんなんだろうって結構悩んだ時期があったんですよ。
これだとクリエイターである意味があるのかな、みたいな。本来僕がならなきゃいけないのは、例えばYUだから、アイドラだからとかなんでもいいんですけど、 “こういう曲が欲しいからアイドラに頼もう”みたいな、僕ら自身の魅力で評価されないとだめだなって思い始めて」
楽曲提供をしたことで自分たちの可能性も広がった
―楽曲提供をしたことで自分たちの曲作りに活かせた部分はありますか?
「自分たちのトラックリストでは出せなかったところまで挑戦してみることができたし、スキルアップにも繋がって、バンドとして可能性が広がったと思う。今までは結構色んな音のレイヤーを重ねたりしてきたんですけど、生音の方が時代の流行り廃りに左右されないって気づいて。シンセサイザーが結構入っているような曲だと、良くも悪くもその時代に左右されてしまうような気がするんですよ。今年の僕らのトレンドは生音になるんじゃないかな」
―30代半ばに突入して、音楽に対しての想いが変化したのだとか。
「バンドとしては今年ちょうどデビュー10周年なんですけど、やっと“バンドが楽しい”って思えるようになったんですよ。音楽に対してなんというか、大人がゴルフにハマるのと似たような感覚で、伝わるかな(笑) 。大人って30代超えるときっと何かに情熱を注ぎたくなるんじゃないかって感じて、それが僕にとっては音楽なんですけど。情熱を注いで頑張ったことを通じて、目に見える形で達成感を味わいたいなって」
―バンドが楽しいっていいですね。
「あと、最近やっと肩の力が抜けた気がして。いい意味で他人はどうでもいいやって思うようになってきたというか。周りの評価だけではなく、自分が満足できるものこそが正解なんじゃないかと感じて。今までだったらものすごく曲ごとの設定を考えたり、“売れる”とかいわゆる“トレンド”を考えすぎてしまってラフにやりたくてもできなかったんですよ。でも、Snow Manへの楽曲提供もそうですけど、色々なことを経て“俺たちはできるんだぞ”ってある意味自信がついたから、これからはあまり力まずにやっていきたい」
―確かに力んでないアーティストの方が長く聴かれているような気もします。
「色気って音に伝わるなと思っていて。例えば、The 1975というバンドが好きなんですけど、彼らのバンドって抜け感と色気を纏っていてそれが曲にも表れているんですよ。だから僕たちも抜け感のあるようなサウンドトラックを作るためにも、意識してちょっと肩の力を抜くっていうのはもしかしたら次の新たな境地なのかもしれないなって」
―では次の新曲「New York, New York」は、バンドとして新たな一面が見られる楽曲になっているのでしょうか。
「自信がついた分力まずに作れたし、改めて僕たちはライブバンドだなって見つめ直すことができました。ライブをやっていく中で、もっとここにこういう曲があったらいいなって思うことがあって、そういう意味では今回の新曲はライブの中でかなり軸になる1曲になっていると思います」
新しくもどこか懐かしさを感じさせるようなUKロックサウンドをベースにした新曲は、YUさんがニューヨークを訪れた際にインスピレーションを受けて制作したという。いち早く新曲を聴かせてもらったが、次の時代を作っていくという自信と気概を感じた。
さらにSnow Manとコラボしたことで、これまでのバンド活動を超えた新境地が見えたと語ったYUさん。今後はどんな化学反応を見せてくれるのか、デビュー10周年を迎えた今、ますます進化していくI Don't Like Mondays.から目が離せない。
■連載「大川放送局」とは
80'sサウンドをルーツに持ちながら、邦楽と洋楽の垣根を超えていく4人組ロックバンドI Don't Like Mondays.のボーカルYUの連載「大川放送局」。ステージ上では大人の色気を漂わせ、音楽で人の心を掴んでいく姿を見せる一方で、ひとたびステージを降りた彼の頭の中はまるで壮大な宇宙のようだ。そんな彼の脳内を巡るあれこれを、ラジオのようにゆるりとお届け。