数多ある音楽、本、映画、漫画。選ぶのが難しいからこそ、カルチャーの目利きに最上級の1作品を厳選して語ってもらった。今回紹介するのは、マンガ大好き芸人の吉川きっちょむ。【特集 最上級主義2024】
「マンガ漬け人生を決めた運命的&衝撃的な出会いの1冊」
「現在、月に約700作品を追うほどの漫画好きになるきっかけにもなった、まさに人生を変えた作品です。中学生の時に友人宅にあった単行本を読んだのが最初の出合いですが、少年漫画とは異なるリアルさやグロ描写に加えて、命の重みといったテーマ性が全10巻という短いなかに濃密に描かれていて、当時は頭をぶん殴られたような衝撃がありました。
特に印象的だったのは、人間社会に溶けこむために人間を理解しようと研究した結果、わずかに人の考えや愛などの感情についての理解が進んだ異例の個体・田村玲子が放ったひと言。生態系の新たな捕食者の頂点として人間を脅かす存在と思われていた寄生生物が、実は人間がいないと存在すら保てないか弱い生物なのだと、認識が逆転する切ない名場面です。
作品のテーマのひとつが“人間とはいったい何なのか、生きるとはどういうことなのか”ということだと思っていますが、寄生生物=異質の存在を外側から人間と対比させることで、人間性や愛、生きる意味が浮き上がってくるこの漫画きっての名シーンが本当に大好きです。
15歳まで海外で育った帰国子女で、外国でも日本でも異質な存在であると感じることが多かった自分自身に重ねてみても共感できる部分がすごくあり、それも『寄生獣』を好きな理由のひとつ。この作品には心の奥の奥までの感情を教えてもらったような感じさえあります」
この記事はGOETHE 2024年2月号「総力特集:最上級主義 2024」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら ▶︎▶︎特集のみ購入(¥499)はこちら