数多ある音楽、本、映画、漫画。選ぶのが難しいからこそ、カルチャーの目利きに最上級の1作品を厳選して語ってもらった。今回紹介するのは、フリーアナウンサー/俳優の宇垣美里。【特集 最上級主義2024】
「常に新しい角度で刺さる人類“愛”の教科書的作品です」
「大学生の頃に出合って以来、幾度となく読み返している作品。25年以上前のものなのに絵柄は古臭さをまったく感じさせず、普遍的な恋愛模様が理論立てて紡がれる様は、むしろ最先端かのよう。恋愛状態にある人が不可解な行動をする時の心情が的確に表現されていて、真理をズバリ突いているのがいいんです。
繊細な人物描写と心情の言語化はただただ美しく、あまりにもザクザクと読み手の思考回路を分解するのも怖いほど。恋愛のみならず、誰かと人生を歩むうえでの適解も描かれているので、何度読んでも新しい角度で刺さる。
私自身も学生の頃とは異なる部分に共鳴したりと、己の成長具合によって受け止め方が変化していて、今の自分のどこに響くのかを確認するために読み返しているフシもあります。
この作品のなかで最も好きなのが“恋愛はあらゆる抵抗に打ち勝つ相思相愛の力。友情は相思相愛でありながら、抵抗によって達成できない疑似恋愛関係”という一節。そもそも友情には異性であれ同性であれ、うっすらとした恋愛的感情が含まれるもの。
もしも“異性間の友情は成り立つか否か”とニヤニヤと問うてくる人がいたら、自分は脱兎のごとく逃げます。その人は異性間の友情が存在しないとみなしているか、訝いぶかしんでいるということですから。『恋愛的瞬間』読みました? と心のなかでドン引きしながら、きっと一目散に去るでしょうね(笑)」
この記事はGOETHE 2024年2月号「総力特集:最上級主義 2024」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら ▶︎▶︎特集のみ購入(¥499)はこちら