PERSON

2023.09.25

“お笑い第七世代”育ての親が語る「Z世代との付き合い方・伸ばし方」の3つのツボ

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位の桝本壮志のコラム。

世代間の軋轢の解消は「リーダーの必須課題」

若者とうまく付き合えていますか?

話が合わないから、協調性がないから、生意気だから……。うまくいかない理由は山ほどあり、うまく付き合わないといけない理由はさほどない。これがリーダー世代の本音だし、多くのメディアが「Z世代」という言葉とともに、彼らをモンスター扱いしている要因でしょう。

しかし、昔から若者は、「新人類」「バブル世代」「さとり世代」「ゆとり世代」などと、先行世代からモンスター扱いされてきた。そう、世代間の軋轢は“バトンリレー”であり“人類の宿題”。いつの時代もリーダーたちが向き合ってきた必須課題といえるのです。

そこで今週は、これまで約1万人の生徒と付き合い、自分で言うのは恥ずかしいですが、10年以上、人気投票1位講師である私が、Z世代と付き合うツボを押していきたいと思います。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。

1. 若手を見抜く前に、まず自分が「見抜かれる」

「若手の才能を見抜くコツは?」

取材でよくそんな質問をされます。

この問いには、「人を見抜くために必要なのは、まず自分が見抜かれる力です」と答えています。

多くのリーダーは、自分の目利きを信じ、「俺が見抜いてやる」「登用してやる」と意気込み、若手を厳しく指導し、試練を与えます。

しかし、そういった師弟関係は、「この人のために頑張りたい」という心が、お互い発動している者同士ではじめて成り立つもの。“一方的”だと、たどり着く場所は“一方通行の行き止まり”です。

さらに、かつては部下をビシビシ鍛える“教官タイプ”のリーダーが求められていましたが、現代は気軽に対話できる“共感タイプ”が主流。

リーダーは、彼らの能力が最も発揮されやすいリラックスできる空間づくりに心を砕き、「あ、この人にならついて行きたいな」と思わせること、言うなれば“まず自分が見抜かれる力”を持つことが必要なのです。

2. 見せるべき背中は「こんな大人でもいいんだ」

Z世代に授業をしていると、彼らが目を輝かせたり、メモをとったりするタイミングの共通点に気づきます。

彼らは、成功話や自慢話には、ほとんど興味を示さず、失敗談や離婚話には前のめり。まず恥部をさらして、そこから学んだ教訓を伝えると、いっせいにペンが動くのです。

そういった日々から得たのは、若い人たちの前では、ふんぞり返って自分を大きく見せるのではなく、「いろいろ失敗もしたけど、その先の人生も楽しいよ」「生きてみる価値あるよ」と、彼らの未来を励ますこと。

“こんな大人になりたい”と思わせるより、“こんな大人がいてもいいんだ”と安心させるほうが有益ですし、関係も円滑になるのです。

3. あなたにも知ってほしい。「Z世代を励ます理由」

毎年、入学してきた生徒に僕はこう伝えます。

「日本は少子高齢化だから君たちは少数派。肩身が狭く、もどかしく感じるだろうが、世界人口の3分の1はZ世代。君たちは多数派だから希望を持っていこう」と。

どの世代も「モンスター扱い」されてきた日本の若者の中でも、Z世代は最も成員が少ない。しかも経済力が弱体化した国のマイノリティ。そんな世代と(まだマシだった)自分の世代を、同じものさしで測るのは妥当ではありません。

さらに、明治維新にしろ、フランス革命にしろ、中心になったのは無名の若者たち。もしも、あなたがこの国の未来を憂うひとりならば、大切なのは、後続世代を遠ざけたり、心をくじいたりすることではなく、励ますことではないでしょうか。

なので僕は、「たとえ日本人と意見やプランが合わなくても、全世界の3人にひとりは同世代。SNSを使って気の合う仲間と“おもしろそう”“やってみよう”を共有すればいいよ」と励ましています。

さあ、あなたなりの言葉で一緒にZ世代を励ましましょう。私たちの経験や知見は、若い人たちの滑走路にもなれるのですから。

それでは、また来週お会いしましょう。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

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