PERSON

2023.08.14

なぜ、堀江貴文は“コスパ”も“タイパ”もよくない北海道の宇宙事業を支援し続けるのか?

国内外の観光客のみならず、ビジネスパーソンも熱視線を送るのが、今の北海道だ。今回は宇宙事業の新しいカタチに迫るべく、堀江貴文氏に話を聞いた。【特集 北海道LOVE!】

北海道スペースポート
「ZERO」のエンジン用燃焼試験棟が2023年に完成したばかりの大樹町の宇宙港「北海道スペースポート」内、「Launch Complex-0(LC-0)」。LC-0は観測ロケット「MOMO」発射場兼エンジン燃焼試験場。写真は「MOMO」打上げ空撮写真。

宇宙事業の拠点となる大樹町の移住者を増やす

日本国内でロケットを発射できる場所は、限られている。

「ワーストケースに備えて、かなり広い警戒区域をとらなければならないんです。ロケットは真上ではなく、海の方向に向けて少し斜めに打ち上げるんですが、発射場と海の間の陸地に人が住んでいてはいけないし、道路があってもダメ。さらに船や飛行機の路線があってもいけないなど、相当条件が厳しい。打上げ実験ができる場所を、日本中探しまくっていました」

堀江貴文さんがファウンダーであるロケットの開発・製造を行う宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズが出合ったのが太平洋に面する十勝南部の町、大樹町(たいきちょう)だった。

「酪農と漁業、農業の町で、1980年代から航空宇宙に関する誘致を行っていました。2021年に民間も使える開かれた“宇宙港”となる北海道スペースポートが稼働し、宇宙関連では注目を集めています」

ネジのロケット
「ねじのロケット(MOMO7号機)」打上げ写真。
超小型サイズの人工衛星
小型人工衛星打上げロケット「ZERO」のイメージ画像。世界的に需要が大きく伸びている超小型サイズの人工衛星を宇宙空間(地球周回軌道上)に運ぶための小型ロケット(長さ25m、直径1.7m、総重量33t)

東京23区の約1.3倍の816㎢の面積で、人口はわずか5400人。ロケット打上げには、最適な環境ともいえるが、「北海道の地方にありがちな、広々とした田舎町(笑)」。宇宙関連の研究者が集まりつつあるが、問題がないわけではない。

「宇宙産業の発展を見越して、コンビニとかドラッグストアは充実しているんです。でも、とにかく出会いがない。インターステラテクノロジズの場合、大樹町に80人くらいいるんですが、ほとんど彼女がいない理系男子。これ、笑い事じゃないんですよ。生活には困らなくても、遊ぶ場所、集まれるような場所がないと、若い人が定着しない。町内の酪農をやっている人でも年収数千万円あるのに独身という人が多い。仕事のモチベーションにもかかわってきますから、深刻な問題なんです」

そんな大樹町に2020年にオープンしたのが、エンタメパン屋「小麦の奴隷(どれい)」。HIU(堀江貴文イノベーション大学校)のコミュニティから誕生したこの店は、看板メニューである「ザックザクカレーパン」が全国のカレーパングランプリで金賞を受賞して話題で、町外からも人が押し寄せる人気スポットに。

「今、町の小さなパン屋がコンビニとか大手チェーンに押されてどんどん廃業しているんですよ。でも焼き立てパンの需要はあるはずだし、過疎地でも訪問販売とかすれば成功するんじゃないかと。そこで大樹町で始めて、成功したら全国に広げてみようと思ったんです」

少しずつだけど町が変わってきている

大樹町に本社を置く「小麦の奴隷」は、その後全国にフランチャイズ展開。2年間で100店舗を超える広がりとなった。さらに堀江さんは町内にレストラン「蝦夷マルシェ」やラーメン店「堀江家」をプロデュース。

「少しずつですけど、町が変わってきているという感覚はあります。町も協力的ですし、いい流れになっているんじゃないかと思っています」

もちろん一番の目標は、宇宙分野で大きな成果を収めること。

「いつまでに何をやるみたいな目標は設定していない。とにかく“なるはや”で。目標を設定してもだいたい1年、2年遅れるんですよ。だからスケジュールは決めないんです」

ライブドア時代の約20年前からロケット開発に取り組んできた堀江さん。“コスパ”も“タイパ”もいいと思えないこの事業を支援し続ける理由についてこう答える。

「社会問題を解決しながら、面白いことができるから。他の人がやれることだったら、その人たちにやってもらえばいい。自分にしかできないからやっているんです」

インターステラテクノロジズの本社
堀江さんが1ヵ月に一度は訪れる、インターステラテクノロジズの本社工場。

Recommended Restaurant in Hokkaido 8選

十勝|ELEZO ESPRIT
「灯台の建設予定地近くの素晴らしいロケーション。この夏、行くのが楽しみです」

住所:北海道中川郡豊頃町大津127
TEL:070-1580-1010

帯広|北の屋台
「帯広に行くならここを訪ねてみてほしい。店がいっぱいあって、どこも美味しいです」

住所:北海道帯広市西1条南10-7
TEL:0155-23-8194

帯広|六花亭 帯広本店
「北海道民がみんな大好きな六花亭(笑)。僕は帯広本店限定のサクサクパイが好きです」

住所:北海道帯広市西2条南9-6
TEL:0155-24-6666

余市|余市SAGRA
「イタリアンが美味しいオーベルジュ。地元産の食材やワイン、自家製の発酵食品が美味」

住所:北海道余市郡余市町登町987番地2
TEL:0135-22-2800

すすきの|豊寿司
「すすきのにある“町の寿司屋”。北海道の海産物を楽しめる名店で、最近よく行っています」

住所:北海道札幌市中央区南5条西4丁目西向き
TEL:011-531-7441

すすきの|まる鮨
「手土産にお薦めなのがここのいなり寿司。味はもちろんパッケージにもこだわってる」

住所:北海道札幌市中央区南6条西4丁目西向き 
TEL:011-552-6266

旭川|馬場ホルモン
「2種類のホルモンと玉ねぎだけ。めっちゃくちゃ安いけど、めっちゃくちゃ美味しい」

住所:北海道旭川市七条通8丁目右4
TEL:0166-23-0947

旭川|生姜ラーメン みづの
「旭川ラーメンの隠れた名店。スープの底に生姜が埋まっていて、途中で混ぜて味変! 」

住所:北海道旭川市常盤通2丁目
TEL:0166-22-5637

堀江貴文氏
堀江貴文/Takafumi Horie
実業家
1972年福岡県生まれ。2013年に北海道大樹町で宇宙の総合インフラ会社、インターステラテクノロジズを創業。その子会社Our Starsでは情報通信事業や地球観測事業の展開を目指す。「衛星通信3.0を実現したい」

【特集 北海道LOVE!】

この記事はGOETHE2023年9月号「総力特集:北海道LOVE!」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら

TEXT=川上康介

PHOTOGRAPH=インターステラテクノロジズ、古谷利幸(人物)

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