堀江貴文さんがスポンサーになる形でロケット開発がスタート
2021年7月31日、インターステラテクノロジズはTENGAとの協同プロジェクトにより「MOMO6号機TENGAロケット」の打ち上げに成功。ロケットは高度約92㎞の宇宙空間に到達した。さらにTENGAロケットは、国内の民間企業初となる「宇宙空間への荷物放出と地球へ帰還後の海上での回収」というミッションも達成。機体内部からはライヴ配信も行った。
ここ数年、目覚ましい成果を出し続けるインターステラテクノロジズ。〝ホリエモンがロケットをつくっている会社〞と聞けばピンとくる人も多いだろう。’05年に堀江貴文さんがスポンサーになる形でロケット開発がスタート。代表の稲川貴大さんは、ホリエモンに口説かれて入社を決めたという経歴を持つ。
「大学でロケット開発のサークルを立ち上げるなど、宇宙をテーマに活動を行っていました。卒業後はニコンへの就職が決まっていましたが、堀江さんからロケット開発を一緒にやらないかと。ロケットの知識量に驚かされ、入社を決断しました」
入社後、開発を担当したのがMOMOと名づけられた観測用の小型ロケット。国のプロジェクトに比べてはるかに予算が少ないため、「世界一低価格で、便利なロケット」をコンセプトに掲げた。設計、製造、試験、打ち上げまですべての工程を自社で行うほか、ロケット製造には、ホームセンターで購入できる汎用品を使用。さまざまな工夫を盛りこみ、低価格を実現した。
「小型ロケットを国主導で製造すると、価格は2億5000万円から5億円程度。でも、インターステラなら一桁安い価格でつくることができます」
’17年のMOMO初号機に始まり、現在までに7機が打ち上げられた。稲川さんは、どんなビジネスプランを描いているのか。
「当社のロケットが目指しているのは"宇宙のバイク便"。4トントラックのような大型衛星などの運搬役も必要ですが、そのマーケットはアメリカが中心になって進めています。でも、小型衛星を運搬したいというニーズも高い。将来的には、宅配便としてあらゆる荷物を宇宙ステーションの軌道上に放出して、相手が回収できる置き配のようなサービスを実現させたいです」
多くの企業が、宇宙ビジネスに乗りだすなか、人工衛星をはじめ、さまざまな物資を宇宙空間へ輸送するサービスは需要が高まっているという。
「衛星を飛ばしたいけれど、乗せるロケットがないと悩んでいるベンチャー企業は少なくありません。また、現在は大型のロケットが主流で、人工衛星は、複数搭載して運ばれる相乗り型が基本です。小型ロケットで、お客様の要望に合わせた輸送サービスは需要が高いと思います」
ニーズを察知し開発を進める超小型衛星を運ぶロケット
観測用ロケットMOMOに加え、昨年から本格的に開発を進めているのが、超小型衛星打ち上げロケット「ZERO」だ。このロケットは超小型衛星の単独打ち上げを可能にし、「好きな時に好きな場所へ」届けられる。
さらに人工衛星開発子会社Our Starsも’21年1月に設立。超小型人工衛星とロケットの開発、両方を自社で行えるよう体制づくりを進めている。
「ロケットと人工衛星の両方を自社開発。これは日本で初の試みになります。ワンストップのため、双方の最適化を図ることで、製造コストも抑えられます」
ロケット輸送事業は、価格を抑えることで、人工衛星以外にもさまざまな物資を運んでみたいというニーズも増えると考える。
「宇宙輸送ビジネスは日本の基幹産業になるポテンシャルを秘めている」と、稲川さんは明るい未来を描いている。
『Interstellar Technologies(インターステラテクノロジズ)』HISTORY
2005年 前身である「なつのロケット団」結成。堀江貴文氏がメインスポンサーとなりロケット開発を始める
2013年 北海道大樹町にインターステラテクノロジズ設立。11月に日本初の純民間商業ロケット「ポッキー」の打ち上げに成功
2015年 経済産業省研究開発事業を受託
2019年 シリーズB ラウンドで総額12.2億円の資金調達を実施。MOMO3号機が日本の民間ロケットとして初めて宇宙空間に到達
※宇宙の最前線で活躍する仕事人の徹底取材を始め、生活に密着した宇宙への疑問や展望など、最新事情がよくわかる総力特集はゲーテ11月号にて!