放送作家を中心に活躍する傍ら、NSC(吉本総合芸能学院)の講師として10年連続で人気投票数1位を獲得している桝本壮志さん。今回のコラムのテーマは不安への対処法。桝本さんが不安=弱さという考えを否定する理由とは? 歳を重ねるなかで見つけた不安を楽しむ方法とは? 40代・フリーランスで、今も不安と向き合いつづける桝本さんならではの金言が満載の内容です。
不安は危機回避を促すチャンスでもある
「私、自己肯定感が低い女なんです」
ぼる塾の田辺さんとご飯していたら、ぽつりと言いました。
彼女の言葉に代表されるように、お笑い芸人も当然ながら「不安」を抱えて生きています。なんなら想像力が豊かなのでディープな悩みを生成しがちな人種でもあります。
田辺さんをはじめ、今では売れっ子になった人気芸人たちが、まだ何者でもなかった時代から膝を突き合わせてきた僕は、彼らの悩みを聴きながら「どうすれば不安を和らげられるか?」「どうやって不安と付き合うか?」に長年取り組んできました。今回はその思考法をシェアしてみます。
まず、「不安になっているときの自分」を“弱い人間”“悪い状態”だと思っていませんか? 僕に言わせれば、不安は決して“弱い・悪い”ではありません。修学旅行の前夜に眠れなかったり、結婚式の前にマリッジブルーになったり、うれしいことの前には必ず不安がやって来たりします。人類が「長寿」になっているのも「死」に対して不安を感じてきたからこそ、医療を進化させ、様々な健康法を編み出してきたからとも言えます。
そう、不安は「良いことの前ぶれ」だったり「危機回避を促すチャンス」とも考えられるのです。
なので僕は、不安を抱えている生徒に「不安になる人は弱い人やないよ。これから起こることをじっくり考えることができる、リスク回避の能力者なんやで」と伝えています。
大人になると「いつかの不安の2周目」を楽しめる
今、不安に直面している若い世代の皆さん、彼らに助言するリーダーポジションの方々は、こんな考え方もおススメです。
そもそも若者の最大の特徴は「不安」です。みんな平静をよそおって街を歩いていますが、みんな不安を抱えています。
そして、生きてりゃ街中でファミマに出くわす頻度で不安はやって来ます。でも、月曜の6日後に必ず日曜がやって来るように「望み」も必ずやって来ます。悪目立ちしがちな不安ばかりに目を向けず「交互に望みもやって来る」を前提にして、そのリズムを愛でてゆくことが大切だと思っています。
若いころの僕も、不安が服を着て歩いているような人間でした。手相占いで有名な島田秀平くんに「感情線が2倍」と言われた僕は、事あるごとに悩み、脳内のデスクトップにペタペタと「気がかり」を貼り付けていました。
ですが、歳を重ねていくごとにゆっくり分かってきたんです。10代・20代は色んな“自分の弱点”がめくられて不安の連続でしたが、35歳をこえると、トランプの神経衰弱みたいなもんで、ぼちぼち生きていけば、カードが合うように「そんなことか」「何でそんなことで悩んでたんやろ?」「ま、えっか」と、感情がペアになっていきます。ポンと膝を打つ。子供のころ、お母さんに「お行儀よく食べなさい」と言われた「問い」が、何年かたって、大好きな人とご飯を食べるときに役に立つ、自分を助ける「解」になります。そんな“いつかの不安の2周目”が楽しめる未来があったりするんです。
不安はOK。「不安とセットの不機嫌」には注意
もちろん、歳をとってからも不安は尽きることはありません。僕は40代ですが、健康面、フリーランスだし仕事も心配、まだ独身なので生活面の不安もあります。しかし「人は不安になるからこそ生きている」とも思っているので、前述したようにポジティブに向き合っています。
ですが「不安とセットでやってくる不機嫌」には注意します。人は不安になると不機嫌になりがちです。不機嫌は周りの人に伝播し、物事を好転させません。そして色んな売れっ子や一流経営者と会ってきて分かったことは「うまくいっている人はみんな機嫌がいい」という法則です。なので不機嫌にはならないようにしています。
では今回はこのへんで。あえて、このコラムが何人に読んでもらえるんだろう? という不安を抱えながらPCを閉じます。