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2022.09.06

東野幸治、元オウム上祐、死刑囚の息子に迫る! TVからYouTubeへ転身した奇才・三谷三四郎とは

クリーマ代表取締役社長・丸林耕太郎氏がハマるYouTubeが「街録ch〜あなたの人生、教えて下さい〜」だ。理由は「映し出される多様な人やカルチャーから、人間のリアルを学ぶことができるから」だと言う。経営者の心を掴むその魅力とは? チャンネルを運営する三谷三四郎氏に直接話を聞いた。【特集 仕事に効くYouTube】

三谷三四郎氏全身

フリーランスのディレクターとして活動する三谷三四郎氏。AD時代に担当していた『笑っていいとも! 』にて、テレフォンショッキングコーナーの生放送中に携帯を鳴らしてしまい、珍事件として話題になる。

社会も会社経営も根幹は人。そのリアルをここで学べ!

街録ch〜あなたの人生、教えて下さい〜(チャンネル登録者数:85.2万人)

「妻がホスト狂いで1700万円の借金地獄」「薬物依存から抜け出す為芸人目指すも再び薬物…」「ハワイ薬物密輸で一撃3億が、FBIに逮捕」など、衝撃的なコピーが並ぶサムネイル……。

街ゆく人にインタビューをする街頭録音インタビュー、通称「街録(がいろく)」。元テレビディレクターで、現在はフリーランスのディレクターである三谷三四郎氏が2020年に始めた「街録ch〜あなたの人生、教えて下さい〜」は、有名無名を問わず500人以上もの人生をインタビューしてきたチャンネルだ。

芸人・東野幸治氏や元オウム真理教の上祐史浩氏、自分の尿を飲むカルト教祖、はたまた某死刑囚の息子など、その取材相手の振れ幅はすさまじい。今、三谷氏のもとには、自分もインタビューしてほしいとの応募が絶えないという。

街録chサムネイル

ショッキングな文字が並ぶ動画サムネイル。「より多くの人に見てもらうため、サムネでは敢えて強い言葉でインパクトを出すようにしています。ぱっと見の印象はエグくてもテロップの文言や動画構成などは、取材相手への愛を感じさせるものにしているつもりです」。

「テレビ時代、一番楽しい仕事が街録だったんです。だから、YouTubeでもやってみようと。でも、始めたばかりの頃は『インタビューいいですか』って言っても誰も足を止めてくれなかったので、路上パフォーマーとか、暇そうにしている人にひたすら声をかけて話を聞き、動画を作っていました」

7月某日、三谷氏は脳科学者の茂木健一郎氏を取材。向こうからやって来る茂木氏を見た三谷氏は、カメラを回し始める。

茂木さん取材シーン

雨の降るなか、アーケードの下で茂木氏にインタビュー。カメラを三谷氏が手で持ち、顔に寄って本人の表情を撮るスタイルも独特だ。「僕の動画は話の内容と相手の表情がすべて。絵的にもこのほうが印象に残ります」(三谷氏)

もともと「街録チャンネル」のファンだったという茂木氏。ベンチに腰かけ、終始和やかな様子でたっぷり1時間半、話し続けた。

「僕はこのチャンネルから感じる“グルーブ感”が好きなんですよね。ボブ・ディランの曲みたいに、風が吹いている感じというか。事前の打ち合わせなしにいきなり話し始めるのも、ライヴ感があっていい」(茂木氏)

相手が誰であれ、「へえ〜」と相槌を打ちながら淡々と話を聞く三谷氏。突っこみすぎず、でも離れすぎず。その絶妙な距離感が、相手の本音を引きだしていく。

「誰でも、自分の話を真摯に聞いてもらったらそれだけで嬉しいじゃないですか。だから僕がやることは、しっかり聞くだけです。打ち合わせも必要ない。話を聞きながら、気になったことは掘り下げる、本当にそれだけ。また、取材相手が著名人の場合でも、事前に相手のことを調べすぎないようにしています。内容が専門的すぎたり小難しい話になっていると感じたら、敢えてバカな質問を投げかけて話のレベルを落とすこともしますよ(笑)」

サムネの文言からVTRにいたるまで、すべて動画公開前に取材相手に確認を出す。例えYouTubeにアップした後だとしても、先方の希望があれば動画を削除することもあるという。

「こちらの都合のために、相手の嫌なことをわざわざすることは絶対にしません。サムネではエグい言葉を使っていても、動画を見てもらえれば、視聴者がその人を応援したくなるような内容になっていることがわかるはずです」

街録chサムネイル

取材を受けたい人は、「街録チャンネル」概要欄に掲載のメールアドレスから応募可能。三谷氏が直接出演オファーをすることもある。

もうひとつ大事にしているのが、取材したら必ず動画にするということだ。

「相手の貴重な時間を割いてもらったのだから、話が思ったより面白くなかったとか、作り手の匙(さじ)加減でインタビューをボツにはしません。昔テレビで一般の方に取材をさせてもらった時は、結局オールカットにすることもあって、それがすごく申し訳ないというか、嫌でした。僕のチャンネルでは、そういうことはしたくない」

「街録チャンネル」は日々、登録者数を伸ばし続けており、その勢いはとどまるところを知らない。なぜ、多くの視聴者に受け入れられているのだろうか?

「僕にとっては取材相手が一番偉くて、出てくれた人に喜んでもらうことを最優先にして動画を作っています。その人が喜んでくれれば、その周りの人たちもハッピーになって『街録チャンネル』に興味を持ってくれる。取材する人が増えるほどに、動画を見てくれる人が増えていけばいいなと思っています。でも、YouTubeの競争は厳しいですし、永遠に伸び続けることはない。いつかは“オワコン”になっていくかもしれません。でも好きで始めたことだし、それでも別にいい。更新頻度は下がったとしても、動画投稿は一生続けていきたいです。例えば僕が60歳になっても街録を続けて、10代の若者たちの人生を聞いたりするのって、すごく面白いと思うんです。それに人間の悩みは時代とともに変化していくから、一生ネタは尽きない(笑)。そういうものを見つけられた自分は、ラッキーだとも思います」

丸林耕太郎さん

【Recommender】
クリーマ代表取締役社長/クリエイティブディレクター
丸林耕太郎
1979年神奈川県生まれ。慶應義塾大学を卒業後、セプテーニホールディングスに入社。2009年に赤丸ホールディングス(現クリーマ)を創業し、ハンドメイドマーケットプレイス「Creema」などを運営している。

【特集 仕事に効くYouTube】

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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