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2023.07.27

阪神・大竹耕太郎、2023年大ブレイクの原点となる知られざる学生時代

現役ドラフトで移籍して今季大ブレイクの阪神・大竹耕太郎がスターとなる前夜に迫った。連載「スターたちの夜明け前」とは……

早稲田大学時代の大竹耕太郎
全日本大学野球選手権決勝、早稲田大学時代の大竹耕太郎

阪神の先発柱として活躍

2005年以来のリーグ優勝に向けて首位を走る阪神(2023年7月13日終了時点)。その好調なチームにあって、先発の柱として活躍しているのが2023年現役ドラフトでソフトバンクから加入した大竹耕太郎だ。

2023年4月8日のヤクルト戦で3年ぶりの一軍勝利をあげると、開幕から6連勝を記録。6月は援護に恵まれず勝ち星を伸ばすことはできなかったが、7月5日の広島戦ではプロ初完封もマークするなど、ここまで7勝1敗、防御率1.48と圧倒的な成績を残しているのだ。

現役ドラフトで移籍した選手では、細川成也(中日)と並んで、現時点では最高の成功例といえるだろう。

高い制球力と巧みな投球術

そんな大竹は熊本県立済々黌高校で1年秋からエースとなるなど早くから活躍。甲子園にも2年夏、3年春と2度出場し、いずれも1勝をマークしている。

初めてそのピッチングを見たのは2年夏に出場した甲子園の対鳴門戦だった。この試合で大竹は被安打4、四死球0、9奪三振で1失点完投と見事なピッチングを見せている。当時のプロフィールを見ると182cm、68㎏と細く、ストレートの最速も134キロと目立つ数字ではなかったが、それでも投手としてのセンスの良さは目を引いた。この試合を記録したノートにも以下のようなメモが残っている。

「テイクバックで左手を大きく下げ、左肩も下がるが、上半身に無駄な力みがなく、スムーズに肘が上がって楽に腕を振ることができ、リリースの感覚も良い。(中略)スピードは130キロ台前半でもコーナーいっぱいに投げることができ、左投手らしい角度もある。カーブ、スライダー、チェンジアップ、どれも凄いボールではないが、しっかり低めに集め、緩急の使い方が上手い。スピードが出てくれば面白い」

3年春に出場した選抜高校野球でも初戦で常総学院を相手に9安打を浴びながら四死球0で完封。この年のドラフト2位でプロ入りすることになる内田靖人(元楽天・現エイジェック)には2安打を許したものの、粘り強い投球は高校生離れしたものがあった。

そして大竹の才能がさらに大きく花開くことになったのは早稲田大学進学後だ。

1年秋には早くも先発に定着して4勝をマーク。2年春にはさらに成績を伸ばして4勝1敗、防御率0.89の成績でチームを優勝に導き、自身もベストナインを受賞したのだ。続く全日本大学野球選手権でも3試合に登板するフル回転の活躍でチームの日本一に大きく貢献した。準決勝の対上武大戦を記録したノートには、当時の大竹の投球についてこう記されている。

「ストレートは130キロ台後半でも相手を翻弄。ボールだけでなくフォームにも緩急、変化をつけて打者のタイミングを外す。(中略)大きいカーブを見事に操ってカウントをとり、ストレートを見せ球にしてブレーキのあるチェンジアップで打ち取るというのが必殺のパターン。フォームでは球種の見分けがつかず、コントロールも安定しているため、的を絞るのが難しい。初めての対戦で攻略するのは困難」

ちなみに大学時代も記載にある通り、ストレートは135キロくらいが多く、決してスピードがあったわけではない。それでもこれだけの結果を残すことができたのは、やはり高い制球力と巧みな投球術があったからだろう。

2023年の大ブレイク

しかし、その後の大竹の野球人生は決して順風満帆だったわけではない。

大学3年以降は故障に苦しみ、4年時には1勝もマークすることができなかった。何とかプロ入りを果たしたものの、ドラフトでの順位は育成4位と決して評価が高いものではなかった。プロ入り後も1年目から支配下登録されて3年目までに10勝をマークしたが、2021年以降は大きく成績を落とし、過去2年間は一軍で1勝もあげることができていない。豊富な選手層を誇るソフトバンクでは完全に埋もれている状態だったのだ。

ただそれでも二軍では常に安定した成績を残しており、レベルアップを図ってきたことが2023年の大ブレイクに繋がったことは間違いない。ストレートは以前と比べてもスピードが増し、また操る変化球の種類も増えている。

後半戦は相手チームから研究されることが予想されるが、そのなかでも持ち味の巧みな投球術と多彩な変化球を駆使して、チームの投手陣を牽引してくれることを期待したい。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

■連載「スターたちの夜明け前」とは……
どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。

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スターたちの夜明け前

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=望月仁/アフロ

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