TRAVEL

2026.06.07

芸術都市・サンタフェ、エグゼクティブがお忍びで訪れる高級リゾート…アメリカ南西部へ大人旅【後編】

前編に続くアメリカ南西部の旅では、“アメリカ・モダニズムの母”と称されるジョージア・オキーフが愛した芸術都市サンタフェ、そして全米屈指のラグジュアリーリゾートが集まるスコッツデールを巡った。壮大な自然、独自の文化、創造性を刺激するアートや建築。単なる観光ではなく、感性をリセットし、新たな視点を与えてくれる体験がそこにはある。セドナとあわせて訪れたい、アメリカ南西部の魅力を紹介する。

なぜ感度の高い大人はサンタフェに惹かれるのか。アメリカ南西部の旅
スペイン文化、ネイティブアメリカンの伝統、そしてアメリカ西部の文化が重なり合うサンタフェ。

ジョージア・オキーフが愛した芸術都市「サンタフェ」

かつて社会現象となった宮沢りえの写真集『Santa Fe』。巨匠・篠山紀信が撮影地に選んだのが、この街だった。

アルバカーキ国際空港からクルマで約1時間。標高約2,000mの高地に位置するサンタフェは、澄み切った青空とテラコッタ色のアドビ建築が織りなす、美しい景観が広がる街だ。

街の規模からは想像できないほど多くの美術館やギャラリーが集まっているのも特徴。100軒以上のギャラリーが軒を連ねるキャニオン・ロードを歩けば、この街に芸術文化が深く根付いていることを実感できるだろう。

20世紀アメリカ美術を代表し、“アメリカ・モダニズムの母”とも称されるジョージア・オキーフをはじめ、多くの芸術家たちが創作の拠点として選んだサンタフェ。なぜ彼らはこの地に惹かれたのか――そんなことを考えながら街を歩くのもまた楽しい。

そんなサンタフェを訪れたなら、ジョージア・オキーフ美術館は見逃せない。

1929年にニューメキシコ州を訪れて以来、この土地に魅了されたオキーフは、サンタフェの風景を描き続け、その景色を世界へ届けた。

「私はあなたが見ているものを描いているのではない。見たものが与える感覚を描いているのよ」

そんな言葉を残したオキーフの作品は、花や砂漠といったモチーフを大胆な構図と高い抽象性によって、観る者の想像力を刺激する。アートに詳しくなくとも、その世界観に自然と引き込まれるはずだ。

より深く作品や人生観に触れたいなら、ギャラリーガイドによる解説ツアーへの参加もおすすめ。背景を知るだけで、作品の見え方は驚くほど変わってくる。

2028年には現在の約5倍規模となる新館のオープンも予定されており、サンタフェを代表する文化拠点として、より一層存在感が高まりそうだ。

サンタフェで芸術と静けさに触れたあとに向かったのは、アメリカ最古の教会のひとつとして知られるサンミゲル礼拝堂が佇む、サンタフェ最古の歴史地区バリオ・デ・アナルコだ。

サンタフェを代表するラグジュアリーブティックホテル「The Inn of the Five Graces(ザ イン オブ ザ ファイブ グレーシズ)」は、17世紀以降の歴史的なアドビ建築をリノベーションした一軒。

館内には、インテリアショップも手掛けるオーナーの美意識が随所に息づいており、まるでひとつのアートギャラリーに滞在しているような感覚を味わえる。

鮮烈な色彩に彩られた客室には、アフガニスタンの絨毯やチベット家具、インドの彫刻が施された木製ドアなど、世界各地から集められた調度品が並ぶ。

濃密でエキゾチックな世界観。異文化が大胆に融合しているにもかかわらず、不思議な統一感と心地よさが漂う空間は実に魅力的だ。大きなキッチンやゆとりあるキングサイズベッドも備えられ、非日常と居心地の良さが見事に共存している。

宿泊料金に含まれる朝食も、このホテルならではの楽しみのひとつだ。丁寧に仕立てられた自家製グラノーラやパンケーキを中庭のパティオで味わう時間は、旅先の朝を特別なものにしてくれる。

異国情緒あふれる空間でありながら、どこか自宅のような安らぎも感じられる。その絶妙なバランスこそが、多くの旅人を惹きつける理由なのかもしれない。

夕食に訪れたのは、サンタフェ最古のレストランとして知られる「パレス・レストラン&サルーン(Palace Restaurant and Saloon)」。かつてサルーンとして街の社交場を担った歴史を持ち、赤いベルベットの壁や重厚な皮張りのソファが当時の情景を脳裏に浮かび上がらせるようなドラマティックさを醸している。

​料理を手がけるのは、今はなき世界最高峰のレストラン「Noma」で経験を積んだシェフ、アンヘル・フランコ氏。

繊細なハマチのクルードから豪快なステーキまで、土地の食材を生かしたモダンアメリカンを楽しめる。付け合わせのミルクブレッドも、つい手が伸びる危険な美味しさだった。

​ルート66の記憶をたどる。「アルバカーキ」で出会う古き良きアメリカ

1926年に制定されたルート66は、シカゴからロサンゼルスへとアメリカを横断する「マザーロード」として知られてきた。その長い道のりのちょうど中間地点、ニューメキシコ州を横断する区間がアルバカーキだ。

ルート66沿いのセントラル・アベニュー
ルート66沿いのセントラル・アベニューには当時の建築やサインが残っている。

ルート66と聞けば、古き良きハリウッド映画で何度も見かけてきた、長距離ドライバーや旅人を迎え入れるモーテルやダイナーが頭に浮かぶ。夜になると恍惚なネオンサインが街道沿いに連なるノスタルジックな風景に、誰もが無意識的に憧れを抱いているはずだ。

そんなロードトリップの記憶を象徴する名店が、今回訪れた「66ダイナー」だ。

「66ダイナー」は観光スポットのひとつとして名を馳せている元祖ダイナー​。

ノスタルジックな玩具やポスターに囲まれたプレイフルな空間に一歩踏み入れれば、一瞬でタイムスリップがかなう。ルート66の標識を横目にヘビー級のミルクシェイクを飲み干せば、さながらアメリカを極めた気分。

ルート66が象徴してきた“自由な旅”を体感するには、これ以上ない一軒だ。

エグゼクティブがお忍びで訪れる高級リゾート「スコッツデール」

アリゾナ州南部のスコッツデールは、全米の富裕層が休暇を過ごすラグジュアリーなデスティネーションとして知られる。ゴルフコースやスパ、リゾートホテルが広がり、どこか軽井沢を思わせる落ち着いた空気感も魅力だ。

西部開拓時代の面影を残す旧市街には、美術館やギャラリー、レストランが集まり、文化的な楽しみも充実している。華やかさと静けさが同居このバランスが、感度の高い大人たちを惹きつけている理由だろう。

アリゾナで唯一のグランドハイアットは、スコッツデールを代表するラグジュアリーリゾートのひとつ。2024年末に大規模リノベーションを終えた広大な敷地には、巨大なプールやスパ、ゴルフコースが点在する。国内外のセレブリティがスコッツデール滞在時に選ぶホテルとしても知られている。

全室36平米以上と十分な広さを誇る客室の目玉は、広々としたバルコニー。外へ出て温暖な気候を感じれば、そのすがすがしさに癒やされること請け合いだ。

楽しみ方の選択肢はいくつもあるが、とりわけ圧巻なのが、プール施設の充実ぶりだ。

サッカーグラウンドよりも大きなプレイグラウンドには、巨大なウォータースライダーや砂漠付きビーチプール、ファミリープールやアダルトプールを内包している。VIP気分を謳歌するなら、カバナをリザーブしてきりりと冷えたシャンパンで乾杯するのが乙だ。

グランドハイアット スコッツデール/大人専用ガバナ
大人専用のカバナ​。3時間675ドル〜​。

「ザ・ミッション(The Mission)」は、アリゾナ州中部に3店舗を経営するシェフ、マット・カーター氏が率いるモダン・ラテン料理の名店だ。

美食家たちから高い支持を集める理由は、丁寧に仕立てられた自家製トルティーヤやローストポークショルダータコスなど、素材の魅力を引き出した料理の数々にある。

「テーブルサイド・ワカモレ」は、この店を訪れたらぜひ味わいたいシグニチャーメニュー。スタッフが目の前で仕上げるライブ感あふれる演出も魅力だ。

できたてのワカモレをつまみながら、マルガリータを合わせれば気分は最高。旅の高揚感をより一層引き立ててくれる。

世界遺産「タリエシン・ウエスト(Taliesin West)」
世界遺産「タリエシン・ウエスト(Taliesin West)」。自然に溶け込んだ建築家フランク・ロイド・ライトの邸宅は2019年にユネスコ世界遺産にも登録。入場料は大人1名44ドル​。

ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館を手がけた建築家フランク・ロイド・ライトが、アメリカ南西部の砂漠に建てたのが、世界遺産「タリアセン・ウエスト(Taliesin West)である。生前の彼にとって実験室のような場所であった。

現在は博物館として開かれており、モダニズム建築や20世紀建築を学ぶ学生をはじめ、多くの研究者や観光客が訪れている。

作業、暮らし、教育の場といった異なる役割がゆるやかに共存する空間には、一般的なミュージアムにはない生活感が残されている。作業台にあえて文具を置きっぱなしにしたりと、意図的に彼の生活を覗き見れるように仕掛けているのだ。

700枚を超えたと言われる、建築家フランク・ロイド・ライトのスケッチの数々​。
700枚を超えたと言われる、建築家フランク・ロイド・ライトのスケッチの数々​。

とりわけ見所となるのはソロモン・R・グッゲンハイムのプロジェクトを題材にした展示スペースだ。

オリジナルのドローイングをはじめとする作業の軌跡はもちろん、円形のらせん構造という前例のない美術館を建てるために、限りなくハードルの高い交渉を続けた痕跡が記されている。

美術館の理事や、ニューヨーク建築局に宛てた手紙から、一切の妥協を許さない彼のポリシーが読み取れる。そのうえであの建物を振り返れば、並々ならぬ努力に改めて感嘆したくなるはずだ。建築好きはもちろん、多くの刺激を与えてくれる場所だ。

取材協力:
Visit The USA https://www.visittheusa.com/ja
Arizona Office of Tourism https://tourism.az.gov/
Experience Scottsdale https://www.experiencescottsdale.com
Visit Albuquerque https://www.visitalbuquerque.org
TOURISM Santa Fe https://www.santafe.org/

TEXT=星子莉奈

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