TRAVEL

2026.04.03

祇園の文化遺産を再生した、品格漂うラグジュアリー宿「帝国ホテル 京都」に潜入

日本のラグジュアリーホテル市場が活況だ。日本初進出のブランド、日本の老舗ホテルなどが日本人ですら心湧き立つ、かつてない価値を生みだしている。そんな最新ホテルから今回は、京都・祇園の「帝国ホテル 京都」をご紹介! 【特集 最先端ラグジュアリーホテル】

「帝国ホテル 京都」の外観
祇園甲部歌舞練場内に1936年に竣工した弥栄会館の外観をできる限り残し、風格あるホテルへ昇華させた。

祇園の記憶をつなぎ、日本の品格を未来へ

花街の風情を今に伝える京都・祇園。江戸初期に端を発する歴史的な景観に、迎賓館としての品格を融合させた宿が開業した。祇園甲部歌舞練場敷地内の弥栄(やさか)会館を再生した、帝国ホテル 京都である。

祇園甲部は京文化の粋が結集した場所だ。かつての祇園社(八坂神社)の参拝客を遇した水茶屋を起源とし、江戸の世に茶屋町として隆盛を極めた。ホテルが面する花見小路を中心に、石畳の道に町家が連なる光景は国の重要伝統的建造物群保存地区。弥栄会館は、1936年(昭和11年)に竣工した和洋折衷の大劇場を前身とし、国の登録有形文化財にも指定される名建築である。壮麗な千鳥破風を戴く意匠は贅の極みだったが、1世紀の時を経て耐震性の問題から存続は危うい状態に。この文化遺産に再び生命を吹きこんだのが、日本を代表する名門、帝国ホテルによる再生プロジェクトだ。

「帝国ホテル 京都」の玄関
弥栄会館の建築様式を活かした玄関は現代的な洗練を纏い再生。ロビーへと続くアプローチが日本の迎賓館の誇りを感じさせる。

1890年(明治23年)の開業以来、日本の迎賓館として世界の賓客を迎えてきた帝国ホテル。日本の伝統と経済を支えてきた両者の邂逅は、必然であったといえるだろう。施工は、弥栄会館を手がけた劇場建築の名手・木村得三郎が、かつて籍を置いた大林組が担当。内装設計には、現代美術作家・杉本博司氏と建築家・榊田倫之(ともゆき)氏による新素材研究所を迎え、歴史的建築を最高級ホテルへと昇華させた。

歳月に晒された外壁タイルは、1枚ずつ手作業で剝離・洗浄して再貼付する“生け捕り”の手法がとられ、テラコッタのレリーフや象徴的な銅板瓦葺屋根も見事に往時の姿を取り戻した。館内には、フランク・ロイド・ライト(帝国ホテル二代目本館の設計者)の作品を彷彿とさせるアールデコの空気を纏った家具が配され、設計者の時を超えた敬意が静かに通い合う。

本棟、本棟保存、北棟を加えても客室はわずか55室。ひとりひとりに寄り添うホスピタリティこそが、この館の真骨頂である。最上位の「インペリアルスイート」には、外観的特徴である塔屋部分を活用した2畳ほどのガゼボがある。また、テラスのある「弥栄スイート」からは歌舞練場を望み、窓を開ければ芸妓・舞妓が奏でる三味線の調べや艶やかな長唄が風に乗って届く。石畳の街並みを独り占めにする豊かな時間は、この地にあってこそかなう贅沢である。

レストランとバーがもたらす帝国ホテル流「Old is New」

帝国ホテル伝統の味もまた、新たな表現を得て進化を遂げた。弥栄会館の意匠を受け継ぐオールデイダイニング「弥栄」では、カレーやハンバーガーを、京都の食材を使用して編み直した。「弥栄カレー」は、薪火で香ばしさを纏わせた京野菜や牛肉を添えた品。

「洋食の技法と薪火の融合は、帝国の伝統と京都の素材重視の風土が共創したもの。揺らめく炎のライヴ感とともに味わっていただきたい」と今城浩二料理長は語る。フランス料理「練」では、料理長自らがカウンターに立ち、京の季節を盛りこんだ伝統の味を振る舞う。

そして一日の締めくくりには「オールドインペリアルバー」が雅な寛ぎをもたらしてくれる。シグネチャーカクテル「マウント 比叡」は、帝国ホテルで100年以上にわたり愛され続ける伝説のオリジナルカクテル「マウント フジ」へのオマージュ。

オールドトムジンをベースに、柚子リキュールとみりんなどを加え、仕上げに茶筅で点てた抹茶を落とした一杯は、和洋の技法が溶け合う深い余韻を残す。

このホテルに身を置くことは、単なる宿泊ではない。日本の伝統文化と、揺るぎない品格を五感に刻み、自身をアップデートする体験に他ならない。

Restorative Elements “Materials”

日本の伝統的な素材や技法を現代的に再解釈する、新素材研究所の設計スタイルもホテルに魅力を添えている。時代を感じることができる多彩な国産木材を使用するほか、エントランスの大理石、貴賓室で使用された田皆石を残し、新たに白石島から運んだ北木石、帝国ホテル 東京でも使用される大谷石などを随所に配して建築に温かみを与えた。そこに、杉本博司氏のアート作品が映え、いっそうの趣と深い寛ぎを生んでいる。

2026年3月5日OPEN
帝国ホテル 京都/Imperial Hotel,Kyoto
住所:京都市東山区祇園町南側570-289
TEL:075-531-0111
施設:客室55室、フランス料理、オールデイダイニング、バー、ルーフトップバー、フィットネスジム、スパトリートメント、プール、サウナ、温浴施設ほか

【特集 最先端ラグジュアリーホテル】

この記事はGOETHE 2026年5月号「総力特集:HOTEL 動と静の最新リカバリー拠点」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=中井シノブ

PHOTOGRAPH=伊藤信

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2026年5月号

HOTEL 動と静の最新リカバリー拠点

『GOETHE(ゲーテ)2026年5月号』表紙

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2026年5月号

HOTEL 動と静の最新リカバリー拠点

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ5月号』が2026年3月25日に発売となる。特集「HOTEL 動と静の最新リカバリー拠点」では、心と身体を解放させるラグジュアリーホテルを厳選して紹介する。表紙はHYDE!

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる