昨今、日本全国で新たなアイランド・リゾートが開業。島の文化や歴史、その土地のライフスタイルを反映させたホテルが誕生している。飛行機や船を乗り継ぎ、遠くてもわざわざ行きたいのは、そこに記憶に残る絶景と、心身が癒やされる至極のもてなしがあるからだ。今回は、長崎・福江島の「五島リトリート ray by 温故知新」を紹介する。【特集 死ぬまでに泊まりたい島ホテル】

時の層が深い五島に身を置き、思考をチューニング
距離感。それこそが今、最も研ぎ澄まされたラグジュアリーの条件。長崎県福江島の海辺に立つ「五島リトリート ray by 温故知新」は、日常からの脱線ではなく、思考と感性を深める“精神のチューニングルーム”として存在する。
空間デザインは視界と心を解放するよう緻密に設計されている。7.4mのワイドスパン、2.5mのフルハイトサッシが切り取る五島灘の圧倒的な水平線。人工音を遠ざけたその部屋には、波音と自分の呼吸音だけが残り、思考も沈黙へと導かれる。
この宿が特別なのは肉体だけでなく精神の回復を見据えた仕かけが随所にあることだ。島に自生する椿を用いたトリートメント、無音の瞑想室、早朝の散歩……どれも情報や刺激を遮断し、空っぽになることの価値を教えてくれる。滞在中は視覚、聴覚、味覚、触覚を再起動するような感覚を覚えるはずだ。
この記事はGOETHE 2025年6月号「総力特集:楽園アイランド・ホテル」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら