昨今、日本全国で新たなアイランド・リゾートが開業。島の文化や歴史、その土地のライフスタイルを反映させたホテルが誕生している。飛行機や船を乗り継ぎ、遠くてもわざわざ行きたいのは、そこに記憶に残る絶景と、心身が癒やされる至極のもてなしがあるからだ。今回は、沖縄・宮古島の「ローズウッド宮古島」を紹介する。【特集 死ぬまでに泊まりたい島ホテル】

自然と地形を生かした宮古島の神秘に触れる
宮古島の海には7つの色があると、この島で暮らす人々は口々にそう言う。珊瑚がつくり上げた白い砂に反射する光が、水深や太陽の位置によって色を変え、エメラルドグリーンにも、ターコイズブルーにも見えるからだ。そんな神秘的な海に魅せられ、世界21ヵ国で展開するラグジュアリーホテル「ローズウッド」が日本初上陸。2025年3月に「ローズウッド宮古島」が誕生した。
宮古島北部・大浦湾の岬の突端、三方を海に囲まれて建ち並ぶのは、ヴィラとハウスタイプの合計55棟、全棟プールつきの客室だ。これらは沖縄の言葉で「だや(崖)」「むい(山)」「みじ(水)」「うる(砂)」「いす(磯)」と呼ばれる5つのエリアに建ち、崖の上から見下ろす海、窓のすぐ向こうの砂浜などそれぞれ見せる景色を変える。
なかでも岬の突端部分に位置する、テラス込み280㎡の広さを誇るハウスタイプの客室「カミイハウス」からの景色には息を呑む。テラスに出れば目の前に広がるのは、ゴツゴツとした琉球石灰岩と大海原。この島にいるのは自分たちだけではないかと錯覚するほどに、広々とした空間、そして静けさが漂っている。
宮古島の食材を海辺で食す至福
客室を出て豊かな植栽の間を歩けばたどりつくのは、ビーチを目の前にしたインフィニティプール。波をモチーフにしたオブジェの向こうには、空の青を写したプール、白砂のビーチ、そしてどこまでも海が広がり見惚れるばかり。
この絶好のロケーションにはオールデイダイニングのイタリアンレストラン「ナギ」とプールサイドバー「ユクウ」が。朝の海のアクアブルー、陽が高く昇れば濃いコバルトブルー、夕陽が落ちればオレンジと、7色に変わる海をここで一日中眺めていたい。
プールサイドから丘に上がれば、漁師がモリでついた鮮魚が並ぶシーフードバー「マース」がある。夕陽を眺めながら白ワインとともに早めのディナーをいただくのがいいだろう。今後は和食レストラン「苧麻(チョマ)」も完成予定で、寿司、天ぷら、鉄板焼き、焼き鳥のそれぞれの料理人が海の前のオープンスペースで腕を振るう予定だ。
どのレストランも地元農家や食材業者と提携。野菜や魚介だけでなくハチミツまで宮古島産なのが、はるばる海を越えてこの島にたどりついた旅人には嬉しい。
「ローズウッド宮古島」の建設においては、もともとあった岩場を壊すことなくそのまま活かし、さらに植栽も宮古島に自生している植物のみが植えられた。施設内のアートはすべて、宮古島をモチーフにつくられたもので、国内外のアーティストが手がける。
今後は珊瑚礁でのシュノーケリングやモリ漁の体験など、宮古島の自然と文化に触れるアクティビティも用意される。この場所に引き継がれてきた自然と文化を尊重しながら、その魅力を存分に味わうことができる。
ここにいる間は何もしないことを味わってほしい。もちろんアクティビティは充実しているが、一番の贅沢は7色の海を誰にも邪魔されず眺めること。快晴でも曇りでも雨でも、それぞれ違った青があり、どの色もその瞬間しか見ることのできない宮古ブルー。色に魅せられ波の音とともに過ごしたい。
この記事はGOETHE 2025年6月号「総力特集:楽園アイランド・ホテル」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら