「ヴーヴ・クリコ」のシャンパーニュを味わいながらの豪華寝台列車の旅は、この上ない贅沢。車窓の美しい景色を眺めながらグラスを傾ける穏やかな時間は、また新たなパワーを生み出してくれる。
まるで映画のような、麗しき冒険の旅へ
“ラグジュアリー・トラベル”のひとつとして、多くの人々が憧れるのが豪華寝台列車「オリエント急行」での旅だろう。19世紀末から20世紀初頭の時代を彷彿させる絢爛豪華な内装と、国境を通過するにつれて西洋から東洋へと変わりゆくエキゾティックな車窓の景色。豪奢なサロンや食堂車には美しく着飾った紳士淑女が集い、華やかなさざめきを見せる。そして手元には最高品質のシャンパーニュ――。想像するだけでノスタルジックな旅情をかきたてられる。
2024年7月と10月、この夢のような列車が運行される。それが世界各地でラグジュアリーな旅を提案するベルモンド社による「ヴーヴ・クリコ ソレール ジャーニー」だ。
7月にはヨーロッパ鉄道「ヴェニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス号」にてウィーンからランス(シャンパーニュ)へ、10月にはアンデス・アドベンチャー「ハイラム ビンガム号」&「アンディアン・エクスプローラ号」によってペルー・マチュピチュからクスコ、アキレバと、この上なくリュクスな旅が体験できる。この特別な豪華寝台列車でゲストを迎えるのは、世界的シェフによる極上の美食と、1772年創立の老舗メゾン「ヴーヴ・クリコ」のセラーマスターによる特別なテイスティング。その華やかさで群を抜く「ヴーヴ・クリコ」ならではの深い魅力に出合えるのだ。
オリエント急行といえば、よく知られているのはアガサ・クリスティの『オリエント急行殺人事件』の舞台となったことだろう。何度も映画・ドラマ化されたが、もし、この「ヴーヴ・クリコ ソレール ジャーニー」の列車に乗るなら、ケネス・ブラナーが名探偵エルキュール・ポアロを演じた『オリエント急行殺人事件』を観るべきだ(2017年公開)。実は、この映画には「ヴーヴ・クリコ イエローラベル」が登場し、美しい舞台装置のひとつとなっている。サロンの棚には当時のものと思われるイエローラベルのボトルがずらりと並び、オリエント急行が特別な旅人のための列車であることを物語る。ポアロが事件の“謎解き”するときも、彼らを見守るかのように、そこにある。
ストーリーは周知のように、かつて大切な家族を手に賭けた殺人犯(ジョニー・デップ演)に復讐するために、遺族である被害者の祖母(ミシェル・ファイファー演)や一家と深い関係にあった公爵夫人(ジュディ・デンチ)など事件にかかわりのある者たち12名の乗客がオリエント急行に集まり、それぞれ自らの思いを遂げるというもの。偶然乗り合わせたポアロが、彼曰く“灰色の脳細胞”で真相を解き明かし、予想外の結末を迎える。ポアロは映画の中でこう語る。
「この事件では善と悪をはかる天秤がうまく釣り合いません。私も今日だけはアンバランスを受け容れます。ここに殺人者はいない。傷を癒すべき人々だけです。(中略)平安が訪れますように。すべての心に」。そして彼は列車を降りるのだ。深い愛ゆえの復讐劇を終始見ていたのは「ヴーヴ・クリコ イエローラベル」。不思議とそれは、必然であったように思えてくる。
マダム・クリコの愛が宿るシャンパーニュ
ヴーヴ・クリコは、2代目当主フランソワ・クリコの亡き後、妻のマダム・クリコが大きく発展させたメゾンだ。上流階級の子女が働くことなど許されなかった時代にみずから陣頭指揮を執った、“ビジネスウーマン”の先駆けでもあった。卓越したビジネスセンスの持ち主だったが、成功の大きな理由は、何よりマダム・クリコが“愛の人”だったからだ。
夫を亡くした時、彼女はまだ27歳で、残されたのは3歳の娘と大勢の社員たち。彼女は彼らを守るために奮起、ロシア宮廷に自社のシャンパーニュを売り込み、大成功を収めた。これもマダム・クリコを慕う腹心の部下たちの働きの成果だった。つまりは、「ヴーヴ・クリコ」はマダム・クリコの愛が結実したシャンパーニュなのだ。優美さと優しさに満ちたその味は、飲む人を確実に幸福にする。おそらくは、エルキュール・ポアロの苦渋の決断にも一役買ったのではないかと想像してみたくなる。
美しい景色とシャンパーニュは深い感動を与えてくれる。エルキュール・ポアロを心の連れ合いにオリエント急行に乗ってみれば、おそらくはあなたの“灰色の脳細胞”がヴーヴ・クリコのシャンパーニュの多彩な魅力を紐解き、さらなる夢の世界へと誘ってくれるはずだ。
ヴーヴ・クリコ ソレール ジャーニー
価格:£6,900~(1名) ※2名部屋からの販売
■ヨーロッパ鉄道「ヴェニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス号」(ウィーン~ランス) 2024年7月4日~6日
■アンデス・アドベンチャー「ハイラム ビンガム号」&「アンディアン・エクスプローラ号」
2024年10月21日~26日