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2026.11.06

7,000冊の蔵書に囲まれて過ごす、映画研究者のセカンドハウス

人生をともに歩んだ7,000冊の蔵書に囲まれて過ごす。時間という価値を知る人こそ、そんな時を重ねたものに心を寄せ、自らの世界に深く没入する。そんな至福の趣味空間を訪ねた。【特集 自分の世界に浸れる家】

本棚に囲まれたリビング

7,000冊の背表紙がつなぐ、過去の記憶と現在の思考

ずらりと並んだ蔵書は、他の部屋の書棚も合わせ、なんと約7000冊。まさに本が主役のこの邸宅は、NYのコロンビア大学で客員研究員を務めた経験もある、映画研究者I氏のセカンドハウスだ。

I氏だけではなく奥様も本を多く所有していたため、NYから帰国した4年前、手つかずのままだった奥様の実家を書庫兼仕事部屋としてリノベーションすることに。数々の名空間を生みだしてきたikg inc.池貝知子氏に依頼し、すべての蔵書を収められる書棚を壁一面に配した空間ができあがった。

天井まで続く書棚は幅を天井の梁の幅に合わせ、空間全体をつなぐ軽快なグリッド状のデザインに。以前からあった明かりとりの障子も敢えて残し、これだけの本がありながらも圧迫感を感じさせない。

「家具はすべて僕たちや妻の両親が海外で生活していた時に使っていたもの。昔と今と将来とがうまく調和する空間にしたかったんです」

書棚には、学生時代に学んだフランス史から、思想・哲学、国内外の小説、そして美術書や映画評論など、多岐にわたるジャンルの本が並ぶ。

「NHKのディレクター時代、さまざまな題材を扱っていたので、番組をつくるごとにいろいろなジャンルの書籍が増えていったことも、すべて大切な思い出となっています」

これまでは箱で保管し、必要な時にリストを頼りにその都度探していたが、今はすべてが目の届く範囲に並んでいる。

「必要な本にアクセスしやすいのはもちろんですが、こうやって背表紙が見えていると、例えば向こうにある中世史の本と、こっちに置いてある文学や思想の本が結びついて、全然関係ないと思っていた本同士に関係性が生まれるんです。本を書棚に収め、視覚で捉えることがすごく重要だということに改めて気づかされました」

並ぶ本のなかには、海外生活が長かった義父とシェイクスピアを研究していた義母の本も。またこれだけの棚ができたことで、ご両親や自分たちが世界中で集めた小物やオブジェも飾れるようになり、書棚を彩るアクセントになった。

書棚はその持ち主の思考を表すとよく言われるが、ここにはこれまで積み重ねてきた、家族と本の記憶も詰まっている。そんな書棚に囲まれた特別な空間は、これからもきっと新たな記憶を刻んでいくに違いない。

【特集 自分の世界に浸れる家】

この記事はGOETHE 2026年12月号「総力特集:陶酔の没入邸宅」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=牛丸由紀子

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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