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2025.10.27

「自分の才能を疑う前に、相手を疑え」令和ロマン、ぼる塾ら教え子1万人カリスマ講師の自己嫌悪脱出法

放送作家として活躍する傍ら、吉本興業のNSCで講師も務める桝本壮志氏。令和ロマン、EXIT兼近、ぼる塾ら人気芸人を数多く育ててきた桝本氏がNSCで説くのは、芸人スキルではなく、社会を生き抜く思考戦略だ。ゲーテwebの人気連載を書籍化した『時間と自信を奪う人とは距離を置く』から一部抜粋してお届けする。

仕事の成果が上がらない原因が「自分」とは限らない。教え子1万人吉本NSCカリスマ講師の思考

「自分のせい」より「誰かのせい」のほうが真っ当に生きられる

悩み:自分が悪いんだと思って落ち込んでしまいがち…

私たちは幼少期から「人のせいにするな」と言われ、社会に出ても「成長しないのは自己責任」「数字が悪いのはお前のせい」と叱られます。本当に「人のせいにするな」「成果が上がらない=自分のせい」は正しいのでしょうか?

僕は「自分のせい」よりも「誰かのせい」思考のほうがビジネスパーソンにとって真っ当な生きかたではないかと考えています。

1行で伝わる人、1万ページでも伝わらない人がいる

以前、某テレビ局に提案して鼻で笑われたクイズ番組企画を、そのまま他局に見せたら一発でゴールデン番組になったことがあります。そこから得たのは、上司や決定権を持つ人は「こちらの能力」を問いますが、良い仕事の半分は「あちらの能力」もないと立脚しないという視点。つまり、あなたが秀逸なプランを提案しても、相手の能力やセンスによって、伝わる人には1行で響くし、伝わらない人には1万ページ書いても響かないこともある。それがビジネスだということです。

採択者の言う「つまらない」「この仕事に向いていない」などの鋭利な言葉にヘコみ、自分のせいだと思うか、相手のせいでもあるという軽やかな思考を手に入れるか。さあ、どちらが健康的でしょう?

ちなみに僕は、クリエイティブな業界を目指す生徒たちに「自分の才能を疑う前に、相手の才能を疑うことができる才能を持っていないと、この仕事は続かないよ」と伝えています。

「仕事の成果が上がらない原因=自分のせい」を疑う

仕事の成果が思うように上がらないとき、上司は実力不足や努力不足を指摘するので、おのずと私たちは「自分のせい」というマインドに陥っていきます。しかし「仕事の成果が上がらない原因=自分のせい」とは言い切れないのです。

例えば、若手芸人はデビュー当初はほとんど劇場でウケません。いまではM-1決勝に進んでいる実力者も、若手のころからクオリティは高いのですが、あまり笑いが起こらないのです。

ところが劇場で看板を張っている人気芸人が「最近○○という若手がおもしろい」と発言すると、途端にウケはじめる。そう、社会は「何を言っているか?」でなく「誰が言っているか?」に引っ張られやすいので、無名芸人がステージで「言っていること(ネタ)」よりも、人気芸人の口コミ「おもしろい(承認)」のほうが評価を高めることがあるのです。

これはビジネスシーンでもあること。あなたの発言や企画内容よりも、力のある上司の「あいつ、いいじゃん」に流されることもあるので「成果=自分のせい」をセットで考えるのは早計なのです。

いま自分のアウトプットに手ごたえを感じている人は、フォームを崩さず自分流を磨き続け「あとは見つけられるだけ」という思考で、どっしり構えることも必要です。

「誰かのせい=責任のなすりつけ」ではない

自分のせいより誰かのせいという思考は、けして「責任逃れをしよう」というメッセージではありません。僕の知る超一流の人に共通しているのは、もっとも発言力がある人が、もっとも責任を負うという仕事哲学だからです。

失敗、乏しい成果、チーム不和などの責任は、誰よりも発言してきたリーダーの自分がすべて引き受ける。しかし彼らは、責任逃れはしないけれど、次なる挑戦の成功確率を上げるためにネガティブ思考からはうまく逃げています。それは、結果を真摯に受け止めつつも「タイミングが悪かっただけ」「時代が早すぎた」「万人ウケではなかったがコアファンには刺さった」など、チームのメンバーではなく「見えない幽霊=誰かのせい」にしてポジティブに前を向くスキル。一流はそういった思考法も身につけているんですね。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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