英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第285回。
イギリスではカエルは“ribbit ribbit”と鳴く
日本語ペラペラのイギリス人から「日本語の小説を読みたいから手伝ってくれ」と言われ、一緒に読むことにしました。
その小説のなかにはカエルが登場し、「ケロケロ鳴いていた」というような表現がありました。
「ケロケロってなに?」
そう聞かれて、私は戸惑いました。
「え? カエルってケロケロ鳴かない? 日本人にはカエルが鳴いている声がそう聞こえるんだけど」と言ったところ。
「は? ケロケロなんて全然聞こえない。ribbit ribbitじゃない?」
と返されました。ribbit ribbitって何を突然言っているのかとさらに戸惑いましたがどうやらこういうことでした。
ribbit ribbit=英語でいうところのケロケロ
英語は日本語に比べて擬音語が極端に少ないですが、それでも動物の鳴き声はある程度擬音語で表現できます。カエルの鳴き声は英語で「リベット リベット」と表現されるそうです。
カエルの鳴き声が「リベット リベット」と聞こえたことなんて一度もありませんし、イギリス人の彼女も「ケロケロってなにそれ、そんなふうに聞こえない」と言い続けるのでやっぱり英語圏のカエルと日本のカエルは鳴き方が違うのかな、そう思いました。
けれども私が「ケロケロ」よりももっとリアルに、喉を使ってカエルの鳴き声を真似してみたところ「ああ、カエルってそんな感じよね」と、そこは同意をとれました。
私は、調子に乗って飲みすぎた飲み会の帰り道、盛大にリバースしているような音を出していて、文字にするなら「ケロケロ」というよりは「ゲロォオオロロ」でした。これは小さくてかわいいカエルというより牛蛙の鳴き声に近いかもしれません。
ribbit ribbit(リベット リベット)も、私の発音ではまったくカエルの声に聞こえませんが、ネイティブに渾身の発音でリアルに表現してもらったところ、「r」の音で舌をかなりまくので、「ウィベロォォ ベロォォ」みたいに聞こえて、まぁ私がさっき言った「ゲロォオオロロ」とは近い気がしてきました。
言語によって変わる動物の鳴き声
たぶん聞こえているカエルの鳴き声は一緒なのですが、擬音語としてどう表現するかに言語の違いがあるようです。
ちなみに英語では犬の鳴き声を「Woof woof(ウフウフ)」とか「Bow wow(バウワウ)」と表現するそうです。まぁこれは、犬ってそんなふうに鳴くなと、なんとなくわかります。けれど「日本ではワンワンだよ」と言うと、めちゃくちゃ驚かれました。
「one oneってこと? 日本人ってoneって英語を聞くと犬を思い出しているわけ?」
たしかに英語の1(ワン)と、犬の鳴き声の「ワン」は、私たちからしたらかなり近い発音です。けれどそんなに驚かれるとは思ってもみませんでした。
世界中で、生き物の鳴き声の表現はさまざま、犬猫くらいは覚えられてもカエルとか他の生物まで覚えきれない気がするので、とりあえず海外で生き物の声を言いたい時は、擬音語を使うより「ゲロォオオロロ」のように全力で声真似した方が伝わるなと思った次第です。