英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第280回。
「サラダデイズ」はシェイクスピアと関係があった!
先日、学生時代の友人に誘われて久しぶりに大学時代のキャンパスを訪れました。
私は卒業以来およそ20年ぶりの母校訪問です。すっかり変わった校内をそわそわと歩いていると、すれ違った外国人グループからこんな会話が聞こえてきました。
I miss my salad days.
(サラダの日々が恋しいわ)
そのグループは、ぱっと見、私と同じ40代くらいの人が多い印象でした。留学生や外国人講師も多い学校なので、私と同じようにその外国人の方々もOGなのかもしれませんし、英語の先生なのかもしれません。
しかし「サラダデイズ」ってなんでしょうか。その人たちは学生時代にサラダばっかり食べていたのでしょうか。それとも、おしゃれカフェのサラダに、そんなメニュー名でもついているのでしょうか?
一緒にいた私の友人は英米文学科の卒業です。意味を聞いてみたらすぐこう教えてくれました。
salad days=若く未熟な日々
もともとはウィリアム・シェイクスピアの戯曲『アントニーとクレオパトラ』に登場する表現で、劇中でクレオパトラが自分の若い頃を「My salad days, when I was green in judgment」と振り返り、「判断力が未熟だった若い日々」として表現しているのがその由来だそうです。
ここでの「green」は「未熟」を意味、さらにサラダの新鮮な野菜が、「若さ」を連想させる比喩になっているということ。さすが英米文学出身です、スラスラと言葉の由来まで教えてくれました。
おそらくあの外国人グループもOGとOBで、「若い頃が懐かしいわ〜」と言いながらキャンパスを歩いていたのかもしれません。
“salad days”が持つ他の意味
オックスフォードの英英辞書でsalad daysをひいてみると、こんな説明もありました。
the peak or heyday of something.
(なにかのピーク、または全盛期)
「若く未熟な日々」という意味なのに、一方で「ピーク」も表現する。まさに青春時代を説明するような言葉です。
キャンパスを歩きながら、「私たちのsalad daysはどんなんだったかね」としみじみした気持ちになりました。青春時代を人生のピークにして終わらず、これからの中年時代も楽しく過ごしていきたいと、改めて思った次第です。