英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第277回。
電気圧力鍋の魅力を熱弁する友人が覚えた“dump and go recipe”
「最近、電気圧力鍋を買ったんですけど、最高ですよ」
日本語のレッスンをしたいと、4年以上も週一回オンラインで話しているアメリカ人がそう流暢な日本語で言いました。私にとっても英語で日本語を教えることで学びになると思っていたのですが、その方の日本語がうまくなりすぎて、もはや私はただ日本語でだべっているだけになっています。
彼いわく、圧力鍋を使えばシチューもカレーもすぐ煮込まれるし、タイマーもついているので鍋に具材と水を入れてあとは何もしなくても美味しい料理ができるのだそうです。
「だから、たくさんdump and go recipeを覚えましたよ」
圧力鍋の利便性について熱く語ったあと、最後に彼はそう言いました。
dump and go recipeってなんでしょうか。遅ればせながら『極悪女王』を見始めた私はなんとなく頭にダンプ松本さんが浮かびました。聞いてみるとこういうことでした。
dump and go recipe=鍋に具材をぶっ込むだけで出来上がる料理のレシピ
dumpは「投げ捨てる」という意味の動詞なので、具材を鍋に投げ捨てて、どこかにgoしちゃってもできあがる簡単な料理、ということを言っているようです。日本語だと「ぶっこみ料理」みたいなことでしょうか。
「dump and go recipeって調べたらたくさん出てきますよ」
と言われたので検索してみたら、シチューや鶏の煮込み、時には米やパスタの炭水化物までも一度にぶっこんだレシピが数々でてきました。
「電気圧力鍋だから、具材をぶっ込んで料理モードを選べばあとは何もすることはないんです。火加減を変えたりかき混ぜたり、コトコト何時間も煮込まなくていいし。この前も日本のカレールーを買ってカレーライスつくりましたよ。15分でできました」
と彼はとてもうれしそうでした。
“dump and go”の例文で驚愕…
dump and go、つまり「投げ捨てて、去る」というこのフレーズは他にもいくつか意味があるそうで、「突然恋人を捨てて去っていく」という場合にも使えるということ。
ゴミのように投げ捨てられ、去られてしまう、かなりしんどい恋の終わり方です。
またスラングの辞書「Urban dictionary」ではこういう説明がありました。
A dump-and-go is when you really gotta take a dump in a public place but don't want to sit in a gross stall so you just take a little dump and get the hell out of there to finish at home.
(dump and goとは公共の場で、ものすごくう○こしたいけど、汚いトイレに座りたくない時、ちょっとだけ出してすぐ去ってあとは家ですること)
普段英語の勉強をしていてあまり読むようなことのない下品な文章でしたので、2度読み直してやっと意味がわかりました。「ものすごくしたい」状況まで追い込まれているのに「ちょっとだけ出してあとは家でする」ということはできるのか、ちょっと疑問ですが、フレーズとしてこの意味が浸透しているなら、そういう人も多いのでしょう。
“dump and go”、美味しい煮込み料理から、トイレ事情まで幅広く思いを馳せることのできるフレーズでした。