一生懸命働いているのに仕事で結果が出ない。人間関係に悩んでいる。他人とうまくコミュニケーションが取れない……。そんな人にこそ必要なのが「余白」なのだ! デザイナーであり、アーティスト、そして3つの会社を経営する社長でもある山﨑晴太郎氏が提唱する、人生が今よりももっとラクに、ポジティブに、前向きになる「余白思考」とは?『余白思考 アートとデザインのプロがビジネスで大事にしている「ロジカル」を超える技術』(日経BP)の一部を引用、再編集してお届けする。#1
仲間とパーティを組むから前に進める
『ドラゴンクエスト(以下、ドラクエ)』というロールプレイングゲーム(RPG)をご存じでしょうか。
『ファイナルファンタジー』と並ぶ日本のRPGの名作として知られているこのゲームでは、ストーリーが進むにつれて「主人公」とともに冒険をする仲間が増えていきます。主人公と仲間をどう組み合わせるか、つまり「パーティ」をどう組むか、がゲームの醍醐味のひとつです。
多くのシリーズが出ていて、すべてのドラクエに当てはまるわけではありませんが、基本的な考え方においては、一行は「馬車」をつれていて、その中にはパーティの定員オーバーになった仲間が待機している。そして、「酒場」があり、パーティや馬車のメンバーも含めて入れ替えができるようになっています。
僕は、会社の経営や仕事はこの、「主人公」と「パーティ」と「馬車」と「酒場」の四つの役割と似ていると思っています。この四つがうまく機能することで、冒険も会社も前に進んでいく。
主人公は、言うまでもありません。会社経営でいうなら経営者ですしプロジェクトで見るならリーダー、人生でいうなら自分自身です。
パーティというのは、つまり同じ志で助け合い、死力を尽くすメンバーです。魔王を倒して世界を平和にしたいという願いを持つ勇者がいて、その人と同じ夢を、命を賭して描けること、そしてそれを実現するための力を持っていることが条件です。
想いだけでも、力だけでもだめ。両方がある人たちが集まるから、いい仕事ができます。
もしもそれほどの強い想いがなくて、でもなんらかの力は提供できるというなら馬車にいてもらいましょう。
「本心ではそれほぼ世界平和には関心がないけれど、強力な回復魔法だけは使えます」というような人は馬車で待機してくれればいい。部分的に「困ったときだけ助けてね」という関係を結べばいいわけです。
自分自身がいろいろな役割を持つ
それとは逆に、想いは十分にあるんだけどどうしても力がない、という人は酒場にいてもらって、たまに一緒に飲んで元気と応援をもらう。そういう役割があってもいい。
ドラクエ本家とは少し解釈が違うかもしれませんが、この四つの役割を使い分けることで、物事はうまく回っていくと思うのです。
つまり、自分自身も、事柄に応じてこの四つの役割のどこにでも入れるようにしておきたいということ。
僕は、あるコミュニティだと主人公だけれど、別のコミュニティに行ったら酒場のメンバーです。デザインを部分的な役割として担うコミュニティにも属しています。
それに加えて、たとえ主人公だったとしても、たったひとりでどうにかしようとするのではなくて、パーティ・馬車・酒場という三つの役割を生かすように考えること。こう考えるためにはやはり、参加者全員の思考のどこかに余白も必要ですし、こう考えることで思考の余白も広がっていくと思います。
なお、ここでは「想い」と「力」という二つの要素を取り上げました。これについては、昨今、「想いが一番大事」と考える人が多いようにも感じています。
「努力したほど結果が出なかったならば、それもなんらかの形で報われるべき」というような発想です。人生にとっては寄り道も大事だと思うし、それは繰り返しお話ししている余白だと思います。
でも一方、僕は経営者としては、やはり力も大事だと考えています。何ができるのかも大事。だから力のある人たちが自由に挑戦できる場所、器として会社があるというのが僕自身のスタンスです。